「相続した実家、誰も住まないけど、どうすればいいの?」
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
長年連れ添い、事実上の夫婦として生活を共にしてきたけれど、様々な事情から婚姻届は提出していない、「内縁関係」のパートナー。
お互いを人生の伴侶として、支え合ってきたかけがえのない存在ですよね。
しかし、そのパートナーの一方がお亡くなりになった時、法律上の婚姻関係がないことで、相続において非常に厳しい現実に直面することになります。
日本の法律では、残念ながら、内縁の配偶者には、法定相続人としての権利が認められていません。
しかし、だからといって、全く何も手立てがないわけではありません。
今回は、この「内縁の妻(夫)の相続」という、非常にデリケートかつ法的な知識が不可欠となる問題について、
- なぜ内縁関係では相続権が認められないのか?
- 内縁のパートナーが財産を受け取るための具体的な方法(遺言、特別縁故者など)
- 住んでいた家や、遺族年金などの権利はどうなるのか?
- 生前にできる対策の重要性
などを、分かりやすく解説していきます。
【結論】内縁の妻(夫)に相続権はなし。財産を遺すには生前の「遺言」が必須、死後は特別縁故者制度等の検討も
まず【結論】として、日本の現在の法律では、内縁の妻(夫)には、法定相続人としての相続権は一切認められていません。
たとえ何十年連れ添い、周囲が夫婦同然と認めていたとしても、戸籍上の配偶者でなければ、故人の財産を自動的に相続することはできないのです。
したがって、内縁のパートナーに財産を遺したい、あるいは受け取りたいと考える場合、
1.【生前の対策が最重要】 故人となる方が、生前に「内縁の妻(夫)に財産を遺贈する」旨を明記した、法的に有効な遺言書を作成しておくことが、最も確実で強力な方法です。
2.【死後の手続き】 もし遺言書がない場合、
①他に法定相続人が誰もいない場合に限り、家庭裁判所に「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」として財産分与を申し立てる。
②賃借権や、遺族年金など、個別の権利を主張できる場合がある。
といった、限られた方法を検討することになります。
内縁関係にある方が、ご自身の権利と生活を守るためには、何よりもまず「遺言書」の有無が決定的に重要となります。
そして、遺言書がない場合に何らかの権利を主張するためには、家庭裁判所での手続きが必要となることが多いため、必ず早期の段階で、相続問題に詳しい弁護士に相談することが不可欠です。
1. なぜ内縁の妻(夫)に相続権がないのか? 法的な位置づけ
日本の民法では、法定相続人となれる人の範囲が厳格に定められています。
それは、被相続人の「配偶者」、そして「血族(子、親、兄弟姉妹など)」です。
ここでの「配偶者」とは、法律上の婚姻届を提出している戸籍上の配偶者のみを指します。
内縁関係は、社会的には夫婦として認められていても、法的には婚姻関係とは見なされないため、法定相続人にはなれないのです。
もし、故人に子や親、兄弟姉M妹といった法定相続人が一人でもいる場合、遺言書がなければ、全ての財産はそれらの法定相続人に渡り、内縁のパートナーは原則として何も受け取ることができません。
2. 内縁のパートナーが財産を受け取るための具体的な方法
方法① 遺言書による「遺贈」:
これが最も確実で、最も重要な方法です。
故人が生前に、「内縁の妻(夫)である〇〇に、私の全財産(または、〇〇の財産)を遺贈する」といった内容の遺言書を作成しておけば、内縁のパートナーは、受遺者(いぞうしゃ:遺贈を受ける人)として、その財産を受け取ることができます。
ただし、他の法定相続人(子など)がいる場合、その相続人には「遺留分」を請求する権利があります。遺言書を作成する際は、この遺留分にも配慮した内容にすると、後のトラブルを防ぎやすくなります。
遺言書は、法的に有効な形式(自筆証書遺言、公正証書遺言など)で作成されている必要があります。
方法② 生命保険金の受取人指定:
故人が生命保険に加入し、その死亡保険金の受取人を内縁のパートナーに指定しておく方法です。
死亡保険金は、原則として受取人固有の財産とみなされるため、相続財産には含まれず、遺産分割協議の対象外となります。相続放棄をした場合でも受け取ることが可能です。
方法③ 死因贈与契約:
故人が生前に、内縁のパートナーとの間で、「私が死亡したら、この財産をあなたに贈与します」という契約(死因贈与契約)を書面で結んでおく方法です。遺贈と似ていますが、契約である点が異なります。
方法④ 特別縁故者としての財産分与申立て:
これは、故人に法定相続人が一人もいない場合にのみ検討できる、最終手段です。
故人と生計を同じくしていた者、故人の療養看護に努めた者、その他故人と特別の縁故があった者が、家庭裁判所に申し立て、相当と認められれば、相続財産の全部または一部を受け取ることができます。
内縁のパートナーは、この「特別縁故者」に該当する可能性が高いですが、申立てには期限(相続人不存在が確定してから3ヶ月以内)があり、必ず認められるとは限りません。
3. 住んでいた家や、年金などの権利はどうなる?
