「故人の取引先への死亡通知、いつ、どのように送るべき?」

山田泰平

山田泰平

テーマ:葬儀後のお話

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

ご家族がお亡くなりになり、その方が生前に個人事業を営んでいたり、会社の代表者や役員として多くの方々と取引関係にあったりした場合、故人の死を個人的な関係者だけでなく、仕事上の取引先にも伝え、必要な挨拶を行う必要がありますね。

これは、単に訃報を知らせるだけでなく、これまでの感謝を伝え、今後の事業の継続や整理、あるいは契約関係の処理について、円滑なコミュニケーションを図るための、非常に重要なステップです。

しかし、いざその場面になると、

「電話だけでいいの? それとも挨拶状を送るべき?」

「直接挨拶に伺う場合は、誰が行って、どんな話をすればいいの?」

「事業を引き継ぐ場合と、廃業する場合で、伝え方は変わる?」

と、そのタイミング、伝えるべき相手と内容、そしてビジネスマナーについて、多くの方が不安を感じるのではないでしょうか?

特に、事業の今後の方針がまだ固まっていない段階や、故人が事業の中心的な役割を担っていた場合などは、取引先への伝え方一つで、その後の関係性や事業の整理に大きな影響が出る可能性もあります。

そこで今回は、この「故人の取引先への死亡通知と挨拶」という、ビジネス上の配慮も求められるデリケートな問題について、分かりやすく解説していきます。

【結論】故人の取引先へは事業への影響を考慮し早期に連絡を。感謝と今後の方針を誠実に、必要なら専門家と連携

故人様が生前に事業を営んでいたり、会社の重要な役割を担っていたりした場合、その死亡の事実は、取引先との契約関係や今後の取引に大きな影響を及ぼす可能性があります。

そのため、できるだけ速やかに、かつ適切な方法で、主要な取引先に死亡の事実と、今後の事業に関する方針(継続、縮小、廃業、清算など)を伝えることが、社会的責任として、また残された事業や関係者の混乱を最小限に抑えるために非常に重要です。

連絡・挨拶の基本的な流れとしては、

  1. まず、故人の事業における主要な取引先(仕入先、販売先、業務委託先、金融機関など)をリストアップする。
  2. 事業の今後の方針(誰が引き継ぐのか、あるいは廃業するのかなど)を、相続人間や関係者間で早急に決定する。
  3. 方針が決まり次第、まずは電話やメールで一報を入れ、その後、必要に応じて挨拶状を送付したり、直接訪問して説明と挨拶を行ったりする。
  4. 伝える内容は、故人の逝去の事実、生前のお礼、そして今後の事業方針と担当者の変更などを、誠実に、かつ明確に伝える。

特に、事業を継続する場合は、取引先に不安を与えないよう、今後の体制や取引条件について丁寧に説明し、理解を求めることが不可欠です。

廃業や会社清算の場合は、未払いの債務や契約の処理について、誠実に対応する必要があります。

これらの対応は、法的な問題や税務上の問題も絡むため、弁護士や税理士、行政書士といった専門家と連携を取りながら進めることが、最も確実かつ円滑な方法と言えるでしょう。

1. なぜ取引先への連絡・挨拶がそれほど重要なのか?


事業継続への影響:故人が事業の中心人物だった場合、その死亡は取引の停滞や契約の見直しに直結します。早期に状況を伝え、今後の方針を示すことで、取引先の不安を軽減し、事業継続の可能性を探ることができます。


契約上の義務履行:既存の契約(納品、支払い、サービス提供など)をどうするのか、明確にする必要があります。


債権債務の確認・整理:未回収の売掛金や、未払いの買掛金、借入金などを確認し、その後の処理について協議する必要があります。


信頼関係の維持:これまで故人が築いてきた取引先との信頼関係を損なわないよう、誠実な対応を心がけることが、事業の円滑な整理や、もし事業を承継する場合の基盤となります。


風評リスクの回避:不確かな情報が流れる前に、正式な形で情報を伝えることで、無用な憶測や風評被害を防ぎます。

2. 連絡する相手とタイミングの判断基準


連絡する相手の範囲:

  • 主要な仕入先、販売先、顧客
  • 業務委託先、外注先
  • 金融機関(銀行、信用金庫など)
  • リース会社
  • 事務所や店舗の大家さん、管理会社
  • 許認可を受けている行政機関
  • 顧問税理士、弁護士、社会保険労務士など


故人の立場や事業の規模によって、連絡すべき範囲は異なります。まずは影響の大きい取引先から優先的に連絡しましょう。



連絡のタイミング:

  • 死亡の事実が確認されたら、できるだけ速やかに。特に、日々の業務に直接影響が出るような取引先へは、葬儀の前であっても一報を入れる必要がある場合もあります。
  • 葬儀の日程が決まっていれば、その情報も併せて伝えます。
  • 今後の事業方針(継続、廃業など)が固まり次第、改めてその内容を伝える。
  • 一般的には、葬儀後、少し落ち着いた段階で、挨拶状の送付や訪問を行うことが多いです。


