認知症の親の契約は無効にできる?死後に発覚した“財産の使い込み”と法的対処法
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「タンス預金なら、税務署にはバレないだろう」
「子供や孫の名義で口座を作って資産を移しておけば大丈夫」
「海外の資産なんて、わざわざ申告しなくても…」
相続税の負担を少しでも軽くしたい、というお気持ちは、誰しもが持つ自然な感情かもしれません。
しかし、その“節税”のつもりの行為が、法律の境界線を一歩踏み越え、残されたご家族を「脱税者」という犯罪者にしてしまう、恐ろしい罠だとしたら…。
今回は、この極めて重要でありながら、多くの方が曖昧に理解している「節税・租税回避・脱税」の境界線をテーマに、
- 「脱税」「租税回避」「節税」、それぞれの決定的な違い
- 税務署はこう見る!典型的な“アウト”な行為とは
- なぜ、税務署には全てがバレてしまうのか
- 家族の未来を守る、唯一の正しい道
などを、断固たる口調で、分かりやすく解説していきましょう。
【結論】意図的な隠蔽は脱税。税務署の調査能力を侮ってはいけない
「節税」「租税回避」「脱税」。この3つの言葉の違いを、あなたは正確に説明できますか?
- 脱税:偽りや不正な行為で、意図的に納税を免れようとする、明白な犯罪行為。
- 租税回避:法律の抜け穴を利用し、通常想定されていない方法で税負担を軽減しようとする、法的にはシロだが、倫理的にはクロに近い行為。税務当局に否認されるリスクが極めて高い。
- 節税:法律が認めている特例や控除(生命保険の非課税枠、小規模宅地の特例など)を、正しく活用して、税負担を軽減する、賢明で合法的な行為。
この中で、私たちが目指すべきは、当然「節税」だけです。
「脱税」と「節税」を分かつ、たった一つの、そして絶対的な境界線。それは、「事実を偽り、隠蔽しようとする意図があるかどうか」です。
そして、覚えておいてください。
あなたがどれだけ巧妙に隠したつもりでも、日本の国税庁が持つKSKシステム(国税総合管理システム)と、その調査能力を前に、隠し通せる財産など、この世には存在しないという厳しい現実を。
1. これは完全にアウト!税務署が悪質と見なす典型的な「脱税」行為
以下のような行為は、弁解の余地のない「脱税」です。
発覚すれば、重加算税(最大40%)という重いペナルティが課せられ、悪質な場合は刑事告発に至る可能性すらあります。
- タンス預金・手許金の隠蔽:被相続人の自宅にあった現金を、意図的に申告しない。
- 名義預金:親が子供や孫の名義で口座を作り、そこに資金を移していたにもかかわらず、相続財産として申告しない。(名義が子供でも、実質的な管理者が親であれば、それは親の財産です)
- 海外資産の無申告:CRS(共通報告基準)により、海外口座の情報はすべて国税庁に筒抜けです。これを申告しないのは、自殺行為に等しいでしょう。
- 財産の過小評価:土地や非上場株式の評価額を、意図的に低く偽って申告する。
2. なぜバレる?税務署の“神の目”KSKシステムと調査の実態
「税務署が、どうしてうちの財産を知っているんだ…?」税務調査を受けた方の多くが、そう驚愕します。
その秘密が、KSKシステムです。
■ KSKシステムとは
全国民の過去の所得税・法人税の申告状況、不動産の売買履歴、保険金の支払い記録、国外送金記録など、あらゆるお金に関する情報が、一元的に管理されている、国税庁の巨大なデータベースです。
■ 税務署の調査プロセス
- 死亡届が提出されると、その情報は税務署に連携されます。
- 税務署は、KSKシステムを使い、亡くなった方の生前の所得や資産状況を瞬時に把握し、「この人なら、これくらいの財産があるはずだ」という、おおよその見当をつけます。
- その後、提出された相続税申告書の内容と、KSKシステムの情報を見比べ、大きな乖離があれば、「申告漏れがあるのではないか」と、税務調査の対象にリストアップするのです。
特に、過去の所得に比べて相続財産が不自然に少ない場合、「タンス預金や名義預金があるのでは?」と、真っ先に疑われることになります。
3. 家族を犯罪者にしないために。親が、そして相続人がすべきこと
脱税という名の“負の遺産”を、愛する家族に残さないために、私たちは何をすべきなのでしょうか。
【財産を遺す側(親)がすべきこと】
- 全ての財産をオープンにする:財産目録を作成し、プラスもマイナスも、全ての財産を正直に書き記し、家族と共有すること。これがすべての始まりです。
- 専門家と王道を歩む:裏技や抜け道を探すのではなく、相続専門の税理士に相談し、法律が認める正々堂々とした「節税策」を、元気なうちから計画的に実行すること。
【財産を継ぐ側(相続人)がすべきこと】
- 故人の財産を正直に申告する:親がタンス預金などを遺していたとしても、それを隠さず、正直に申告する。それが、故人の名誉と、自分たちの未来を守る唯一の道です。
- 専門家の助けを借りる:相続税申告は、必ず相続専門の税理士に依頼する。それが、意図せず脱税の片棒を担いでしまうリスクを回避する、最も確実な方法です。
【まとめ】最高の節税は“正直”であること。後ろ暗さのない相続を
目先の税金を惜しむ、ほんの少しの心の緩みが、ご自身の死後、残された家族を、終わりのない税務調査の恐怖と、社会的な信用の失墜という、取り返しのつかない状況へと突き落とす。
この事実を、私たちは肝に銘じなければなりません。
では、本日の重要なポイントをまとめます。
- 「事実を隠蔽する意図」があるかどうかが、「脱税」と「節税」を分かつ、絶対的な境界線。
- タンス預金、名義預金、海外資産の無申告は、典型的な脱税行為であり、KSKシステムによって、ほぼ100%税務署に把握される。
- 税務署の調査能力を甘く見てはならない。彼らは、あなたが思う以上に、あなたのことを知っている。
- 本当の節税とは、法律の抜け道を探すことではなく、専門家と共に、法律が認める控除や特例を、正々堂々と活用すること。
- 親として、そして相続人として、「正直である」という誠実な姿勢こそが、家族を未来永劫守る、最強の防波堤となる。
ご葬儀の場で、故人様の誠実なお人柄を偲ぶご遺族が、その数ヶ月後、故人が遺した“隠し財産”のために、税務署から厳しい追及を受け、苦しむ姿。これほど悲しいことはありません。
故人の尊厳と、残された家族の未来を守るためにも、私たちは、後ろ暗さのない、誠実な相続の形を追求していくべきではないでしょうか。
株式会社大阪セレモニー



