【世帯主が死亡】死後14日以内の「世帯主変更届」とは?手続きしないとどうなる?
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「親の成年後見人を務めていた長男が、親の死後、そのまま相続人として遺産分割協議に参加できるのか?」
「自分が後見人だったからといって、他の兄弟より多く財産を相続しても良いのだろうか?」
ご家族の介護と財産管理のために成年後見人を務めていた方が、被後見人の死後、相続人という全く別の立場になる。
この時、多くのご家庭で「利益相反」という、非常にデリケートで複雑な法的問題が浮上します。
今回は、この「成年後見人と相続人の立場を兼ねるケース」に焦点を当て、
- なぜ「利益相反」が問題になるのか
- 遺産分割協議で、絶対にやってはいけないこと
- 家庭裁判所への「特別代理人」選任申立てとは
- トラブルを未然に防ぐための、生前の備え
などを、分かりやすく解説していきましょう。
【結論】後見人兼相続人は、遺産分割協議に直接参加できない。家庭裁判所への「特別代理人」の選任申立てが必須
成年後見人としての立場は、あくまで「被後見人(親)の財産を守る」ことにあります。
一方で、相続人としての立場は、「自身の取り分を確保する」ことです。
被後見人が亡くなり、遺産分割協議の場において、この二つの立場は真っ向から対立しますが、これを法律用語で「利益相反」と呼びます。
この利益相反の状態を解消しないまま、元後見人であった相続人が遺産分割協議を進めてしまうと、
- その遺産分割協議自体が、法的に「無効」となる可能性がある。
- 他の相続人から「不公平だ」と、後々訴訟を起こされるリスクがある。
といった、深刻な事態を招きかねません。
このような悲劇を避けるための唯一の正しい手続きが、家庭裁判所に対し、「特別代理人」の選任を申し立てることです。
元後見人であった相続人は協議から一旦離れ、家庭裁判所が選んだ中立な立場の特別代理人が、他の相続人と協議を行う。
これが、法律に則った唯一の解決策なのです。
1. なぜ問題?「財産を守る立場」と「財産をもらう立場」の衝突
成年後見人の最大の義務は、被後見人の財産を善良な管理者の注意をもって管理し、本人の利益を守ること。
決して、自分の利益のために行動してはなりません。
しかし、相続の場面ではどうでしょうか。
例えば、後見人であった長男が、他の兄弟(相続人)と遺産分割協議を行うとします。
長男が自身の相続分を少しでも多く主張すれば、それは他の相続人の取り分を減らすことになり、被後見人であった親から見れば「長男以外の子供たちの利益を害する」行為と見なされかねません。
つまり、自身の利益を追求することが、同時に、後見人として守るべきだった「被後見人全体の利益(この場合は相続人全体の利益)」と相反してしまうのです。
この状態を放置することは、法的に許されないでしょう。
2. 絶対にやってはいけない!後見人兼相続人が陥る致命的な過ち
良かれと思って行った行為が、取り返しのつかない事態を招くことがあります。
【典型的な過ち】:
- 「自分がずっと介護してきたのだから」と、他の相続人の同意を得ずに、多めに財産を取得する内容の遺産分割協議書を作成してしまう。
- 他の相続人が未成年者や認知症である場合に、その後見人として、自分に有利な内容の遺産分割に同意してしまう。(二重の利益相反)
- 特別代理人を選任せず、元後見人の立場で遺産分割協議を主導し、不動産の名義変更(相続登記)をしようとする。(法務局で手続きが止まります)
これらの行為は、後見人としての任務に著しく違反したとみなされ、他の相続人から損害賠償を請求される可能性も否定できません。
3. 唯一の解決策「特別代理人」の選任手続きとは
利益相反の問題を合法的にクリアするための手続きが、「特別代理人」の選任申立てです。
手続きの流れ:
- 申立て:元後見人であった相続人や、他の利害関係者が、被後見人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、特別代理人の選任を申し立てます。
- 候補者の選定:申立ての際に、特別代理人の候補者(弁護士や司法書士などの専門家が望ましい)を推薦することができます。候補者に心当たりがなければ、裁判所が選任します。
- 選任・審判:裁判所が候補者の適格性を審査し、問題がなければ特別代理人として選任する審判を下します。
- 遺産分割協議:選任された特別代理人が、元後見人であった相続人に代わって、他の相続人と遺産分割協議を行います。
この手続きには1~2ヶ月程度の時間がかかります。
相続税の申告期限(10ヶ月)も考慮し、相続開始後、速やかに手続きに着手する必要があります。
【まとめ】後見人の責務は死後も続く。正しい手続きが家族を守る
成年後見人という重責を担ってこられたからこそ、その最後の仕上げとして、ご自身の立場を正しく理解し、適切な法的手続きを踏むことが求められます。
では、本日のポイントをまとめます。
- 成年後見人が相続人でもある場合、遺産分割協議において「利益相反」が生じるため、直接協議に参加することはできない。
- 利益相反を解消する唯一の正しい方法は、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てること。
- 特別代理人を選任せずに行った遺産分割協議は、無効となるリスクが極めて高い。
- 最大の予防策は、被後見人(親)が元気なうちに、遺産分割の内容を定めた「公正証書遺言」を作成しておくこと。
- 後見人としての誠実な務めを全うするためにも、死後の手続きで不明な点があれば、すぐに弁護士や司法書士に相談すべき。
生前の介護や財産管理という多大な貢献は、決して軽んじられるべきものではありません。
しかし、その貢献が法的に正しく評価されるためにも、死後の手続きで過ちを犯してはならないのです。
私たち葬儀社も、ご葬儀の場でこうした複雑なご事情を伺った際には、相続に詳しい専門家へ速やかにお繋ぎし、ご家族が法的なリスクを回避できるようサポートすることも、重要な役割だと考えています。
株式会社大阪セレモニー



