相続税が払えない!「延納」「物納」の厳しい実態

山田泰平

山田泰平

テーマ:相続関係

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレ-モニー代表の山田泰平です。

「親が遺してくれた財産は、この実家だけ。でも、相続税は現金で払わなければならない…」

「納税資金が、どうしても足りない。一体どうすれば…」

ご葬儀の後、相続税の申告準備を進める中で、このような「納税資金不足」の問題に直面し、青ざめるご遺族は少なくありません。

相続税は、原則として「申告期限(10ヶ月)までに」「現金で」「一括納付」しなければなりません。

それが困難な場合の救済措置として、「延納」と「物納」という2つの制度が用意されています。

しかし、これらの制度は、決して“優しい救済措置”ではないのです。

今回は、この「相続税が払えない時の最終手段」をテーマに、

  • 「延納」に課せられる、高額な利子税の現実
  • 「物納」が、ほとんど認められない厳しい理由
  • 制度利用の前に、まず検討すべき他の資金調達法
  • 最悪の事態を招かないための、生前からの備え


などを、その厳しい実態と共に、詳しく解説していきましょう。

【結論】延納・物納は“最後の切り札”だが、適用ハードルは極めて高い。安易に頼らず、まずは専門家と他の納税資金策を模索すべき

相続税の「延納(分割払い)」や「物納(不動産などで納付)」は、納税が困難な相続人のための、まさに最後のセーフティネットと言えるでしょう。

しかし、これらの制度を利用するためには、

  1. 他の財産を売却しても現金化が困難である、といった厳格な要件を満たす必要がある
  2. 延納には、銀行ローン並みの高額な「利子税」がかかる
  3. 物納できる財産には、厳しい適格要件があり、国に却下されるケースがほとんど

という、極めて高いハードルが存在します。

「払えなければ、延納か物納をすればいい」という安易な考えは、非常に危険です。

これらの制度に頼る前に、まずは「生命保険金の活用」「金融機関からの借り入れ(納税ローン)」「相続した不動産の一部の売却」といった、他の現実的な納税資金の調達方法を、相続専門の税理士と共に徹底的に模索することが、何よりも重要だと言えます。

1. 【分割払い】「延納」制度と、その重い“利子”

延納とは、相続税を分割で支払う制度です。期間は、財産の内容に応じて最長20年まで認められる場合があります。


適用要件:

  • 相続税額が10万円を超えていること。
  • 金銭で一括納付することが困難な理由があること。
  • 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。(延納税額が100万円以下、かつ延納期間が3年以下の場合は不要)



最大のデメリット:「利子税」

延納期間中は、元本に対して「利子税」という名の利息がかかります。この利率は、市中の金利よりも高く設定されることが多く、場合によっては年率数%にも及びます。

支払総額は、本来の納税額よりも大幅に膨れ上がってしまう。これが、延納の最も重い負担と言えるでしょう。

2. 【不動産で納税】ほとんど使えない「物納」制度の現実

物納とは、延納によっても金銭での納付が困難な場合に、不動産や株式といった「モノ」で相続税を納める制度です。


なぜ、ほとんど使えないのか:

その理由は、物納できる財産(物納適格財産)の要件が、あまりにも厳しいからです。

  • 国が管理・処分するのに不適当な財産は、すべて却下される。
  • (例:境界が不明確な土地、抵当権が設定されている不動産、共有名義の不動産、訴訟中の不動産など)
  • 物納の優先順位が厳格に決まっており、国債や不動産が第一順位。非上場株式などは、他に物納できる財産がない場合にしか認められない。

実際、国税庁の統計によれば、物納の許可件数は、全国で年間わずか数十件程度に過ぎません。物納は、もはや「幻の制度」と言っても過言ではないのです。

3. 延納・物納の前に!まず検討すべき3つの現実的な選択肢

では、納税資金が足りない場合、まず何をすべきでしょうか。


選択肢①:生命保険金の活用

故人が遺してくれた生命保険金は、納税資金として最も有効です。

保険金は現金ですぐに受け取れる上、「500万円 × 法定相続人の数」という大きな非課税枠があります。



選択肢②:銀行の「納税ローン」の利用

延納の利子税よりも、銀行などの金融機関が提供する「相続税納税ローン」の方が、金利が低い場合があります。

まずは、取引のある銀行に相談してみるべきでしょう。



選択肢③:相続財産の一部の売却

これが最も現実的で、一般的な解決策かもしれません。

相続した不動産の一部や、株式などを売却して現金化し、納税資金にあてる方法です。

ただし、売却には時間がかかりますので、10ヶ月の申告期限を見据え、早期に不動産会社や証券会社に相談する必要があります。

【まとめ】納税資金対策は、生前の“思いやり”がすべて

相続税が払えないという事態は、残されたご家族の生活基盤そのものを揺るがしかねない、非常に深刻な問題です。

では、本日のポイントをまとめます。

  • 相続税が払えない場合の「延納」「物納」は、適用要件が極めて厳しく、簡単に利用できる制度ではない。
  • 延納には銀行ローン並みの高い「利子税」がかかり、物納は国の審査が厳しく、ほとんど認められないのが実態。
  • これらの制度に頼る前に、まずは「生命保険」「納税ローン」「財産の一部売却」といった、他の資金調達方法を税理士と検討すべき。
  • 最大の対策は、財産を遺す側が、元気なうちに、納税資金のことまで考えた生前対策(生命保険への加入や、換金性の高い資産の準備など)を講じておくこと。
  • 遺言書で「この不動産は納税資金のために売却するように」と指定しておくことも、家族の迷いをなくす有効な手段。


ご葬儀の場で、故人様を偲ぶご遺族が、その数ヶ月後に、納税のことで頭を抱え、苦しむ姿を見るのは、私たちにとって非常に辛いことです。

財産を遺すということは、その財産にかかる税金の「出口戦略」までを考えてあげること。

それこそが、残されるご家族への、最後の、そして最大の思いやりなのではないでしょうか。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
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山田泰平(葬儀)

株式会社大阪セレモニー

当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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