「まだ死んでないのに…」親の終活を切り出すタイミングと伝え方
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「終活、そろそろ始めないと、とは思うんだけど…」
「まだ元気だし、何から手をつけていいか分からないし、ついつい先延ばしに…」
そうお考えの方は、本当に多いことでしょう。
しかし、私たち葬儀のプロは、その「先延ばし」が後にどれほど深い後悔を残されたご家族に与えるかを、嫌というほど目の当たりにしてきました。
ご葬儀の場でご遺族から絞り出すように語られる、「ああ、生前、親がこれだけはやっておいてくれたら…」という、切実な後悔の言葉。
今回は、そんなご遺族の“涙の声”を基に、終活で「やっておけばよかった」と後悔されることワースト5を、ランキング形式でご紹介していきましょう。
【結論】終活の後悔は「情報がない」「意思が不明」の2点に尽きる。遺族の精神的負担をなくす“思いやり”こそが、終活の本質
ご遺族が直面する「やっておけばよかった」という後悔。その根源を突き詰めると、実は非常にシンプルです。
- 死後の手続きに必要な「情報」が、どこにも残されていないこと。
- 重要な決断を迫られた時に、道しるべとなるはずの故人の「意思」が、全く分からないこと。
この2つの“ない”が、残されたご家族を、手続きの迷宮と、精神的な苦悩の淵へと突き落とすのですね。
裏を返せば、この2つさえ準備しておけば、終活の8割は完了したと言っても過言ではないでしょう。
終活とは、単なる死後の準備ではありません。それは、残される家族が、不要な争いや苦労をすることなく、穏やかに故人を偲ぶ時間を過ごせるようにしてあげるための、最高の「思いやり」であり「愛情表現」なのです。
1. 【第5位】家の片付け(生前整理)
まず第5位は、物理的なモノの整理です。
残された家の片付け、すなわち「遺品整理」は、ご遺族にとって想像を絶するほどの時間と労力、そして精神的な負担を強いることがあります。
特に、モノが多いご実家の場合、「これは本当に捨てていいものか?」と一つひとつ判断する作業は、悲しみの中で行うには、あまりにも過酷でしょう。
業者に依頼すれば、数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません。
2. 【第4位】財産の見える化(財産目録の作成)
第4位は、お金に関する情報の整理です。
どの銀行に口座があるのか、保険はどこに入っているのか、借金はないのか…。これらの情報が不明なままでは、相続手続きは一歩も進みません。
「親の財産を探す」という作業だけで数ヶ月を要し、その過程で兄弟間の疑心暗鬼が生まれ、「隠している財産があるのでは?」という、不毛な争いの火種になりかねないのです。
3. 【第3位】医療・介護の希望伝達(延命治療の意思表示)
第3位は、ご自身の「命の終わり方」に関する意思表示です。
これが、おそらくご家族にとって、最も精神的に重い後悔でしょう。
本人の意思が不明なまま、回復の見込みのない延命治療を続けるか否か、その「命の選択」をご家族が迫られるからです。
どちらを選んでも、「あの時の判断は、本当に正しかったのだろうか」「自分が親の死を決めてしまった」という、重い十字架を、生涯背負い続けることになりかねません。
4. 【第2位】想いと情報の記録(エンディングノートの作成)
第2位は、エンディングノートという形で、ご自身の想いや情報を包括的に残しておくことです。
葬儀に誰を呼べばいいか、遺影はどの写真がいいか、といった具体的なことから、スマホやPCのパスワードといったデジタル遺品の情報まで、分からないことだらけで途方に暮れてしまうからです。
そして何より、「ありがとう」の一言でもいい、親からの最後のメッセージが欲しかった、という感情的な後悔が、深く心に残ります。
5. 【第1位】法的な意思表示(遺言書の作成)
そして、最も深刻で、取り返しのつかない後悔を生むのが、第1位、「遺言書」の不在です。
遺言書がない、というたった一つの事実が、それまで仲の良かったはずの兄弟姉妹を、財産を奪い合う敵同士へと変貌させ、家族の絆を永久に引き裂いてしまうからです。
「父さん(母さん)が、遺言書さえ書き残してくれていたら、私たちはこんなに憎しみ合わずに済んだのに…」
この悲痛な叫びを、私たちは何度、耳にしてきたことでしょうか。
【まとめ】“後悔”先に立たず。想いを形にすることが、最高の終活
「いつかやろう」と思っているうちに、その「いつか」は、二度と来なくなってしまう。
それが、人生の、そして終活の厳しい現実です。
では、本日のポイントをまとめます。
- 終活の後悔の根源は「情報不足」と「意思の不在」。これらが遺族を精神的・物理的に追い詰める。
- 第1位は「遺言書の不在」。これが、仲の良い家族を「争族」に変える最大の原因。
- 延命治療の意思表示がないことは、家族に「命の選択」という、最も重い十字架を背負わせる。
- 財産目録やエンディングノートは、手続きの負担を減らすだけでなく、家族の無用な疑心暗鬼を防ぐ効果がある。
- 終活とは、残された家族が「故人は、自分たちのことを最後まで想ってくれていた」と実感するための、最高の愛情表現である。
ご葬儀の場で、故人様が遺してくださったエンディングノートや遺言書を手に、「父らしい、見事な最期でした」と、穏やかにお話しされるご家族がいらっしゃいます。
それは、故人様の周到な準備が、残されたご家族の悲しみを、深い感謝と尊敬の念へと昇華させた、何よりの証拠なのですね。
想いを形にすること。
それこそが、時を超えて家族の心に残り続ける、最も価値ある遺産となるのではないでしょうか。
株式会社大阪セレモニー