3. 主な連絡方法とそのマナー


電話:

最も早く情報を伝えられる方法。まずは主要な取引先の担当者に、故人の逝去と、取り急ぎの連絡であることを伝えます。

長々と話す必要はありません。後日改めて挨拶に伺うか、挨拶状を送る旨を伝えます。



メール:

電話と併用したり、多数の取引先に一斉に連絡したりする場合に有効です。

件名に「【〇〇株式会社】代表取締役 〇〇 逝去のお知らせ」など、分かりやすく記載します。

文面は簡潔かつ丁寧に。



挨拶状(死亡通知状):

より正式な形で、死亡の事実、生前のお礼、今後の事業方針などを伝えるための書状です。

葬儀後、1週間~2週間以内を目安に送付するのが一般的です。

会社名義で出す場合は、代表者名(後任者など)で作成します。

弔事の書状としてのマナー(句読点なし、時候の挨拶省略、濃墨など)を守ります。



直接訪問:

特に重要な取引先や、長年お世話になった取引先へは、後任者と共に直接訪問し、挨拶と説明を行うのが最も丁寧な対応です。

必ず事前にアポイントを取り、相手の都合の良い時間に伺いましょう。

4. 伝えるべき基本的な内容(事業継続/廃業の場合別)


共通して伝えること:

・故人の氏名、逝去した年月日

・生前のご厚誼に対する感謝の言葉

・連絡が遅れたことへのお詫び(必要な場合)

・事業を継続する場合(事業承継):

①今後の事業体制や方針の概要

②引き続き変わらぬお付き合いをお願いする言葉

③誰が事業を引き継ぐのか(後任者の氏名、役職など)

④連絡先(後任者の連絡先など)


・事業を廃業・会社を清算する場合:

①事業を廃止(または会社を解散・清算)する旨とその理由(簡潔に)

②廃業・清算のスケジュール(予定)


・既存の契約や債権債務の処理についての基本的な方針(個別に相談させていただきたい旨など)

・これまでのご愛顧に対する感謝の言葉

・今後の連絡先(清算人など)


いずれの場合も、取引先に不安や誤解を与えないよう、誠実かつ明確に情報を伝えることが重要です。

5. 挨拶状の文例(会社名義・事業廃止の場合の例)

謹啓
弊社 代表取締役 〇〇 〇〇は かねてより病気療養中のところ 薬石効なく 去る令和〇年〇月〇日 〇〇歳にて永眠いたしました
ここに生前のご厚誼を深謝し 謹んでご通知申し上げます
なお 葬儀は故人の遺志により 近親者のみにて〇月〇日滞りなく相営みました
さて 故〇〇の逝去に伴い 弊社は来る令和〇年〇月〇日をもちまして廃業いたすこととなりました
長年にわたり賜りました皆様のご芳情に心より感謝申し上げますとともに
事業廃止によりご迷惑をおかけいたしますこと 深くお詫び申し上げる次第でございます
まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
敬白
令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社
清算人(または後任代表取締役) △△ △△
(住所・電話番号)

これはあくまで一例です。状況に合わせて内容は調整してください。

6. 訪問する際の服装や注意点


服装:地味な色のスーツ(ダークスーツなど)を着用するのが基本です。喪服である必要はありません。

訪問人数:後任者と、場合によっては他の役員や上司などが同行します。少人数で伺うのが一般的です。

手土産:通常は不要ですが、特に長年お世話になった取引先であれば、菓子折りなどを持参しても良いでしょう。その際は、熨斗は無地か「御挨拶」とし、派手な包装は避けます。

話す内容:事前に伝えるべきことを整理しておき、簡潔かつ誠実に説明します。相手からの質問にも丁寧に対応しましょう。

時間:長居はせず、30分~1時間程度を目安に失礼するのがマナーです。

【まとめ】故人の事業整理は取引先への誠実な対応が不可欠。専門家と連携し、計画的に

故人様が築き上げてきた事業や、会社における責任。その終わりを告げるのは、ご遺族や関係者にとって、非常に重く、そして寂しい作業かもしれません。

しかし、それは同時に、故人の人生の区切りをつけ、関わってきた全ての人々への感謝を示す大切な機会でもあります。

では、本日のポイントをまとめます。

  • 故人の取引先へは、死亡の事実と今後の事業方針を”できるだけ速やかに、かつ誠実に”伝える。
  • 連絡方法は、電話、メール、挨拶状、訪問など、相手との関係性や状況に応じて使い分ける。
  • 事業を継続する場合は後任体制を明確に、廃業する場合は債権債務の処理方針を示す。
  • 特に重要な取引先へは、後任者と共に直接訪問して挨拶するのが望ましい。

故人が大切にしてきた取引先とのご縁を、最後まで誠意をもって対応することで、故人の名誉を守り、残された事業や関係者の混乱を最小限に抑えることができます。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
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山田泰平(葬儀)

株式会社大阪セレモニー

当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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