もしも葬儀社で働いたら…? 業界用語・隠語をこっそり教えます!
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
ご家族がお亡くなりになった後、葬儀費用はご遺族にとって大きな負担となることがあります。
そんな時、故人様が「国民健康保険」または「後期高齢者医療制度」に加入されていた場合、その葬儀を行った方に対して、自治体から葬儀費用の一部として「葬祭費(そうさいひ)」という給付金が支給される制度があることをご存知でしょうか。
しかし、この葬祭費について、その受給資格や金額、申請方法そして期限について、詳しく知らない方も多いと思います。
葬祭費は、ご遺族からの申請があって初めて支給されるものであり、黙っていては受け取ることができません。
そこで今回は、この「葬祭費」について、
・そもそも葬祭費とは何か?その目的
・誰が対象となるのか?(故人の加入保険)
・誰が受け取れるのか?(申請者)
・支給される金額の目安
・申請手続きの具体的な流れと必要書類
・【重要】申請期限について
・注意すべき点(他の給付金との関係など)
などを、分かりやすく解説していきます。
【結論】葬祭費は国民健康保険・後期高齢者医療制度加入者の葬儀執行者に支給。自治体へ2年以内に申請が必要
故人様が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合、その葬儀を執り行った方(原則として喪主様)に対して、市区町村から葬儀費用の一部として「葬祭費」が支給されます。
支給額は自治体によって異なりますが、一般的に3万円~7万円程度(大阪市の場合は現在5万円)
です。
この葬祭費は、自動的に支給されるものではなく、必ず申請者自身が、故人が最後に住んでいた市区町村の役所(役場)の担当窓口(国民健康保険課など)に申請手続きを行う必要があります。
申請には、故人の保険証や、葬儀を行ったことや喪主が確認できる書類(葬儀費用の領収書など)、申請者の印鑑、振込先口座の情報などが必要です。
申請期限は、葬儀を行った日の翌日から「2年以内」と定められています。
この期限を過ぎると受け取れなくなってしまうため、注意が必要です。
1. 葬祭費とは? なぜ支給されるのか、その目的
葬祭費は、国民健康保険法または高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて、市区町村が条例で定めることにより支給される給付金です。
目的:被保険者が死亡した場合に、その葬祭を行う者(通常は喪主)の経済的な負担を軽減し、社会保障の一環として葬儀の執行を助けることを目的としています。いわば、自治体からの「お見舞金」のような性格を持つものです。
根拠法規:
国民健康保険の場合:国民健康保険法 第58条
後期高齢者医療制度の場合:高齢者の医療の確保に関する法律 第85条
これらの法律に基づき、各市区町村が具体的な支給額や手続きを条例で定めています。
2. 誰が対象となるのか?(故人の加入保険)
葬祭費の支給対象となるのは、亡くなった故人様が、死亡当時に以下のいずれかの医療保険に加入していた場合です。
- 国民健康保険(自営業者、無職の方、年金生活者など)
- 後期高齢者医療制度(原則75歳以上の方、または65歳以上で一定の障害のある方)
故人が会社の健康保険(協会けんぽ、組合健保、共済組合など)に被保険者本人として加入していた場合は、葬祭費ではなく「埋葬料(費)」の支給対象となります(手続き先や支給額が異なります)。
また、故人が会社の健康保険の「被扶養者」だった場合も、通常は被保険者本人(例えば、扶養していた夫など)に対して「家族埋葬料」が支給されるため、葬祭費の対象とはなりません。
ご自身の故人がどの健康保険制度に加入していたかを、まず正確に確認することが重要です。
3. 誰が受け取れるのか?(申請者)
葬祭費を受け取ることができるのは、原則として「その葬儀を執り行った人」です。
一般的には、喪主がこれに該当します。
葬儀費用の領収書の宛名が喪主になっていることが多いですね。
もし、喪主以外の人が実質的に葬儀費用を負担し、葬儀を取り仕切った場合は、その人が申請者となれる場合もありますが、自治体によって判断が異なる可能性があるため、事前に役所の窓口に確認するのが良いでしょう。
4. 支給される金額の目安はどれくらい?
