「相続した実家、誰も住まないけど、どうすればいいの?」
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「親が元気なうちに、毎年110万円ずつ贈与を受ければ、相続税はかからない」
かつて、この「暦年贈与」は、相続税対策の常識であり、王道とされてきました。
しかし、その“節税神話”が、2024年から始まった税制改正によって、根本から覆っていることをご存知でしょうか?
古い知識のまま安易な生前贈与を続けると、節税になるどころか、かえって手続きが複雑になったり、意図せず多額の納税が発生したりする危険性すらあります。
今回は、2026年の今、絶対に知っておくべき「生前贈与と相続税の新ルール」をテーマに、
- なぜ、これまでの「毎年110万円」節税対策が通用しなくなったのか
- 死亡前「7年」に延長された、生前贈与加算の本当の怖さ
- 【新常識】年間110万円の非課税枠を持つ「新・相続時精算課税制度」とは
- 2026年以降、私たちはどう備え、どちらの制度を選ぶべきか
などを、どこよりも分かりやすく解説していきましょう。
【結論】「毎年110万円」の節税神話は崩壊。新設された非課税枠を持つ「相続時精算課税制度」の活用が新戦略の鍵です
これまで最強の節税策とされてきた「暦年贈与(年間110万円まで非課税)」の効果は、2024年の税制改正で大きく制限されることになりました。
その最大の理由は、亡くなる前に受けた贈与を相続財産に足し戻して計算する期間が、従来の「死亡前3年」から「死亡前7年」へと大幅に延長されたからです。
これにより、亡くなる直前に慌てて暦年贈与を始めても、その多くが無意味になってしまう可能性が非常に高まりました。
一方で、これまで使い勝手が悪いと敬遠されがちだった「相続時精算課税制度」に、新たに年間110万円の基礎控除(非課税枠)が設けられ、この非課税枠は“7年ルールの対象外”です。
この改正により、どちらの制度を選ぶべきか、ご家庭の状況によって最適解が全く異なる、非常に専門的な判断が求められる時代に突入しました。
もはや、税理士などの専門家への相談なしに、自己判断で生前贈与を進めるのは極めて危険な行為と言えるでしょう。
1.【危険】死亡前「7年ルール」で暦年贈与の価値が激減
今回の改正で、最も影響が大きいのがこのルールです。
■ これまでのルール(死亡前3年)
亡くなる前3年以内に行われた生前贈与は、相続財産に持ち戻して相続税を計算する。
■ 2024年1月1日以降の贈与に適用される新ルール(死亡前7年)
この持ち戻しの期間が、3年から7年へと大幅に延長されました。
つまり、ご自身が亡くなる7年前まで遡って、その間の贈与額(年間110万円の非課税枠を使ったものも含む)が相続財産に加算され、相続税の課税対象となるのです。(※延長された4年間の贈与額については、合計100万円の控除があります)
この改正により、特にご高齢になってから暦年贈与を始める場合、7年以内に相続が発生すれば、その節税効果が完全に失われてしまう可能性が高くなったわけです。
2.【新常識】使いやすく生まれ変わった「相続時精算課税制度」
もう一つの大きな変更点が、「相続時精算課税制度」の大幅なリニューアルです。
■ これまでの制度
生涯で2,500万円までの贈与が非課税になるものの、一度選択すると暦年贈与に戻れず、少額の贈与でもすべて申告が必要で、贈与した財産は全額相続財産に加算されるため、節税効果は限定的でした。
■ 新制度の絶大なメリット
従来の2,500万円の特別控除枠とは“別”に、新たに「年間110万円の基礎控除(非課税枠)」が創設されました。
この新しい年間110万円の枠内であれば、
- 贈与税の申告が一切不要。
- 贈与した財産は、将来、相続財産に加算されない。
- 暦年贈与の「死亡前7年ルール」の対象外。
となり、非常に使い勝手が良くなりました。
つまり、亡くなる直前の贈与であっても、確実に非課税で財産を子や孫に移転できるという、大きなメリットが生まれたのです。
3. 2026年以降、どちらの制度を選ぶべきか?
では、私たちは今後、どちらの制度を選択すれば良いのでしょうか。
■ 暦年贈与(7年ルールあり)が向いているかもしれない方
- まだ比較的若く健康で、7年以上にわたって長期的に贈与を続けられる見込みがある方。
- 子供や孫など、相続人が多く、それぞれに110万円ずつ贈与することで、全体の非課税枠を大きくしたい方。
■ 相続時精算課税制度(7年ルールなし)が向いているかもしれない方
- 高齢で、7年以内に相続が発生する可能性を現実的に考慮したい方。
- 将来、確実に値上がりしそうな財産(成長企業の株式や都心の不動産など)を、今の価値で先に贈与しておきたい方。
しかし、これはあくまで一般的な目安に過ぎません。
一度、相続時精算課税制度を選択すると、二度と暦年贈与には戻れないという極めて重要な制約もあります。
どちらが有利かは、資産状況や家族構成、将来の計画によって全く異なりますので、必ず税理士に相談し、シミュレーションを行った上で判断する必要があります。
【まとめ】生前贈与は新時代へ。正しい知識と専門家の助言が家族の未来を守る
生前贈与をめぐるルールは、2024年を境に、全く新しい時代に入りました。
古い常識やインターネットの断片的な情報に頼ることは、もはや許されません。
では、本日の重要なポイントをまとめます。
- 「毎年110万円非課税」の暦年贈与は、相続財産への持ち戻し期間が「死亡前7年」に延長され、特に高齢者にとっては節税効果が薄れた。
- これまで使いにくかった「相続時精算課税制度」に、7年ルールの対象外となる「年間110万円の非課税枠」が新設され、2026年現在、極めて有力な選択肢となった。
- どちらの制度が有利かは個々の状況で全く異なり、一度選択すると変更できないため、安易な自己判断は絶対に避けるべき。
- 生前贈与を検討する際は、まず最初に税理士に相談し、自身の家庭に合った最適なプランを設計してもらうことが不可欠。
- どの制度を選ぶにせよ、贈与契約書を作成し、銀行振込で記録を残すなど、贈与の事実を客観的に証明できる形で行うことが大前提。
ご葬儀の現場で、相続税の納税資金が足りずに、故人が愛したご自宅を売却せいでるを得なくなったご遺族を、私たちはこれまで何度も目の当たりにしてきました。
生前の正しい知識に基づいた少しの準備が、残されたご家族の未来を大きく左右するという現実を、私たちは知っています。
だからこそ、ご自身の財産をどう遺すかという問題に、専門家を交えて真剣に向き合うことが、何よりの愛情表現になるのではないでしょうか。
株式会社大阪セレモニー



