【遺言書の書き方完全ガイド】自筆証書と公正証書、どっちを選ぶ?無効にならないための全知識

山田泰平

山田泰平

テーマ:相続関係

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

「うちは財産なんてないから、遺言書は必要ない」

ご自身の死後について考え始めた時、多くの方がこのように「遺言書」の作成をためらわれます。

しかし、その“遠慮”や“楽観”が、後に、愛するご家族を深刻で、終わりの見えない「争族」という悲劇に突き落とす、最大の引き金になり得ることを、あなたはご存知でしょうか。

相続トラブルの実に7割以上が、遺産総額5,000万円以下のごく普通のご家庭で起きている。

そして、そのほとんどのケースで、「遺言書がなかった」のです。

遺言書は、単なる財産の分配指示書ではありません。

それは、残される家族が、無用な争いや疑心暗鬼に苦しむことなく、穏やかに故人を偲ぶ時間を過ごせるようにするための親が子に遺せる最後の“お守り”なのです。

今回は、この極めて重要な「遺言書の書き方」をテーマに、

  • 遺言書が“争族”を防ぐ、本当の理由
  • 「自筆証-書遺言」と「公正証書遺言」、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較
  • 【2025年最新情報】法務局の保管制度で、自筆証書遺言がどう変わったか
  • これだけは守れ!遺言書が無効になる、致命的なミスとは?
  • 専門家に相談すべきケースと、その選び方


などを、誰にでも分かるように、徹底的に解説していきましょう。

【結論】遺言書は“争族”を回避する唯一の手段。確実性を求めるなら「公正証書遺言」が最善の選択

遺言書がなぜこれほどまでに重要なのか。

その理由は、遺言書があれば、法律で定められた画一的な「法定相続」のルールよりも、故人の最終意思が優先されるからです。

しかし、その大切な想いを確実に未来へ繋ぐためには、法律で定められた厳格な方式を守らなければなりません。

書き方を一つ間違えるだけで、その遺言書はただの紙切れ(無効)になってしまいます。

遺言書の方式にはいくつか種類がありますが、一般的に利用されるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。

  1. 自筆証書遺言:手軽で費用もかからないが、方式不備で無効になるリスクや、紛失・改ざんのリスクが高い。
  2. 公正証書遺言:費用と手間はかかるが、法律の専門家である公証人が作成に関与するため、無効になるリスクが極めて低く、最も確実で安全な方式。


結論から申し上げますと、もし、あなたが本気で、残されるご家族の間の無用な争いを防ぎたいと願うのであれば、選択すべきは、法的に最も強力で、疑義の余地のない「公正証書遺言」です。

費用はかかりますが、その費用は、将来の家族の平和を守るための“保険”と言えるでしょう。

「手軽さ」を取るか、「確実性」を取るか。この選択が、ご家族の未来を大きく左右するということを、心に刻んでおく必要があります。

1. 【手軽さNo.1】自筆証書遺言 ― そのメリットと、あまりにも多いデメリット

まず、最も手軽に作成できる「自筆証書遺言」から見ていきましょう。


■ 特徴とメリット

その名の通り、遺言者本人が、全文、日付、氏名をすべて自分の手で書き、押印することで完成する遺言書です。

  • 手軽さと費用:紙とペンと印鑑さえあれば、いつでも、どこでも、誰にも知られずに作成できます。費用も基本的にはかかりません。
  • 秘密の保持:内容を誰にも見せる必要がないため、プライバシーを完全に守ることができます。




■ デメリットと、致命的になり得るリスク

手軽さの裏側には、その遺言書を“ただの紙切れ”にしてしまいかねない、数多くのリスクが潜んでいます。

①方式不備による無効リスク:これが最大のリスクです。「全文が自筆でない(パソコン作成など)」「日付が特定できない(〇月吉日など)」「押印がない」といった、法律上の要件を一つでも欠けば、その遺言書は容赦なく無効となります。

②紛失・改ざん・隠匿のリスク:自宅で保管していると、死後に発見されなかったり、相続人の一人が自分に不利な内容であるとして、破り捨てたり、書き換えたりする危険性が常に伴います。

③内容の不明確さによるトラブル:専門家のチェックを経ないため、「不動産を長男に」といった曖昧な表現では、どの不動産のことか特定できず、かえって争いの種になります。

④家庭裁判所での「検認」が必要:相続が開始した後、相続人は、この遺言書を家庭裁判所に提出し、「検認」という手続きを経なければなりません。これは、遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きで、完了までには1~2ヶ月の時間がかかり、その間、相続手続き(預金解約など)を進めることができません。



■ 【最新情報】自筆証書遺言の2つの大きな変化

こうしたデメリットを緩和するため、近年、法律が改正されました。

  • 財産目録のパソコン作成が可能に:これまで全文自筆が原則でしたが、財産の一覧である「財産目録」については、パソコンでの作成や、通帳のコピー、不動産の登記事項証明書の添付が認められるようになりました。(※ただし、その目録の全てのページに、署名・押印が必要です)
  • 法務局の「遺言書保管制度」の創設:これが、最も大きな変化です。作成した自筆証-書遺言を、法務局で保管してもらえる制度が始まりました。これを利用すれば、「紛失・改ざん」のリスクがなくなり、死後の「検認」手続きも不要になるという、絶大なメリットがあります。利用には、1通あたり3,900円の手数料が必要です。