支給される葬祭費の金額は、故人が加入していた市区町村の条例によって定められており、全国一律ではありません。
一般的な支給額:”3万円、5万円、または7万円”としている自治体が多いようです。
大阪市の例:令和6年現在、大阪市では”5万円”が支給されます。
東京都23区の例:多くの区で”7万円”が支給されています。
正確な支給額については、必ず故人が最後に住民票を置いていた市区町村の役所のウェブサイトで確認するか、直接窓口に問い合わせるようにしましょう。
また、この金額は、葬儀の規模や実際にかかった費用に関わらず、原則として一律で支給されます。
5. 申請手続きの具体的な流れと必要書類
1. 【STEP1】申請窓口の確認
故人が最後に住民票を置いていた市区町村の役所(役場)の、国民健康保険担当課または後期高齢者医療担当課が申請窓口となります。
2. 【STEP2】必要書類の準備
自治体によって若干異なりますが、一般的に以下の書類が必要となります。事前に窓口やウェブサイトで確認しましょう。
・葬祭費支給申請書(役所の窓口で入手、またはウェブサイトからダウンロード)
・故人の健康保険証(資格喪失手続きと同時に返却することが多い)
・死亡の事実が確認できる書類(死亡診断書のコピー、火葬許可証のコピー、戸籍謄本など)
・葬儀を執り行ったこと及び申請者(喪主)が確認できる書類:
①葬儀費用の領収書(宛名が申請者名義のもの)
②会葬礼状(喪主名が記載されたもの)など
・申請者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・申請者の印鑑(認印で可の場合が多い。シャチハタ不可)
・申請者名義の預金通帳など、振込先口座の情報がわかるもの
3. 【STEP3】申請書の提出
準備した書類を持参し、役所の窓口で申請手続きを行います。郵送での申請を受け付けている自治体もあります。
4. 【STEP4】審査と支給
提出された書類に基づいて審査が行われ、問題がなければ、通常、申請から1ヶ月~2ヶ月程度で、指定した口座に葬祭費が振り込まれます。
6.【重要】申請期限について:2年を過ぎるともらえない!
葬祭費の請求権には、時効があります。
申請期限は、原則として「葬儀を執り行った日の翌日から2年間」です。
この2年の期限を過ぎてしまうと、たとえ支給対象であっても、葬祭費を受け取ることができなくなってしまいます。
葬儀後は何かと慌ただしく、手続きを忘れがちになるかもしれませんが、期限をしっかりと意識し、早めに申請手続きを行うようにしましょう。
7. 注意すべき点(他の給付金との関係など)
会社等の健康保険との重複不可:前述の通り、故人が会社の健康保険に加入していた場合は「埋葬料(費)」の対象となり、葬祭費は支給されません。
また、二重に受け取ることはできません。
生活保護の葬祭扶助との関係:
もし、故人や喪主が生活保護を受給しており、葬祭扶助(福祉葬)を利用して葬儀を行った場合は、葬儀費用は既に公的に賄われているため、別途、葬祭費が支給されることは通常ありません。
ただし、葬祭扶助の額が葬祭費の基準額より低い場合など、自治体によって扱いが異なる可能性もゼロではないため、念のため福祉事務所に確認してみると良いでしょう。
交通事故など第三者行為による死亡の場合:
交通事故など、第三者の行為によって死亡し、加害者側から葬儀費用に関する賠償金などを受け取っている場合は、葬祭費が支給されない、あるいは調整されることがあります。
申請者が複数いる場合:
原則として、実際に葬儀費用を負担し、葬儀を主宰した人(通常は喪主)が申請します。
もし、複数の人が費用を分担した場合などの扱いは、事前に役所に確認しましょう。
【まとめ】葬祭費は国民健康保険からの支援金。忘れずに2年以内に申請を
故人様が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入されていた場合に支給される「葬祭費」は、葬儀を行った方の経済的な負担を少しでも軽減するための、大切な公的支援制度です。
その制度の存在を知らなかったり、申請を忘れたりして、受け取れるはずのお金を受け取りそびれてしまうのは、非常にもったいないことです。
では、本日のポイントをまとめます。
・葬祭費は、故人が国民健康保険・後期高齢者医療制度の加入者だった場合に、葬儀を行った人(主に喪主)に支給される。
・支給額は自治体により異なり、3万円~7万円程度が一般的(大阪市は5万円)。
・必ず申請が必要。申請期限は葬儀の翌日から2年以内。
・申請窓口は故人の最後の住所地の市区町村役場。
・申請には、葬儀費用の領収書などが主に必要となる。
・会社の健康保険の埋葬料(費)とは重複して受け取れない。
葬儀後は、様々な手続きに追われ、心身ともにお疲れのことと思いますが、この葬祭費の申請も、忘れずに行っていただきたいと思います。
2年という期限は、長いようでいて、意外とあっという間に過ぎてしまうものですよ。
株式会社大阪セレモニー



