【専門家が解説】成年後見人、被後見人の死亡後にすべき手続きと注意点
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「親が老人ホームに入居することになったので、家の荷物を整理している」
「施設に入った後、親の財産管理や、もしもの時の手続きはどうすればいいのだろう?」
親御様の施設ご入居は、ご家族にとって一つの大きな節目です。
身の回りの物を片付けると同時に、これは将来の「もしもの時」に備える、またとない機会でもあります。
そこで今回は、「親が施設に入る前に、子がやっておくべき死後の手続きの準備」をテーマに、
- なぜ「施設入居前」が準備のベストタイミングなのか
- 最低限確認すべき「重要書類」と「意思」
- 入居後の財産凍結リスクに備える「任意後見制度」
- 親へのデリケートな話の切り出し方のコツ
などを、分かりやすく解説していきます。
【結論】施設入居前の準備が、将来の負担を激減させる。親の判断能力が確かなうちに「重要書類の場所」と「本人の意思」の確認を
親御様が施設に入られる前のタイミングは、ご自宅の整理と並行して、将来の相続や死後の手続きに必要な情報を整理する絶好の機会です。
この段階で最低限やっておくべきことは、
- 実印・通帳・保険証券など「重要書類」の保管場所の確認
- 延命治療や葬儀・お墓に関する「本人の意思」の確認と記録
この2点です。
なぜなら、一度施設での生活が始まると、ご本人の判断能力が徐々に低下したり、ご自宅が空き家になったりして、これらの情報を確認することが極めて困難になるからです。
親御様の判断能力がしっかりしている「今」を逃さず、ご本人の希望を直接聞き、必要な情報を共有しておくこと。
それが、将来の相続トラブルを防ぎ、ご家族全員の心身の負担を大きく減らすための、最も賢明な選択と言えます。
1. なぜ「施設入居前」が準備のラストチャンスなのか?
施設入居前のタイミングが重要であるのには、明確な理由があります。
理由①:物理的に「モノ」を整理するから
ご自宅の荷物を整理する過程で、普段は目にしないタンスの奥や金庫の中から、通帳や権利証、保険証券といった重要書類が見つかることがよくあります。これは、財産や負債の状況を把握するチャンスです。
理由②:精神的に「終活」の話を切り出しやすいから
施設への入居は、親御様自身もご自身の人生の棚卸しをする時期です。
「これからのことを一緒に考えよう」という形で、普段は切り出しにくい葬儀やお墓、財産の話を、自然な流れで始めることができます。
理由③:法的に「本人の意思」が確認できるから
最も重要なのがこの点です。ご本人の判断能力がしっかりしているうちにしか、法的な契約(任意後見など)を結んだり、有効な意思表示を記録したりすることはできません。
認知症が進行した後では、全てが手遅れになってしまう可能性があります。
2. 最低限これだけは!確認しておくべき重要リスト
施設入居の準備と並行して、以下の項目をリスト化し、親子で一緒に確認作業を進めましょう。
【重要書類リスト】:
- 実印、銀行印、認印とその保管場所
- 預貯金通帳、キャッシュカード(銀行名・支店名・口座番号の一覧作成)
- 有価証券(株券など)や投資信託の取引報告書
- 生命保険、医療保険、損害保険の保険証券
- 不動産の権利証(登記識別情報通知)、固定資産税の納税通知書
- 年金手帳、年金証書
- ローンや借金の契約書、クレジットカード
【意思確認リスト】:
- 延命治療や介護に関する希望(リビング・ウィル)
- 葬儀やお墓に関する希望(形式、場所、連絡してほしい友人など)
- 訃報を伝えてほしい人の連絡先リスト
- 大切なペットの処遇
これらの内容は、親子で話し合いながら「エンディングノート」に記録してもらうのが最適です。
ご本人の想いを残すことができ、残された家族が手続きで迷うことがなくなります。
3. 入居後の「もしも」に備える、一歩進んだ法的準備
より確実に将来の不安に備えたい場合は、法的な制度の活用も検討しましょう。
①任意後見契約:
施設入居後に親御様の判断能力が低下した場合、預金口座が凍結され、施設の利用料などが引き出せなくなるリスクがあります。
これを防ぐのが「任意後見契約」です。
元気なうちに、子供などを後見人として指定しておくことで、判断能力が低下した後も、本人のために財産管理を続けることができます。
②死後事務委任契約:
ご自身が亡くなった後の葬儀や納骨、遺品整理などの手続きを、生前のうちに子供などに法的に依頼しておく契約です。
子供が遠方に住んでいる場合など、負担をかけたくないという親御様の想いを形にできます。
死後事務委任契約とは?葬儀・遺品整理で後悔しない活用法と注意点
【まとめ】親の施設入居は家族の絆を深める好機。未来の安心を一緒に作ろう
死後の手続きの準備は、決してネガティブな作業ではありません。
それは、親御様がご自身の人生を振り返り、その想いを家族に託す、大切なコミュニケーションの時間です。
では、本日のポイントをまとめます。
- 親の施設入居前は、死後の手続きの準備をする絶好の機会であり、ラストチャンスでもある。
- 最低限、「重要書類の保管場所」と「葬儀などに関する本人の意思」をエンディングノートなどに記録しておく。
- 判断能力が低下した後の財産凍結リスクには「任意後見契約」が有効。
- 準備を進める際は、「親の希望を叶えるため」というスタントで、焦らず、敬意をもって話を聞くことが大切。
- 親子で一緒に終活に取り組むことで、将来の不安が解消され、家族の絆がより一層深まる。
私たち葬儀社は、生前のご相談を通じて、エンディングノートの書き方のアドバイスや、任意後見などに詳しい司法書士のご紹介も行っております。
ご家族だけでは進めにくいと感じたら、どうぞお気軽に私たち専門家を頼ってください。
株式会社大阪セレモニー



