相続トラブルは他人事じゃない!弁護士いらずの家族になる「今からできる3つの習慣」
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「親が亡くなったけれど、うちは財産なんてほとんどないから、相続税なんて関係ないよね?」
多くの方が、そう思われているかもしれません。
しかし、その「うちは大丈夫」という思い込みが、後にご家族を深刻なトラブルに巻き込む、大きな落とし穴になる可能性があるのです。
相続税は、もはや一部の富裕層だけの問題ではありません。
特に、都市部に不動産をお持ちの場合、ごく普通のご家庭でも、申告義務が発生するケースは年々増加しています。
もし、申告が必要だったにもかかわらず、その義務を怠ってしまえば、税務署から厳しい追徴課税という、重いペナルティが科せられることになります。
今回は、この誰もが避けては通れない「相続税の基礎知識」をテーマに、
- 相続税がかかる人・かからない人を分ける「基礎控除」とは
- 自分でできる!相続税のかんたん計算シミュレーション
- 申告義務が発生する、意外なケース
- 税理士が実践する、合法的な節税対策の基本
などを、葬儀のプロの視点も交えながら、徹底的に分かりやすく解説していきましょう。
【結論】相続税の申告要否は「基礎控除額」を超えるかどうかで決まる。10ヶ月の期限内に、まず税理士へ相談が鉄則
相続税の申告が必要かどうかを判断するための、たった一つの基準、それが「基礎控除額」です。
相続した財産の総額が、この基礎控除額を下回っていれば、相続税は一切かからず、申告も不要です。
逆に、1円でも上回っていれば、申告と納税の義務が発生します。
基礎控除額の計算式は、非常にシンプルです。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
例えば、相続人が妻と子供2人の合計3人なら、
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円
となります。
つまり、亡くなった方の財産総額が4,800万円以下であればセーフ、それを超えればアウト、ということになるわけですね。
「4,800万円なんて、うちには関係ない」と思われるでしょうか。
しかし、もしご実家が大阪市内などの都市部にあり、それが持ち家であれば、その土地と建物の評価額だけで、この金額をあっさりと超えてしまう可能性は、決して低くはないのです。
そして、申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から、わずか10ヶ月しかありません。
「うちは大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、自己判断は絶対にせず、まずは相続専門の税理士に相談し、財産評価と申告要否の診断をしてもらう。
これが、ご自身の家族を未来の税務リスクから守るための、唯一の正しい道筋と言えるでしょう。
1. 何が対象?「相続税がかかる財産」の全リスト
まず、何を「財産」として計算するのかを、正確に把握する必要があります。
ご自身が思っている以上に、課税対象となる財産は広範囲に及びます。
■ プラスの財産
- 金融資産:現金、預貯金、株式、投資信託、国債など。
- 不動産:土地(宅地、農地、山林など)、建物(自宅、アパート、マンションなど)。
- 動産:自動車、貴金属、宝石、書画、骨董品など。
- その他:ゴルフ会員権、著作権、特許権など、金銭に見積もることができるすべてのもの。
■ みなし相続財産
これらは、民法上の相続財産ではありませんが、相続税法上は「相続財産とみなして」課税対象となる、特殊な財産です。
- 生命保険金:亡くなった方が保険料を負担していたもの。
- 死亡退職金:亡くなった方の死亡により、会社などから支払われるもの。
ただし、これらのみなし相続財産には、それぞれ「500万円 × 法定相続人の数」という、非常に有利な非課税枠が設けられています。
■ 相続開始前3年(改正後は7年)以内の贈与財産
亡くなる直前の駆け込み贈与による、租税回避を防ぐためのルールです。
これも、相続財産に加算して計算する必要があります。
2. うちの場合は?相続税のかんたん計算シミュレーション
では、実際に相続税がどのように計算されるのか、その流れを見てみましょう。
【例】相続財産:1億円、相続人:妻、子供2人(計3人)
STEP①:課税遺産総額を計算する
財産総額(1億円) - 基礎控除額(4,800万円) = 課税遺産総額 5,200万円
