相続で揉める財産ランキングTOP5!遺産が少なくても“実家”だけで争族になる理由
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「親が遺してくれた財産はこの実家だけ。でも、相続税は現金一括で払わなければならない…」
「計算してみたら納税資金がどうしても足りない。一体どうすれば…」
ご葬儀の後、相続税の申告準備を進める中で、このような「納税資金不足」の問題に直面し、青ざめるご遺族は少なくありません。
相続税は、原則として「申告期限(相続開始後10ヶ月)までに」「現金で」「一括納付」しなければなりません。
それが困難な場合の救済措置として、「延納」と「物納」という2つの制度が用意されています。
しかし、これらの制度は、決して“誰でも使える優しい救済措置”ではないのです。
今回は、この「相続税が払えない時の最終手段」をテーマに、
- 「延納」に課せられる、銀行ローン並みの高額な利子税
- 「物納」が、年間数十件しか認められない“幻の制度”である理由
- 延納・物納の前に、まず検討すべき3つの現実的な資金調達法
- 最悪の事態を招かないための、最強の生前対策
などを、その厳しい実態と共に、詳しく解説していきましょう。
【結論】延納・物納は“最後の切り札”だが、適用ハードルは極めて高い。
相続税の「延納(分割払い)」や「物納(不動産などで納付)」は、納税が困難な相続人のための、まさに最後のセーフティネットです。
しかし、これらの制度を利用するためには、
- 他の財産を売却しても現金化が困難である、といった厳格な要件を満たす必要がある
- 延納には、銀行ローン並みの高額な「利子税」がかかる
- 物納できる財産には厳しい適格要件があり、国に却下されるケースがほとんど
という、極めて高いハードルが存在します。
「もし相続税が払えなければ、延納か物納を申請すればいい」という安易な考えは、非常に危険です。
これらの制度に頼る前に、まずは「生命保険金の活用」「金融機関からの借り入れ(納税ローン)」「相続した不動産の一部の売却」といった、他の現実的な納税資金の調達方法を、相続専門の税理士と共に徹底的に模索することが、何よりも重要だと言えます。
1.【分割払いの罠】「延納」制度と、その重すぎる“利子税”
延納とは、相続税を分割で支払う制度です。期間は、財産の内容に応じて最長20年まで認められる場合があります。
■ 主な適用要件
- 相続税額が10万円を超えていること。
- 金銭で一括納付することが、その理由を含めて困難であること。
- 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。(※条件により不要な場合もあり)
■ 最大のデメリット:「利子税」という名の高金利
延納期間中は、残っている元本に対して「利子税」という名の利息がかかります。
この利率は、市中の金利よりも高く設定されることが多く、場合によっては年率数%にも及びます。
結果として支払う総額は、本来の納税額よりも大幅に膨れ上がってしまう。
これが、延納の最も重い負担と言えるでしょう。
2.【不動産で納税の罠】ほとんど使えない「物納」制度の厳しい現実
物納とは、延納によっても金銭での納付が困難な場合に、不動産や株式といった「モノ」で相続税を納める制度です。
■ なぜ、ほとんど使えない“幻の制度”なのか
その理由は、物納できる財産(物納適格財産)の要件が、あまりにも厳しいからです。
- 国が管理・処分するのに不適当な財産は、すべて却下される。
- (例:境界が不明確な土地、抵当権が設定されている不動産、共有名義の不動産、係争中の不動産など)
- 物納できる財産の優先順位が厳格に決まっており、非上場株式などは他に物納できる財産がない場合にしか認められない。
実際、国税庁の統計によれば、物納の許可件数は、全国で年間わずか数十件程度に過ぎません。「実家で納税すればいい」という考えは、ほぼ通用しないのです。
3. 延納・物納の前に!まず検討すべき3つの現実的な選択肢
では、納税資金が足りない場合、まず何をすべきでしょうか。
選択肢①:生命保険金の活用
故人が遺してくれた生命保険金は、納税資金として最も有効です。
保険金は現金ですぐに受け取れる上、「500万円 × 法定相続人の数」という大きな非課税枠があります。
選択肢②:銀行の「相続税納税ローン」を利用する
延納の利子税よりも、銀行などの金融機関が提供する「相続税納税ローン」の方が、金利が低い場合があります。
まずは、取引のある銀行に相談してみるべきでしょう。
選択肢③:【最有力】相続財産の一部を売却する
これが最も現実的で、一般的な解決策かもしれません。
相続した不動産の一部や、株式などを売却して現金化し、納税資金にあてる方法です。
ただし、売却には時間がかかりますので、10ヶ月の申告期限を見据え、相続発生後、できるだけ早期に不動産会社や証券会社に相談する必要があります。
【まとめ】納税資金対策は、生前の“思いやり”がすべて
相続税が払えないという事態は、残されたご家族の生活基盤そのものを揺るがしかねない、非常に深刻な問題です。
では、本日の重要なポイントをまとめます。
- 相続税が払えない場合の「延納」「物納」は、適用要件が極めて厳しく、簡単に利用できる制度ではない。
- 延納には銀行ローン並みの高い「利子税」がかかり、物納は国の審査が厳しく、ほとんど認められないのが実態。
- これらの制度に頼る前に、まずは「生命保険」「納税ローン」「財産の一部売却」といった、他の資金調-達方法を税理士と検討すべき。
- 最大の対策は、財産を遺す側が、元気なうちに、納税資金のことまで考えた生前対策(生命保険への加入や、換金性の高い資産の準備など)を講じておくこと。
- 遺言書で「この不動産は納税資金のために売却するように」と指定しておくことも、家族の迷いをなくす有効な手段。
ご葬儀の場で、故人様を偲ぶご遺族が、その数ヶ月後に、納税のことで頭を抱え、苦しむ姿を見るのは、私たちにとって非常に辛いことです。
財産を遺すということは、その財産にかかる税金の「出口戦略」までを考えてあげること。
それこそが、残されるご家族への、最後の、そして最大の思いやりなのではないでしょうか。
株式会社大阪セレモニー



