【葬儀費用節約術】その追加、本当に必要? オプション費用の賢い見極め方
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「〇〇警察署ですが、△△様(疎遠な叔父)のご親族でいらっしゃいますね?」
ある日突然、かかってきた一本の電話。
それが、遠い親戚の「孤独死」を告げるものであり、そして、ご自身の平穏な日常が、法的な責任と高額な費用負担という、終わりの見えない混乱に巻き込まれていく悪夢の始まりだとしたら…。
今回は、もはや誰もが他人事ではいられない「孤独死」をテーマに、
- なぜ、疎遠な親族にまで連絡が来るのか
- 「相続放棄」しても逃れられない、“管理責任”という法的罠
- 想像を絶する高額費用「特殊清掃」と「遺品整理」
- 誰が葬儀を?“喪主のなり手不在”が招く悲しい結末
などを、その壮絶な現実と共に、詳しく解説していきましょう。
【結論】孤独死の後始末は、疎遠な親族にも降りかかる重い法的責任。相続放棄しても“管理責任”は残り、高額費用の負担は不可避。
孤独死が発見された場合、警察は、亡くなられた方の戸籍を遡り、3親等内の親族(甥・姪、叔父・叔母など)まで、連絡を取ろうとします。たとえ何十年も会っていなかったとしても、です。
そして、多くの親族が直面するのが、「相続放棄をすれば、すべて解決する」という、あまりにも危険な誤解。
確かに、相続放棄をすれば、故人の借金を背負うことはありません。
しかし、
- 故人が住んでいた賃貸住宅の原状回復義務や、残された家財道具の管理責任は、次の相続人が管理を始めるまで残る可能性がある。
- その結果、特殊清掃や遺品整理にかかる、時に100万円を超える費用を、誰かが負担しなければならない。
という、厳しい現実から逃れることはできないのですね。
「自分には関係ない」という言葉は、法的には通用しないのです。
このような悲劇を回避するための根本的な対策は、故人本人が生前に「死後事務委任契約」などの備えをしておくこと以外にありません。
そして、もしあなたが連絡を受けてしまった側なら、一人で抱え込まず、その時点ですぐに相続問題に強い弁護士や、遺品整理の専門業者に相談することが、被害を最小限に食い止めるための唯一の道となるでしょう。
1. 「ご親族ですね?」警察からの電話、それが悪夢の始まり
孤独死は、死後、数週間から数ヶ月が経過して、異臭や家賃滞納などをきっかけに発見されるケースが少なくありません。
警察からの連絡:
事件性の有無を調べるため、まず警察が介入します。
同時に、ご遺体の引き取り手を探すため、戸籍を辿って親族へ連絡が入ります。
子供や兄弟がいない場合、甥や姪、叔父・叔母といった、3親等の親族にまで連絡が及ぶのが実情です。
突然の“当事者”に:
「最後に会ったのは、子供の頃の法事だったか…」
そんな、ほとんど記憶にもない遠い親戚の死によって、あなたは突然、様々な判断と責任を迫られる“当事者”になってしまうのです。
ご遺体の引き取り、葬儀の手配、そして、故人が住んでいた部屋の後始末…。
これら全てが、あなたの肩に重くのしかかってきます。
2. 最大の罠!「相続放棄」しても消えない“管理責任”
故人に借金があるかもしれない、関わりたくない、という思いから、ほとんどの親族がまず「相続放棄」を検討します。
これは、賢明な判断と言えるでしょう。
しかし、ここに最大の法的罠が潜んでいます。
民法の規定では、相続放棄をしたとしても、「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」と定められています。
簡単に言えば、あなたが相続人であることを知ってしまった以上、たとえ相続放棄をしても、次の相続順位の人や、裁判所が選んだ相続財産清算人が管理を始めるまでは、そのアパートの部屋などを善良に管理する責任が、あなたに残ってしまう可能性がある、ということです。
大家さんからすれば、部屋を放置されては困るため、この管理責任を根拠に、あなたに原状回復(特殊清掃や遺品整理)を求めてくる可能性があるのですね。
3. 想像を絶する費用負担「特殊清掃」と「遺品整理」
孤独死の現場の後始末は、通常のハウスクリーニングとは全く異なります。
特殊清掃:
ご遺体から染み出た体液による汚損や、強烈な腐敗臭、害虫の駆除などを行う、極めて専門的な清掃です。
部屋の状況によっては、床板の張り替えや壁紙の全交換といった大掛かりなリフォームが必要となり、費用は数十万円から、時に100万円をはるかに超えることも珍しくありません。
遺品整理:
残された家財道具一式の撤去にも、多額の費用がかかります。
特に、汚損が激しい場合は、通常の買取業者では対応できず、すべてを産業廃棄物として処分せざるを得ないため、費用はさらに高騰します。
これらの費用は、連帯保証人がいればその人が、いなければ、前述の管理責任を負う相続人が、最終的に負担を求められることになるでしょう。
4. 誰が葬儀を?“喪主のなり手不在”と、行政による“火葬のみ”の現実
金銭的な問題以上に、親族を悩ませるのが「誰が葬儀をするのか」という問題です。
誰もが喪主を拒否:
疎遠な親族のために、時間と労力、そして費用をかけてまで、葬儀の喪主を務めたいと考える人は、まずいないでしょう。
行政による火葬:
引き取り手のないご遺体は、最終的に「墓地、埋葬等に関する法律」に基づき、自治体が火葬(直葬)を行います。
しかし、これで終わりではありません。
自治体は、その火葬にかかった費用(十数万円~)を、後日、戸籍を辿って探し出した親族に請求してくるのです。
故人の尊厳を守るための、ささやかなお見送りすらままならない。これが、孤独死の、あまりにも悲しい結末なのです。
【まとめ】孤独死は、もはや“自己責任”では済まされない社会問題
孤独死は、個人の問題であると同時に、人間関係が希薄化した現代社会が産んだ、構造的な問題でもあります。
いつ、誰が、その当事者になってもおかしくないのです。
では、本日のポイントをまとめます。
- 孤独死の後始末は、たとえ疎遠でも3親等内の親族に連絡が来て、法的な責任を問われる可能性がある。
- 「相続放棄」をしても、賃貸物件の原状回復などの「管理責任」は残る可能性があり、後始末から完全に逃れることはできない。
- 特殊清掃や遺品整理には、時に100万円を超える高額な費用がかかり、その負担が親族にのしかかる。
- 最大の予防策は、本人による生前の備え(死後事務委任契約、財産管理契約、生前整理)。そして、社会から孤立しない、最低限の繋がりを持つこと。
- もし、あなたが連絡を受ける側になったら、絶対に一人で抱え込まず、すぐに弁護士や専門業者に相談することが、被害を最小限に抑える唯一の道。
ご葬儀の場で、故人様を偲ぶ人が誰一人いない。
そんな寂しいお見送りを、私たちは何度か経験してきました。
それは、故人様が生前に築いてこられた人間関係の、あまりにも悲しい結末です。
生前のほんの少しの備えと、社会との僅かな繋がりが、ご自身の最期の尊厳と、会ったこともない遠い親戚の人生を守ることに繋がる。
この事実を、社会全体で共有していく必要があるのではないでしょうか。
株式会社大阪セレモニー



