「孤独死した部屋の特殊清掃費用、誰が払うの?払えない時は?」
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「パートナーに万が一のことがあった時、自分が喪主としてお葬式を出してあげられるだろうか?」
「共に築いてきた財産を、確実に相手に遺すにはどうすればいい?」
「パートナーの親族から『あなたには関係ない』と、病院や葬儀の場で言われたらどうしよう…」
同性パートナーと共に人生を歩む方々にとって、葬儀や相続は、異性間の法律婚では生じない、特有の法的課題と、非常に深く切実な不安を伴います。
現在の日本の法律では、同性パートナーは「法定相続人」になることができず、何の対策もしていなければ、法律上は「他人」として扱われてしまうのが、あまりにも厳しい現実です。
そこで今回は、すべての同性カップルが知っておくべき「法的に自分たちを守る終活」をテーマに、
- なぜ、何もしなければ「他人」として扱われてしまうのか
- 希望通りの葬儀を実現し、喪主を務めるための法的準備
- 共に築いた財産を確実に遺すための「遺言書」の絶対的な重要性
- 互いの人生に最後まで責任を持つための「死後事務委任契約」
などを、分かりやすく解説していきます。
【結論】「公正証書遺言」と「死後事務委任契約」は必須。法的に“他人”から“家族”になる唯一の道です
同性パートナーシップを法的に守り、互いの最期に尊厳と責任を持つために、絶対に欠かせない備えが2つあります。
- 財産を確実に遺すための「遺言書(特に効力の強い“公正証書遺言”)」
- 葬儀や死後手続きの権限を得るための「死後事務委任契約」
この2つを必ずセットで、お互いが心身ともに元気なうちに作成しておくこと。
これが、法的に「他人」とされてしまう二人の関係性を、社会に対して「故人が認めた正式な代理人」として証明し、お互いの尊厳と、共に築き上げてきた人生を守るための、唯一かつ最強の手段です。
自治体のパートナーシップ制度も非常に重要ですが、それだけでは葬儀や相続における直接的な法的効力は限定的です。
「自分たちの関係は、自分たちで法的に守る」という強い意志と具体的な行動が、今、求められています。
1. 法的“他人”扱いの現実|同性パートナーが直面する3つの相続トラブル
日本の民法では、亡くなった人の財産を相続できる「法定相続人」の範囲が厳格に定められており、ここには「同性のパートナー」は一切含まれていません。
そのため、どれだけ長く一緒に暮らし、生計を共にし、深く愛し合っていたとしても、何の対策もなければ法律上は赤の他人と同じ扱いとなり、以下のような悲劇が起こり得ます。
- 財産が1円も相続できない:共に貯めた預貯金や購入した家も、すべては血縁の相続人(親や兄弟姉妹など)のものになり、住み慣れた家を追い出されるリスクすらあります。
- 葬儀の主催(喪主)ができない:パートナーの親族から「あなたは他人だから」と、喪主になることや葬儀の方針決定への関与を完全に拒絶される可能性があります。
- 医療の意思決定に関われない:パートナーが危篤状態に陥っても、法的な家族ではないため、医師からの病状説明や治療方針の同意といった重要な場面から排除されてしまうことがあります。
2. パートナーとして喪主を務めるための法的武装「死後事務委任契約」
パートナーの最期のお見送りを、ご自身の望む形で、責任をもって執り行うために不可欠なのが「死後事務委任契約」です。
■ 死後事務委任契約とは?
生前のうちに、ご自身が亡くなった後の葬儀・納骨、役所手続きといった一切の死後事務を、法的な代理権を与えてパートナーに託しておく契約です。
■ この契約で得られる「権利」と「権限」
- 喪主となる正当な権利:この契約書を提示することで、病院、警察、葬儀社、そして親族に対し、ご自身が故人から正式に依頼された代理人であることを法的に証明でき、堂々と喪主を務めることができます。
- 希望通りの葬儀の実現:契約書に葬儀の形式(例えば「宗教色を排した音楽葬で」など)を明記しておくことで、故人の遺志を確実に反映させ、親族の意向よりも優先させることが可能になります。
- 諸手続きの実行権限:死亡届の提出や火葬許可申請など、通常は親族しか行えない手続きも、委任された正式な代理人として行うことができます。
この契約は、二人の関係性を社会に示す法的な「盾」となり、外部からの心ない干渉を未然に防いでくれる、極めて重要な役割を果たします。
3. 全財産を確実に遺すための最強の武器「公正証書遺言」
共に築いた財産を、血縁の相続人ではなく、愛するパートナーに確実に遺すための唯一無二の方法が「遺言書」です。
■ なぜ「遺言書」が絶対に必要なのか
遺言書があれば、民法で定められた法定相続よりも、その遺言の内容が優先されます。
「全財産をパートナーである〇〇に遺贈する」と明確に書き記すことで、財産を確実に引き継がせることができます。
■ なぜ自筆ではなく「公正証書遺言」を勧めるのか
- 遺言には自分で書く「自筆証書遺言」もありますが、形式の不備で無効になったり、死後に家庭裁判所の「検認」という手続きが必要だったりと、手間とリスクが伴います。
- 一方、公証人が作成に関与する「公正証書遺言」は、法的に最も確実性が高く、死後の手続きも格段にスムーズです。費用はかかりますが、二人の人生の結晶である財産を確実に守るためには、こちらを強く、強くお勧めします。
※ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」という最低限の相続権があるため、専門家と相談し、遺留分を侵害しないような配慮をしておくと、より円満な相続が実現できます。
【まとめ】法的な備えは、二人が“家族”として生きてきた愛と人生の証
法的な準備をすることは、決して冷たい事務手続きではありません。
それは、お互いの人生に最後まで責任を持ち、共に築き上げてきた愛と生活の尊厳を守るための、具体的で力強い意思表示に他なりません。
では、本日の重要なポイントをまとめます。
- 現在の日本の法律では、同性パートナーは法定相続人になれず、何もしなければ法的には「他人」として扱われるリスクがある。
- 葬儀の喪主を務め、死後の手続きを滞りなく行うためには「死後事務委任契約」が必須の備えとなる。
- 共に築いた財産を確実にパートナーに遺すには、法的効力が最も強く確実な「公正証書遺言」が不可欠。
- 「遺言書(財産)」と「死後事務委任契約(葬儀・手続き)」は、二人の関係性を法的に守るための“車の両輪”。必ずセットで準備することが重要。
- 自治体のパートナーシップ制度は重要だが、それだけに頼らず、これらの法的な自己防衛策を講じることが、本当の意味での安心につながる。
私たちは、どのような関係性の方がであろうと、その人らしい形で、尊厳ある最期を迎えられる社会を目指しています。
故人と送る方の想いを最大限に尊重し、形にすることこそが私たちの使命です。
そのために必要な法的な準備についても、司法書士や行政書士といった専門家と連携しながら、全力でサポートさせていただきますので、どうか一人で悩まずご相談ください。
株式会社大阪セレモニー