STEP②:相続税の総額を計算する
課税遺産総額(5,200万円)を、一旦、法定相続分で分けたと仮定して、それぞれの税額を計算し、合計します。
妻(法定相続分1/2):2,600万円 → 税額340万円
長男(法定相続分1/4):1,300万円 → 税額145万円
長女(法定相続分1/4):1,300万円 → 税額145万円
↓
相続税の総額:340万円 + 145万円 + 145万円 = 630万円
STEP③:各人が実際に納める税額を計算する
相続税の総額(630万円)を、実際に財産を取得した割合に応じて、それぞれが負担します。
例えば、妻が8割、子供たちが1割ずつ相続した場合、
妻:630万円 × 80% = 504万円
長男:630万円 × 10% = 63万円
長女:630万円 × 10% = 63万円
となります。
■ 配偶者の税額軽減の適用
ここで、妻には「配偶者の税額軽減」という強力な特例が適用できます。
これにより、妻が納めるべき504万円は、最終的に0円になります。
したがって、このケースで実際に納付する相続税は、子供たちの合計126万円となるわけです。
3. 申告は必須!特例を使うなら、納税額ゼロでも申告が必要
「うちは、配偶者の税額軽減を使えば、納税額はゼロになるから、申告しなくてもいいよね?」
これは、非常に多くの方が陥る、致命的な勘違いです。
「配偶者の税額軽減」や、後述する「小規模宅地の特例」といった、税額を大幅に減らすことができる特例は、相続税の申告書を期限内に提出して、初めてその適用を受けることができます。
つまり、計算上の納税額がゼロになったとしても、申告手続きそのものを省略することは、絶対に許されないのです。
この申告を怠れば、特例は適用されず、後日、税務署から多額の本税と、無申告加算税・延滞税を合わせた、厳しい納税通知が届くことになるでしょう。
4. 税理士が実践する、王道の節税対策5選
相続税は、生前の準備次第で、合法的にその負担を大きく軽減することが可能です。
- 生前贈与:年間110万円までの暦年贈与や、教育資金・住宅取得資金の非課税特例などを活用し、計画的に財産を次世代へ移転させていきます。
- 生命保険の活用:前述の「500万円 × 法定相続人の数」という大きな非課税枠を最大限に活用します。納税資金対策としても、極めて有効です。
- 不動産評価額の引き下げ:土地を更地のままにしておくのではなく、アパートを建てる(貸家建付地評価)、あるいは二世帯住宅を建てる(小規模宅地の特例)など、評価額を下げる工夫をします。
- お墓や仏壇の生前購入:お墓などの祭祀財産は、相続税の非課税財産です。生前に現金で購入しておくことで、その現金の分だけ、課税対象財産を圧縮できます。
- 遺言書の作成:これが、すべての対策の基礎となります。二次相続まで見据えた最適な分割割合を指定したり、小規模宅地の特例が使えるように、特定の相続人に自宅を相続させたりと、遺言書は節税戦略の司令塔となるのです。
【まとめ】相続税は“情報戦”。正しい知識と専門家が、家族の財産を守る
相続税対策とは、単なる税金の計算ではありません。
それは、故人が遺した大切な財産と想いを、いかにして次世代へと、最も良い形で繋いでいくかという、家族の未来を設計する、壮大なプロジェクトなのです。
では、本日のポイントをまとめます。
- 相続税の申告要否は、財産総額が「基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)」を超えるかどうかで決まる。
- 都市部に不動産がある場合、ごく普通の家庭でも申告義務が発生する可能性は十分にある。
- 「配偶者の税額軽減」などの特例を適用して納税額がゼロになる場合でも、申告手続きそのものは10ヶ月以内に必須。
- 最大の節税対策は、生前のうちに、相続専門の税理士に相談し、ご自身の家庭に合ったオーダーメイドの対策プランを立てること。
- 「うちは大丈夫」という根拠のない楽観は禁物。正しい知識を持つことが、未来の家族を無用な税務リスクから守る、最大の愛情表現。
ご葬儀の場で、故人様を偲ぶご家族が、その数ヶ月後、税務署からの突然の通知に青ざめ、途方に暮れる。
そんな悲しい光景を、私たちは決して見たくはありません。
故人様が遺してくれた大切な財産が、知識不足から、ただ税金として失われていくことのないように。
そのために、私たち葬儀社もご遺族に正しい情報を提供し、信頼できる専門家へと繋ぐ社会的責任があるのだと、強く感じています。
株式会社大阪セレモニー



