「遺言書で指定された遺言執行者、信用できないけど解任できる?」
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「うちはお金持ちじゃないから、相続で揉めることなんて絶対にない」
多くの方が、そう固く信じていらっしゃいます。
しかし、それは残念ながら、非常に危険な思い込みかもしれません。
家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割トラブルのうち、実に75%以上が、遺産総額5000万円以下の“ごく普通の家庭”で起きているという、衝撃的なデータがあるからです。
相続トラブルは、財産の金額の大小で起こるわけではありません。
むしろ、ごく普通の家庭に必ずと言っていいほど存在する「分けにくい財産」こそが、深刻な“争族”の火種となるのです。
今回は、遺産分割で特によく揉める、「争族の火種になりやすい財産」をランキング形式で発表し、
- なぜ、その財産がトラブルを引き起こすのか
- 実際に起きている、典型的なトラブル事例
- 揉め事を未然に防ぐための、具体的な生前対策
- 専門家だからこそ知る、意外な落とし穴
などを、詳しく解説していきましょう。
【結論】分け方を指定する“遺言書”こそが、家族を守る唯一の解決策です
遺産分割で揉める財産に共通しているのは、「物理的に分けにくい」「価値の評価が人によって違う」という2つの特性です。
預貯金のように1円単位で割り切れる財産と違い、こうした財産は相続人それぞれの思惑や感情が複雑に絡み合い、話し合いを泥沼化させる最大の原因となります。
そして、その頂点に立つのが、ほとんどのご家庭にある「不動産(ご実家)」です。
このような悲劇を回避するための、唯一にして最強の対策。それは、財産を遺す側(親)が、元気なうちに、法的に有効な「遺言書」を作成し、「誰に、何を、どう分けるか」を明確に指定しておくことです。
「子供たちを信じているから、話し合いに委ねたい」という親の優しさが、時として、最も残酷な結果を招くという現実から、私たちは目を背けてはなりません。
第5位:株式(特に、親族経営の非上場株式)
まず第5位は、株式です。
上場株式も評価額の変動で揉めることがありますが、それ以上に厄介なのが、換金性の低い「非上場株式」です。
■ なぜ揉めるのか
客観的な価値の評価が非常に難しく、簡単に現金化できないからです。「会社を継がない兄弟にとっては“紙切れ”同然なのに、なぜこれが遺産に含まれるのか」といった不満が噴出します。
経営権が絡む場合、単なる財産問題を超えた深刻な対立に発展しかねません。
【対策】生前のうちに後継者を指名し、遺言書で株式をその後継者に集中して相続させるなどの準備が不可欠です。
第4位:預貯金
「一番分けやすいはずの預貯金がなぜ?」と不思議に思われるかもしれません。
しかし、ここには「生前の使い込み疑惑(使途不明金)」という大きな落とし穴があります。
■ なぜ揉めるのか
親御様の生前、同居していた長男などが親の通帳を管理していた場合、他の兄弟から「親の金を自分のために使い込んでいたのではないか?」という疑念が噴出しやすいのです。
たとえ介護費用や生活費として正当に使っていたとしても、その領収書や記録がなければ、疑心暗鬼は深まるばかりです。
【対策】親のお金の出入りは必ず記録を残し、大きな支出は領収書を保管しておく習慣が、ご自身の身を守ることに繋がります。
第3位:美術品・骨董品・貴金属
第3位は、個人の趣味や思い入れが強く反映される、これらの「動産」です。
■ なぜ揉めるのか
相続人間で、そのモノに対する価値観が全く異なるからです。「父が大切にしていた壺」も、興味のない子供にとっては場所を取るだけのガラクタかもしれません。
客観的な金銭的価値の評価も難しく、「鑑定額は100万円だ」「いや、フリマアプリでは10万円で売っている」といった水掛け論になりがちです。
【対策】元気なうちに専門家による鑑定を受けて評価額を明確にし、誰に相続させたいかを遺言で指定しておくことが望ましいでしょう。
第2位:生命保険金
意外に思われるかもしれませんが、生命保険金は深刻な不公平感を生む、非常に大きな火種となり得ます。
■ なぜ揉めるのか
生命保険金は、法律上、遺産分割の対象となる「相続財産」ではなく、「受取人固有の財産」とされているからです。
例えば、遺産総額が1000万円、生命保険金が1000万円で、受取人が長男のみに指定されていた場合、長男は遺産分割で500万円、さらに保険金1000万円を一人で受け取ることになります。他の兄弟からすれば、「ずるい!」という感情が生まれるのは当然でしょう。
【対策】保険金の受取人を指定する際は、なぜそのようにしたのか理由を付記しておく、あるいは他の相続人にも配慮した遺言書を作成しておくといった配慮が重要です。
第1位:不動産(特に、親が住んでいた実家)
そして、“争族”発生率No.1、最も揉める財産は、やはり不動産です。
■ なぜ揉めるのか
「分けにくい」財産の筆頭格だからです。
「売却して現金で平等に分けたい」兄と、「思い出の家だから私が住み続けたい」妹とで、意見が真っ向から対立します。
不動産の評価額を巡っても、「固定資産税評価額」「路線価」「時価」など、どの基準を使うかで取得分が大きく変わり、これも争いの種になります。
「家」には、金銭的価値だけではない、「思い出」という感情的な価値が付随しており、これが話し合いをさらに複雑怪奇にさせるのです。
【対策】親が元気なうちに、この家を「誰に継がせたいのか」「売却して欲しいのか」、その最終意思を「遺言書」という法的な形で、明確に残しておくこと。
【まとめ】“争族”の火種は、ごく普通の家庭にこそ潜んでいる
財産の種類によって、これほどまでに揉めやすさが違うという現実。この知識を持つか持たないかで、ご家族の未来は大きく変わるかもしれません。
では、本日の重要なポイントをまとめます。
- 遺産分割トラブルは、財産の額ではなく、「分けにくい」「評価が難しい」財産があるかどうかで起こる。
- 不動産、特に「実家」は、物理的にも感情的にも分けにくく、トラブル発生率が最も高い危険な財産。[/背景-黄色]
- 生命保険金は遺産分割の対象外のため、「受取人」の指定が兄弟間の不公平感を生む大きな火種になり得る。
- 預貯金ですら、親の生前の「使途不明金」問題をきっかけに、家族の信頼関係が崩れることがある。
- [背景黄色]これらのトラブルを回避する最も確実で唯一の方法は、財産を遺す側が、元気なうちに「公正証書遺言」で分け方を明確に指定しておくこと。
ご葬儀の場で、ご遺族が故人の思い出を穏やかに語り合っている。
その背景には、故人が生前にきちんとした準備をされていたケースが本当に多いのです。
残される家族が争うことなく、心穏やかに故人を偲べる環境を整えておくこと。
それこそが、財産を遺す側の、最後の愛情表現であり、最大の責任ではないでしょうか。
株式会社大阪セレモニー