2. 【確実性No.1】公正証書遺言 ― 専門家が作る、最強の遺言

次に、法的に最も安全で確実な「公正証書遺言」です。


■ 特徴とメリット

遺言者が公証役場へ出向き、証人2人以上の立会いのもと、遺言の内容を公証人(元裁判官など、法律のプロ)に口頭で伝え、公証人がそれを法的に完璧な文書にまとめ、作成する方式です。

  • 無効になるリスクがほぼゼロ:法律の専門家である公証人が、内容の法的有効性や、本人の意思能力まで確認して作成するため、後からその有効性が争われる可能性は、極めて低いと言えます。
  • 紛失・改ざんのリスクがない:作成された遺言書の原本は、公証役場に厳重に保管されるため、紛失や改ざんの心配は一切ありません。
  • 家庭裁判所の検認が不要:相続開始後、すぐに、そしてスムーズに相続手続きを開始できます。
  • 自筆できなくても作成可能:ご自身で字が書けない状態であっても、意思を口頭で伝えることさえできれば、作成が可能です。



■ デメリット

確実性と引き換えに、手間と費用がかかる点がデメリットと言えるでしょう。

  1. 費用がかかる:公証人に支払う手数料が必要です。この手数料は、相続させる財産の価額によって変動し、数万円から十数万円程度かかるのが一般的です。
  2. 手間がかかる:公証役場との事前の打ち合わせや、必要書類(戸籍謄本、印鑑証明書など)の準備が必要です。
  3. 証人が2人必要:遺言の内容を知られても問題のない、信頼できる証人を2人見つける必要があります。適当な人がいない場合は、公証役場で紹介してもらったり、司法書士などの専門家に依頼したりすることも可能です(別途、謝礼が必要)。


3. 遺言書が無効にならないために!作成時の絶対的ルール

どの方式を選ぶにしても、遺言書に込めた想いを無駄にしないために、以下の点は必ず守らなければなりません。

  • 財産の特定を明確に:「預貯金」ではなく「〇〇銀行〇〇支店、普通預金、口座番号123456」、「家」ではなく「所在、地番、家屋番号…」といったように、登記簿謄本などを見ながら、第三者が見ても一意に特定できるように、正確に記載します。
  • 遺留分への配慮:兄弟姉妹を除く法定相続人には、法律で最低限保障された遺産の取り分「遺留分」があります。これを侵害する内容(例:「愛人に全財産を遺す」)の遺言も有効ですが、後で相続人から、その侵害額を請求される可能性があります。無用な争いを避けるためには、遺留分に配慮した内容にすることが望ましいでしょう。
  • 遺言執行者の指定:遺言の内容を、死後、スムーズに実現してくれる「遺言執行者」を、あらかじめ指定しておくことを、強くお勧めします。信頼できる相続人の一人や、司法書士などの専門家を指定することができます。
  • 付言事項の活用:法的効力はありませんが、「なぜ、このような分け方にしたのか」という理由や、家族への感謝の気持ちを「付言事項」として書き添えることで、相続人間の感情的なしこりを和らげ、争いを防ぐ、非常に大きな効果が期待できます。


【まとめ】遺言書は、家族への最後のメッセージ。想いを、確かな形で遺そう

遺言書は、単なる事務的な財産目録ではなく、ご自身の人生の集大成として、家族への最後の想いを伝え、未来の絆を託すための、尊いコミュニケーションツールです。

では、本日のポイントをまとめます。

  • 遺言書がないことが、ごく普通の家庭を「争族」に変える最大の原因。財産の多少にかかわらず、作成を検討すべき。
  • 手軽な「自筆証書遺言」は、無効になるリスクが高いが、「法務局の保管制度」を利用すれば、その弱点を大幅にカバーできる。
  • 手間と費用はかかるが、法的な確実性と安全性を最優先するなら、「公正証-書遺言」が、疑いなく最善の選択。
  • どの方式であれ、「財産の特定を明確にすること」と、相続トラブルを防ぐ「遺留分への配慮」は不可欠。
  • 遺言書は「死の準備」ではない。残される家族が、無用な争いに苦しむことなく、穏やかな未来を歩めるようにするための、最高の「愛情表現」。


ご葬儀の場で、「父が遺してくれた遺言書のおかげで、私たちは揉めることなく、穏やかに父を送ることができました」と、安堵の表情で語られるご家族がいらっしゃいます。

それは、故人となられた親御様が、ご自身の判断能力が確かなうちに、家族の未来を想い、最後の責任を、見事に果たしてくださった、何よりの証拠なのですね。

その愛情深い備えこそが、残される家族にとって、最高の、そして最も価値ある遺産となるのではないでしょうか。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
専門家

山田泰平(葬儀)

株式会社大阪セレモニー

当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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