「他の相続人が遺産を隠してるかも…どうやって調べればいい?」
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「親の遺品から、見たこともない会社の株券が出てきた…」
「兄が継いだ実家の会社、その株の価値って、一体いくらなんだ?」
ご葬儀の後、遺産分割協議を進める中で、故人が遺した「株式」の存在が、兄弟姉妹の間に深刻な亀裂を生むケースは、驚くほど多く存在します。
特に、証券取引所に上場していない「非上場株式(自社株)」は、その価値をどう評価するかで相続人の意見が真っ向から対立し、話し合いを泥沼化させる、極めて厄介な“時限爆弾”となり得るのです。
今回は、この専門性の高い「株式の相続」をテーマに、
- なぜ、株式の相続はこれほどまでに揉めるのか
- 「上場株式」と「非上場株式」で全く異なる評価方法
- 実際に起きた、非上場株式の評価額を巡る骨肉の争い
- 税務署に否認されないための、唯一の正しい評価方法
などを、分かりやすく解説していきましょう。
【結論】株式の相続は“評価”がすべて。特に非上場株は専門家必須
株式が相続財産に含まれる場合、その遺産分割と相続税申告を成功させる鍵は、ただ一つ。
「その株式の価値(評価額)を、誰しもが納得する、客観的かつ法的に正しい方法で算出すること」です。
特に、中小企業のオーナー経営者などが遺す「非上場株式」は、市場価格が存在しないため、その評価方法が極めて複雑になります。
- 相続人間で「もっと価値があるはずだ」「いや、そんな価値はない」といった水掛け論になりやすい
- 税務署も、その評価額が適正かどうかを、極めて厳しくチェックしてくる
という、内と外、二つの大きな問題を抱えているのですね。
このような状況で、ご遺族だけで評価額を算出することは、まず不可能ですし、絶対にやってはいけません。
相続財産に株式、とりわけ非上場株式が含まれていることが判明したら、その時点ですぐに、株式評価に精通した相続専門の税理士に相談すること。
これが、無用な争いを避け、かつ、税務署からの厳しい追及を回避するための、唯一の正しい道筋と言えるでしょう。
1. なぜ揉める? 株式が“争族”の火種になる2つの理由
現金や預金と違い、株式の相続には特殊な難しさがあります。
理由①:価値が常に変動する(上場株式)
東京証券取引所などに上場している株式は、日々、株価が変動します。
「遺産分割協議をしている間に、株価が暴落してしまった」「兄が相続した株だけ、高騰しているのは不公平だ」といった、タイミングによる不公平感が、争いの種になりかねません。
理由②:客観的な価値が不明(非上場株式)
これが、最も深刻な問題です。
市場で売買されていない非上場株式には、誰もが納得する「時価」が存在しません。
会社の業績や資産状況などを基に、複雑な計算式を用いて、その価値を“算出”する必要があるのです。この算出方法を巡って、相続人間の利害が真っ向から衝突します。
2. どう計算する?「上場株式」と「非上場株式」の評価ルール
相続税法では、株式の評価方法が厳格に定められています。
【上場株式の評価方法】
以下の4つの価格のうち、最も低い価格を選択して評価することができます。
- 故人が亡くなった日(課税時期)の終値
- 故人が亡くなった月の、毎日の終値の月平均額
- 故人が亡くなった前月の、毎日の終値の月平均額
- 故人が亡くなった前々月の、毎日の終値の月平均額
これは、株価の急激な変動から相続人を守るための、納税者に有利なルールですね。
【非上場株式の評価方法】
こちらは、極めて複雑です。
会社の規模や、株主の状況によって、主に以下の3つの評価方式(あるいはその組み合わせ)が用いられます。
- 類似業種比準価額方式:事業内容が類似する上場企業の株価を基に評価する方法。
- 純資産価額方式:会社の資産と負債を相続税評価額で再計算し、その純資産額から評価する方法。
- 配当還元方式:その株式の過去の配当実績を基に評価する方法。
どの方式を用いるかの判断や、具体的な計算は、高度な専門知識がなければ絶対に不可能です。必ず、税理士に依頼しなければなりません。
3. 【実例】「会社の価値はゼロだ!」兄の嘘が招いた悲劇
実際に起きたトラブル事例です。
亡くなったお父様は、小さな町工場を経営しており、その会社の株式の全てを所有していました。
ご長男が後を継いでおり、相続人は、長男と、会社経営には関わっていない長女の二人でした。
遺産分割協議の場で、長男はこう主張しました。
「この会社は、親父がやっていたから何とかなっていただけで、実質的な価値はゼロだ。だから、会社の株は全部俺が相続する。お前には、預貯金の方を多く分けてやるから、それで納得してくれ」
長女は、会社の経営状況を全く知らなかったため、兄の言葉を信じ、その内容で遺産分割協議書に実印を押してしまいました。
しかし、その数年後、長男がその会社を第三者に売却し、多額の利益を得たことを知ります。
不審に思った長女が、税理士に依頼して、父の死亡時点の会社価値を再計算したところ、株式には数千万円の価値があったことが判明。
長女は、兄に騙されたとして、遺産分割協議の無効を求める、壮絶な裁判を起こすことになりました。
専門家による客観的な株価評価を怠ったことが、兄弟の絆を、取り返しのつかないほど深く引き裂いてしまったのです。
【まとめ】株式相続は“専門家の目”が不可欠。透明性が家族を守る
株式、特に非上場株式の相続は、ご遺族にとって、まさに“ブラックボックス”です。
その中身を信頼できる専門家に任せ、全員が納得できる形でオープンにすること。
それが、無用な争いを防ぐ、唯一の道と言えるでしょう。
では、本日のポイントをまとめます。
- 相続財産に株式がある場合、その「評価額」をどう算出するかが、遺産分割と相続税申告の最大の鍵。
- 特に「非上場株式」は市場価格がなく、評価方法が極めて複雑なため、相続人間の争いと、税務署からの否認リスクの、二大火種となる。
- 上場株式は、4つの価格から最も低いものを選択できる、納税者に有利なルールがある。
- 非上場株式の評価は、素人判断は絶対に禁物。必ず、株式評価に精通した相続専門の税理士に依頼すべき。
- 経営に関与していない相続人も、安易に相手の言葉を鵜呑みにせず、セカンドオピニオンとして別の専門家に評価を依頼する権利がある。
ご葬儀の場で、「父が人生をかけて守ってきたこの会社を、これからは私が…」と、力強く決意を語られる後継者の方。
その尊い想いが、相続を巡る骨肉の争いによって汚されることのないように。
そのためには、故人となられたオーナー経営者自身が、生前のうちに、自社の株価を正しく評価し、遺言書などで円滑な事業承継の道筋をつけておくことが、残される家族と、そして大切な会社を守るための、最後の、そして最大の務めではないでしょうか。
株式会社大阪セレモニー



