外国人技能実習生が死亡したら?受け入れ企業がすべき手続きと「国際遺体搬送」をプロが解説

山田泰平

山田泰平

テーマ:葬儀の知識

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモony代表の山田泰平です。

夢と希望を胸に、遠い故郷を離れて日本で働く外国人技能実習生。

もし、その方が志半ばで、この異国の地で突然亡くなられたら…。

受け入れ先の企業担当者様や監理団体の方は、深い悲しみと衝撃と同時に、「一体、何から手をつければいいのか」「誰に連絡すれば…」という、途方もない不安と重い責任に直面されることになります。

今回は、近年ご相談が増加しているこの「外国人技能実習生の死」と、それに伴う手続きをテーマに、

  • なぜ、通常の国内葬儀とは全く異なるのか
  • ご遺体を故郷へ送る「国際遺体搬送」の全貌
  • 航空輸送に絶対に欠かせない「エンバーミング」という処置
  • トラブル回避の鍵となる「宗教・文化」への細心の配慮

などを、数多くの実績を持つ専門家の視点から、分かりやすく解説していきます。

【結論】国際遺体搬送は「法律・航空・文化」の専門知識が必須。経験豊富な葬儀社との連携が鍵!

外国人技能実習生が日本で亡くなられた場合、そのほとんどのケースで、ご遺体を故郷の家族の元へ送り届ける「国際遺体搬送」という、極めて専門的な手続きが必要となります。

この手続きを、故人の尊厳を守りながら確実に遂行するためには、

  1. 各国の法律や、大使館との煩雑な手続きに関する専門知識
  2. 長時間の航空輸送の必須条件となる、ご遺体の防腐・防疫処置(エンバーミング)の技術
  3. 故人の宗教や文化(イスラム教の土葬など)への深い理解と、それに基づいた尊厳ある配慮

この3つの専門領域が不可欠です。

これらは、通常の国内葬儀とは全く次元の異なる知識と技術です。
受け入れ先の企業や監理団体の方が、独力ですべてを担うことは事実上不可能です。

このような事態に直面したら、まず最初に、パニックにならず、国際遺体搬送の経験が豊富な葬儀社に連絡し、パートナーとして包括的なサポートを依頼すること。

それが、故人の尊厳を守り、本国のご遺族の想いに応えるための、唯一かつ最善の道となります。

1. なぜ困難?国際遺体搬送に立ちはだかる「3つの専門的な壁」

異国の地で亡くなられた方を故郷へお返しする道のりには、いくつもの高い壁が存在します。


壁①:【法律・手続きの壁】

死亡診断書や火葬許可証といった国内書類に加え、各国の大使館・領事館が発行する「遺体輸送に関する証明書」「防腐証明書」など、多数の公的書類が必要です。

これらの書類には日本語からの翻訳や、公的な認証(アポスティーユなど)が求められる場合もあり、手続きは非常に煩雑を極めます。


壁②:【航空輸送の壁】

長時間のフライトに耐え、衛生状態を保つため、ご遺体の腐敗を防ぐ特別な処置が必須です。

航空会社からも、感染症予防の観点から、完全な防腐・防疫処置が施されていることが搭乗の絶対条件とされています。


壁③:【宗教・文化の壁】

イスラム教では土葬が基本で火葬は許されない、キリスト教では神父によるお祈りが必要、といったように、死生観や葬送儀礼は国や宗教によって全く異なります。

これらの文化的背景を無視した対応は、故人と本国のご遺族の心を深く傷つける、絶対にあってはならないことです。

2. 故郷へ“生前の姿”で還るための必須処置「エンバーミング」

国際遺体搬送において、絶対に欠かせないのが「エンバーミング」というご遺体の保全技術です。


■ エンバーミングとは?

ご遺体に小切開を加え、血管を通じて特殊な防腐・殺菌薬剤を注入することで、長期間にわたりお身体を衛生的に保つための化学的な処置です。


■ なぜエンバーミングが必須なのか?

  • 航空会社の規定:ほとんどの航空会社が、国際的な遺体輸送の安全規則として、エンバーミング処置を義務付けています。
  • ご遺族との最期の対面のため:エンバーミングを施すことで、ご遺体は生前の安らかなお姿に近い状態で、故郷のご家族と再会することができます。これは、遠く離れた地で訃報に接したご遺族の深い悲しみを少しでも癒すために、人道的に極めて重要な意味を持ちます。
  • 手続きの時間を確保するため:大使館との煩雑なやり取りなどで、出国までに日数がかかる場合でも、ご遺体の状態を心配することなく、落ち着いて手続きを進めることができます。


3. 【最重要】絶対に無視できない「宗教・文化的配慮」の具体例

故人の尊厳を守るためには、その方の信仰する宗教や文化への深い理解と最大限の配慮が求められます。


■ イスラム教圏の場合

豚由来の成分を含まない洗浄液でご遺体を清める「グスル」という儀式や、白い布で体を覆う処置が必要です。

エンバーミングも、イスラムの教えに則った薬剤・方法で行う専門知識が求められます。


■ 仏教圏(東南アジアなど)の場合

同じ仏教でも、国や宗派によって死生観や儀礼が異なります。

母国の僧侶とオンラインで繋ぎ、枕経をあげていただくといった配慮も、ご遺族の心を慰めます。


■ 無宗教・または宗教が不明な場合

絶対に憶測や思い込みで対応してはいけません。

まずは大使館や本国のご遺族に連絡を取り、故人の宗教やご遺族の希望を丁寧に、そして正確に確認することが最優先です。


【まとめ】異国の地での最期に、最大限の敬意と尊厳を捧げる責任

異国の地での突然の死は、故人にとっても、残された日本と母国の人々にとっても、あまりにも悲しい出来事です。

だからこそ、私たちプロとして、その尊厳を最後まで守り抜く社会的責任があります。

では、本日の重要なポイントをまとめます。

  • 外国人技能実習生の死後は、通常の葬儀ではなく、専門知識を要する「国際遺体搬送」が必要となる。
  • 長時間の航空輸送と、本国でのご遺族との対面のため、ご遺体への「エンバーミング」処置は絶対に欠かせない。
  • イスラム教の土葬など、故人の宗教・文化への深い理解と配慮が、故人の尊厳を守る上で最も重要。
  • 受け入れ企業や監理団体は、事態が発生したら、独力で動かず、まず国際搬送の経験が豊富な葬儀社へ相談することが、最善かつ唯一の解決策。
  • 煩雑な手続き、ご遺体の保全、文化への配慮、すべてをワンストップで任せられる専門家の存在が不可欠。


異国の地で最期を迎えられた方の魂を、無事に故郷へとお届けすることは、単なる手続きを超えた、私たち葬儀社に課せられた極めて重い国際的な使命です。

言葉や文化の壁、そして残された方々の深い悲しみに真摯に向き合い、故人の尊厳を最後まで守り抜くことこそ、人として、そして受け入れ国としての最低限の務めだと考えます。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
専門家

山田泰平(葬儀)

株式会社大阪セレモニー

当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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