【再婚後の相続】前妻の子と後妻の遺産分割|絶対に揉める泥沼トラブルと唯一の解決策

山田泰平

山田泰平

テーマ:葬儀の知識

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

「父が亡くなった。再婚相手である後妻さんと、遺産分割で話し合わなければならない…」

「長年連れ添った夫が遺した財産を、会ったこともない“前の家族”と分けなければならないなんて…」

離婚・再婚が珍しくなくなった現代、このような複雑で、感情的にもつれやすい相続問題は、もはや他人事ではありません。

特に、亡くなった方に「後妻(現在の配-偶者)」と「前妻との間の子供」がいる場合、その遺産相続は、通常の相続とは比較にならないほどデリケートで、深刻な「争族」へと発展する可能性が極めて高い、最も注意すべきケースの一つなのです。

今回は、この極めて難しい「後妻と前妻の子の相続」をテーマに、

  • なぜ、この相続は“必ず揉める”と言われるのか
  • 法律上の相続割合(法定相続分)の正しい知識
  • 遺産分割協議が泥沼化する、典型的な3つの火種
  • すべての悲劇を回避する、親(被相続人)の唯一の責務とは
  • 専門家(弁護士)への早期相談が、なぜ絶対に必要なのか


などを、徹底的に分かりやすく解説していきましょう。

【結論】後妻も前妻の子も相続権は同じ。感情的対立は不可避。「遺言書」が唯一の解決策

まず、動かしがたい法律上の大原則があります。

それは、亡くなった方から見て、後妻(現在の配偶者)も、前妻との間に生まれた子供も、どちらも民法で定められた正当な「法定相続人」であり、それぞれに相続権があるということです。

しかし、法的な権利は同じでも、お互いの感情は全く異なります。

  1. 前妻の子:「父を奪った相手に、なぜ財産を渡さなければならないのか」
  2. 後妻:「夫の晩年を支えたのは私だ。昔の家族に渡すものはない」

普段、全く交流のない者同士が、親(夫)の死によって初めて顔を合わせ、いきなり「お金の話」をしなければならない。

この構造自体が、深刻な対立を必然的に生み出すのです。

この悲劇を回避するために、親(被相続人)ができること、いや、やらなければならないことは、ただ一つ。

元気なうちに、法的に有効な「公正証書遺言」を作成し、「誰に、どの財産を、なぜそう分けるのか」という、ご自身の最終意思を明確に示しておくこと。
これが、残される全ての家族を、無用な争いから守るための責任ではないでしょうか。

1. なぜ揉める? 感情と法律が複雑に絡み合う、根本的な原因

この相続が、なぜこれほどまでに揉めやすいのか。その根本原因を深掘りしてみましょう。


① 感情的な対立

前妻の子にとっては、後妻は「自分の家庭を壊したかもしれない相手」、後妻にとっては、前妻の子は「夫の過去の象徴」であり、お互いに複雑な感情を抱いているケースが少なくありません。

遺産分割は、その積もり積もった感情が噴出する、格好の“舞台”となってしまうのです。


② コミュニケーション不足

普段から全く交流がない、あるいは没交渉である場合がほとんどです。

お互いの人格や生活状況を全く知らないまま、いきなり利害が対立する「遺産分割」という場で向き合うことになるため、信頼関係の構築が極めて困難です。


③ 財産状況の不透明性

多くの場合、亡くなった方の財産は、同居していた後妻が管理しています。

前妻の子からすれば、「財産を隠しているのではないか」「生前に多額の贈与を受けていたのではないか」という疑心暗鬼が生まれやすく、これが話し合いをさらにこじらせます。


④ 法定相続分への不満

法律で相続分が定められているとはいえ、「長年介護してきたのだから、もっと多くもらうべきだ(寄与分)」といった主張や、「あなたは大学の学費を出してもらったでしょう(特別受益)」といった過去の不満が持ち出され、単純な法律論では収まらない、感情的な水掛け論に発展しやすいのです。

2. 誰が、どれだけ? 法定相続分の正しいルール

感情論を一旦脇に置き、まずは法律上の権利(法定相続分)を正確に理解することが、冷静な話し合いの第一歩です。


■ 登場人物と相続順位

  1. 配偶者(後妻):常に相続人となります。
  2. 子(前妻の子、後妻との間の子、養子など):第1順位の相続人です。子が複数いる場合は、その人数で均等に分けます。