財産そのもの以外にも、生活に関わる重要な権利があります。
住んでいた家(賃貸の場合):
もし故人が借りていた家に一緒に住んでいた場合、その賃借権を事実上引き継ぎ、住み続けられる可能性があります(借地借家法)。ただし、大家さんの承諾や、法定相続人との間で問題が生じないよう、話し合いが必要です。
住んでいた家(故人所有の場合):
①遺言書がなければ、その家は法定相続人のものとなります。内縁のパートナーには所有権はありません。
②法定相続人から立ち退きを求められる可能性があります。ただし、長年の同居関係などから、すぐに出ていく必要はなく、一定期間住み続ける権利(使用貸借など)が認められる場合もありますが、不安定な立場であることに変わりはありません。
遺族年金:
年金制度においては、一定の要件(生計維持関係など)を満たせば、”内縁関係のパートナーも「遺族」として、遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れる”場合があります。これは大きな生活の支えとなり得ますので、必ず年金事務所に相談しましょう。
未支給年金:故人が受け取るはずだった未支給年金についても、生計を同じくしていた内縁のパートナーが請求できる場合があります。
会社の弔慰金・死亡退職金:会社の規程によっては、内縁の配偶者が受取人として認められている場合があります。勤務先に確認しましょう。
4. 生前にできる対策の重要性
ここまで見てきたように、内縁関係では、故人が亡くなった後にパートナーが主張できる権利は非常に限定的で、不安定です。
そのため、お互いの将来を本当に想うのであれば、必ず生前のうちに対策を講じておくことが不可欠です。
遺言書の作成:
内縁のパートナーに財産を確実に遺すためには、遺言書(特にトラブルの少ない公正証書遺言)の作成が絶対に必要です。
生命保険の活用:
死亡保険金の受取人に指定しておく。
お互いの意思の確認:
将来について、お互いがどう考えているのかを、日頃から話し合っておくことが大切です。
事実婚の証明:
内縁関係であったことを客観的に証明できるよう、住民票の続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」としておく、周囲に夫婦として紹介しておく、といったことも、遺族年金などの請求の際に役立つことがあります。
婚姻届の提出:
法的な権利を最も確実にするのは、やはり法律上の婚姻関係を結ぶことです。
【まとめ】内縁関係の相続は「遺言書」が全て。生前の備えと、死後の専門家相談が不可欠
内縁のパートナーの関係性は、法律上の夫婦と何ら変わらない、あるいはそれ以上に深いものかもしれません。
しかし、相続という法的な場面においては、一枚の婚姻届の有無が、その後の人生を大きく左右してしまう、という現実があります。
故人様が、愛するパートナーの将来を本当に案じていたのであれば、その想いを「遺言書」という法的な形で残してあげることが、最大の愛情表現であり、責任だったのかもしれませんね。
では、本日のポイントをまとめます。
- 内縁の妻(夫)には、法律上の相続権はない。
- 財産を遺す(受け取る)ためには、故人が生前に作成した”遺言書”が最も重要。
- 遺言書がない場合、法定相続人がいなければ「特別縁故者」として財産分与を申し立てられる可能性がある。
- 遺族年金など、個別に受け取れる可能性のある給付金はあるので、必ず確認する。
- 住んでいた家も、遺言書がなければ自分のものにはならず、立ち退きを求められるリスクがある。
- 内縁関係の相続問題に直面したら、必ず弁護士に相談する。
このような状況に置かれた方の心痛は、察するに余りあります。
ご自身の権利と、これからの生活を守るために、決して一人で悩まず、正しい知識を持ち、専門家の力を借りて、適切な対応をとるようにしてください。
株式会社大阪セレモニー



