後妻と前妻の子との間の遺産相続トラブル事例を紹介!
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「親のPCから、ビットコインの取引履歴が見つかった…」
「この暗号資産って、相続財産になるの?税金はどう計算すればいい?」
「そもそも、どうやって現金化すればいいのか、見当もつかない…」
投資対象として急速に普及する、ビットコインなどの「暗号資産(仮想通貨)」。
しかし、その所有者が亡くなった時、残されたご遺族は、全く新しい形の“デジタル遺産相続”という、未知の難問に直面することになります。
今回は、この極めて現代的な「暗号資産の相続」をテーマに、
- 暗号資産は、もちろん相続税の課税対象
- 刻一刻と価値が変わる!相続税評価の特殊なルール
- ログインできなければ“ゼロ円”に?秘密鍵の壁
- 残された家族を路頭に迷わせないための、生前の必須準備
などを、分かりやすく解説していきましょう。
【結論】暗号資産は相続税の課税対象。評価額は“死亡日の最終価格”が基本。ログイン情報(秘密鍵)がなければ、価値はゼロになるリスクも
まず大前提として、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産は、相続税の課税対象となる「財産」です。
これを申告しなければ、申告漏れとして追徴課税の対象となります。
しかし、その相続手続きは、預貯金や不動産とは全く次元が異なります。
- 相続税を計算するための評価額は、常に変動する市場価格を基に、特別なルールで算出しなければならない。
- 最も致命的なのは、故人の取引所アカウントへのログイン情報(ID・パスワード)や、ウォレットの秘密鍵が分からなければ、その資産にアクセスすることすらできず、法的には存在していても、事実上、価値がゼロになってしまうリスクがある。
ということです。
この新しい形のデジタル遺産相続を成功させる鍵は、ただ一つ。
所有者本人が、元気なうちに、必要なログイン情報を、信頼できる家族に分かる形で残しておくこと。
この「情報の相続」がなければ、残された暗号資産は、永遠に引き出せない“幽霊資産”と化してしまうのですね。
1. 評価額はいつの時点?暗号資産の特殊な相続税評価ルール
相続税の計算の基礎となる財産の評価額は、原則として「被相続人が死亡した日(相続開始日)の時価」と定められています。
では24時間365日、常に価格が変動している暗号資産の「時価」は、どう決めるのでしょうか?
国税庁は、以下のようなルールを示しています。
評価方法:
- 相続人が利用可能な暗号資産交換業者(取引所)が公表する、課税時期(死亡日)の取引価格によって評価する。
- ただし、継続的に価格情報が提供されている、信頼性の高い交換業者の価格を用いる必要があります。
- (※最終価格、1日の平均価格など、どの時点の価格を用いるかについては、専門家である税理士と相談の上、最も合理的な方法を選択すべきでしょう)
もし、故人が海外の取引所しか利用していなかったり、相対取引で入手していたりした場合は、評価方法がさらに複雑になります。
2. 最大の壁!ログインできなければ、ただの“電子ゴミ”
相続税評価以上に、ご遺族にとって深刻なのが、この「アクセス権」の問題です。
暗号資産は、その性質上、所有者本人しか知らない、極めて厳重なセキュリティで守られています。
- 取引所のアカウント:ログインするためのIDとパスワード、そして二段階認証の情報が必要です。
- 個人ウォレット:資産を直接管理するウォレットの場合、そのアクセスキーとなる「秘密鍵(プライベートキー)」や「リカバリーフレーズ」がなければ、絶対に中身を取り出すことはできません。
これらの情報が、故人の死と共に永遠に失われてしまえば、たとえそこに数千万円分のビットコインが存在していたとしても、ご遺族は指をくわえて見ていることしかできないのです。
これは相続放棄とは全く違う、資産が“消滅”するに等しい、最も悲劇的な結末と言えるでしょう。
3. 家族を“デジタル難民”にしないための、生前の必須準備
この新しい悲劇を避けるために、暗号資産を所有する方は、何を準備しておくべきなのでしょうか。
【エンディングノートなどに記録すべき情報】:
- 利用している暗号資産交換業者の名称
- 取引所アカウントのログインIDとパスワード(のヒント)
- 二段階認証の方法(スマホアプリか、SMSかなど)
- 個人ウォレットの「秘密鍵」や「リカバリーフレーズ」(紙に印刷し、貸金庫など物理的に安全な場所に保管するのが望ましい)
- おおよその保有銘柄と数量
これらの情報を、遺言書などとは別に、信頼できる家族だけが分かる形で残しておく。
これが、所有者の最低限の責任ではないでしょうか。
【まとめ】“情報の相続”が、デジタル遺産の価値を決める
暗号資産の相続は、もはや「モノ」や「権利」の相続ではありません。それは、故人しか知り得ない「情報」そのものを、いかにして次世代へ引き継ぐかという、全く新しい課題を私たちに突きつけています。
では、本日のポイントをまとめます。
- 暗号資産は相続税の課税対象であり、その評価額は死亡日の市場価格を基に算出する。
- 最大の落とし穴は、ログイン情報や秘密鍵が不明な場合、資産にアクセスできず、事実上、無価値になってしまうこと。
- 故人が利用していた取引所や、保有銘柄を特定するだけでも、ご遺族には多大な労力がかかる。
- 暗号資産の所有者は、必ず生前のうちに、アクセスに必要な全ての情報をエンディングノートなどに記録し、その存在を家族に伝えておく義務がある。
- 物理的な財産だけでなく、「デジタル遺品」の整理と情報共有が、現代の終活では不可欠。
ご葬儀の場で、故人様が先進的な投資家であったというお話を伺うことがあります。
しかしその先進性が、死後、ご家族を前例のない困難に陥れてしまうとしたら、あまりにも皮肉な結末です。
新しい時代の財産には、新しい時代の「遺し方」の作法がある。
そのことを、私たちは肝に銘じる必要があるのかもしれません。
株式会社大阪セレモニー