■ 具体的な相続割合の例

【ケース1】相続人が「後妻」と「前妻の子1人」の場合

  1. 後妻:1/2
  2. 前妻の子:1/2



【ケース2】相続人が「後妻」と「前妻の子2人」の場合

  1. 後妻:1/2
  2. 前妻の子それぞれ:1/2を2人で分けるので、1/4ずつ



【ケース3】相続人が「後妻」、「前妻の子1人」、「後妻との間の子1人」の場合

  1. 後妻:1/2
  2. 前妻の子:1/2を2人で分けるので、1/4
  3. 後妻との間の子:1/2を2人で分けるので、1/4

前妻の子であっても、実子であれば、後妻との間に生まれた子と、相続権において全く差はありません。

この事実を、双方が冷静に受け止める必要があります。

3. 遺産分割協議をスムーズに進めるための、唯一の方法

当事者同士での話し合い(遺産分割協議)は、極めて困難を伴います。

感情的な対立を避け、建設的な解決を目指すためには、どうすれば良いのでしょうか。


■ 弁護士を代理人に立てる

結論から言えば、できるだけ早い段階で、お互いが、あるいは少なくともどちらか一方が、相続問題に精通した弁護士に相談し、交渉の代理人として依頼すること。

これが、泥沼化を防ぐための、最も現実的で、効果的な方法です。


弁護士を介するメリット:

  • 感情的な対立の回避:当事者同士が直接顔を合わせる必要がなくなり、弁護士が法的な主張と事実関係のみを、冷静に相手方へ伝えます。
  • 正確な財産調査:弁護士は、法的な権限(弁護士会照会など)を用いて、相手方が開示しない財産情報を調査することが可能です。これにより、協議の前提となる財産の全体像が明確になります。
  • 法的な根拠に基づく交渉:感情論ではなく、「寄与分」や「特別受益」といった法的論点を整理し、判例に基づいた、現実的な落としどころを探ることができます。



■ 話し合いがこじれた場合の、次のステップ

もし、弁護士を通じた交渉でも合意に至らない場合は、家庭裁判所での法的な手続きへと移行します。

  1. 遺産分割調停:調停委員という中立な第三者が間に入り、話し合いによる合意を目指します。
  2. 遺産分割審判:調停でもまとまらない場合、最終的に、裁判官が法的な判断に基づいて、遺産の分割方法を決定します。


4. すべての悲劇を回避する、親(被相続人)の“最後の責任”

このような複雑で、悲しい争いを避けるために、最も有効なのは、故人となる親自身が、生前に、その道筋を示しておくことです。


■ 「公正証書遺言」の絶対的な重要性

①遺言書で、誰に、どの財産を、どれだけ相続させるかを、明確に指定しておく。

遺言書があれば、原則として、その内容が法定相続よりも優先されるため、相続人間の争いを大幅に減らすことができます。


②なぜ、その分け方にしたのか、その理由や想いを「付言事項」として書き添える。

「長年連れ添ってくれた妻への感謝として…」「離れて暮らす〇〇の今後の生活を案じて…」といった、親の真摯な言葉が、相続人の感情的なしこりを和らげる、大きな力となります。


③遺留分に配慮した内容にする。

子供には、法律で最低限保障された「遺留分」があります。

これを侵害する内容の遺言も有効ですが、後でトラブルになる可能性が高いため、できる限り配慮することが望ましいでしょう。


④遺言執行者を指定しておく。

遺言の内容をスムーズに実現してくれる、信頼できる人や専門家を指定しておきます。

再婚して、複雑な家族構成になった方が、遺言書を遺さないという選択は、もはや「無責任」とさえ言えるかもしれません。

【まとめ】複雑な相続は“感情”の問題。だからこそ専門家の冷静な目が必要

後妻と前妻の子の相続は、単なる法律やお金の問題ではありません。

それは、それぞれの人生が背負ってきた、複雑な「感情」の問題なのです。

だからこそ、当事者だけでは、決して解けない結び目となってしまうのですね。

では、本日のポイントをまとめます。

  • 後妻も前妻の子も、それぞれ法定相続人としての権利を持つが、感情的な対立から、遺産分割協議は極めて難航しやすい。
  • 当事者同士での話し合いは避け、できるだけ早い段階で、相続問題に強い弁護士を代理人に立て、交渉を依頼するのが、泥沼化を防ぐ最善手。
  • 正確な財産調査と情報共有が、公平な分割の絶対的な前提となる。
  • この悲劇を回避する、最も有効で、唯一の予防策は、親自身が、元気なうちに「公正証書遺言」を作成し、明確な意思表示をしておくこと。
  • 遺言書には、財産の分け方だけでなく、なぜそう考えたかという「想い」を付言事項として記すことが、家族の絆を守る。


ご葬儀の場で、前妻側のお子様と後妻側のご家族が、初めて顔を合わせる。

その空気は、傍で見ていても張り詰めた、非常に重いもの。

しかし、故人が明確な遺言書を遺してくださっていれば、その場の雰囲気は一変します。

残される全ての子供たちを、等しく愛しているからこそ、争いの種を残さない。

それこそが、親として示せる、最後の、そして最大の愛情ではないでしょうか。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
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山田泰平(葬儀)

株式会社大阪セレモニー

当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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