「相続人に未成年者が…遺産分割協議、どうすればいい?特別代理人が必要?」

山田泰平

山田泰平

テーマ:相続関係

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

遺産相続の手続きを進める上で、法定相続人全員の参加と合意が必要な「遺産分割協議」。

しかし、その相続人の中に「未成年者」が含まれている場合、通常とは異なる特別な配慮と法的な手続きが必要になることをご存知でしょうか。

例えば、夫婦の一方が亡くなり、残された配偶者と未成年の子供たちが相続人となるケースは非常に多いです。

そんな時、”未成年者の権利の保護”と”法的に有効な遺産分割協議の進め方”について、多くの疑問や不安を感じるのではないでしょうか。

未成年者は、法律上、単独で有効な法律行為(契約など)を行うことができません。

そのため、遺産分割協議のような重要な財産に関する話し合いにおいては、未成年者の利益を守るための特別な仕組みが設けられているのです。


そこで今回は、この「相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割協議」について、

  • なぜ未成年者の相続には特別な配慮が必要なのか?
  • 「親権者」が代理できないケース(利益相反)
  • 「特別代理人(とくべつだいにん)」とは何か?その役割と必要性
  • 特別代理人の選任手続きの流れ
  • 特別代理人になれる人、なれない人
  • 遺産分割協議の進め方と注意点

などを、分かりやすく解説していきます。

【結論】未成年相続人の遺産分割は特別代理人が必須!親権者と利益相反する場合、家庭裁判所へ選任申立てを

未成年者が相続人に含まれる場合、その未成年者は遺産分割協議に直接参加することはできません。

通常は親権者(法定代理人)が未成年者に代わって協議に参加しますが、その親権者自身も同じ相続の共同相続人である場合、親権者と未成年者の間で「利益相反(りえきそうはん)」が生じるため、親権者は未成年者の代理人として遺産分割協議に参加することができません。


このような場合には、未成年者の利益を保護するために、家庭裁判所に申し立てて「特別代理人」を選任してもらう必要があります。

この特別代理人が、未成年者に代わって遺産分割協議に参加し、未成年者の権利が不当に害されないように配慮しながら、協議を進めていくことになります。

特別代理人を選任せずに、利益相反する親権者が未成年者を代理して行った遺産分割協議は、法的に無効となる可能性があるため、必ずこの手続きを踏むことが極めて重要です。

手続きは家庭裁判所で行い、候補者を立てることもできますが、最終的には裁判所が適任者を選任します。

1. なぜ未成年者の相続には「特別代理人」が必要になるのか?「利益相反」とは


未成年者の法的能力:未成年者は、単独で有効な法律行為(契約、財産処分など)を行う能力が制限されています。
そのため、通常は親権者が法定代理人として、未成年者に代わってこれらの行為を行います。


利益相反の問題:しかし、遺産分割協議においては、親権者自身も同じ相続の共同相続人となるケースがほとんどです。例えば、父が亡くなり、母(親権者)と未成年の子が相続人となる場合、母が自分の相続分を多くしようとすれば、子の相続分は少なくなってしまいます。このように、”一方の利益が他方の不利益になる関係”を「利益相反」と言います。


民法の規定:民法第826条では、親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない、と定められています。遺産分割協議は、まさにこの利益相反行為にあたるのです。


特別代理人の役割:特別代理人は、未成年者の利益のみを考えて行動し、未成年者にとって不利益な内容の遺産分割協議に応じないようにする役割を担います。

2. 特別代理人が必要となる具体的なケース


①親権者(例:母親)と未成年の子(たち)が共同相続人となる場合。これが最も典型的なケースです。

②未成年の子が複数いる場合、その未成年の子たちの間でも利益が相反するため、原則として各未成年者ごとにそれぞれ特別代理人を選任する必要があります。(ただし、遺産分割の内容によっては、一人の特別代理人が複数の未成年者を代理できると裁判所が判断する場合もあります)

③親権者が相続放棄をし、その結果、未成年の子が相続人となった場合(この場合、親権者は相続人ではないため利益相反にはなりませんが、未成年者の代理行為として特別代理人が必要となることがあります)。

3. 特別代理人の選任手続きの流れ


申立ての準備:

①申立人:親権者または利害関係人(他の相続人など)。

②申立て先:未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所。

③必要書類(主なもの):

  • 特別代理人選任申立書(裁判所のウェブサイトなどで入手可能)
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、相続財産目録など)
  • 収入印紙(未成年者1人につき800円)、連絡用の郵便切手



④家庭裁判所への申立て:上記書類を揃えて、管轄の家庭裁判所に提出します。

⑤家庭裁判所による審理:裁判所が、申立て内容や候補者が適格かどうかなどを審理します。追加の資料提出を求められたり、事情聴取が行われたりすることもあります。

⑥選任審判:裁判所が特別代理人を選任する旨の審判を下し、審判書謄本が送られてきます。選任までには、通常1ヶ月~2ヶ月程度の時間がかかります。

4. 特別代理人になれる人、なれない人、候補者は誰がいい?


なれる人(候補者):

未成年者の利益を公正に守れる人であれば、特に資格は必要ありません。

一般的には、未成年者の祖父母、おじ・おばといった親族や、弁護士、司法書士などの法律専門家が候補者となることが多いです。

候補者を立てずに申し立てることも可能ですが、その場合は裁判所が適当な弁護士などを選任します。



なれない人:

その遺産分割協議において、未成年者と利益が相反する立場にある人(つまり、他の共同相続人)。

未成年者自身。



候補者選びのポイント:

・未成年者のことを親身に考えてくれる人。

・相続に関する一定の知識がある、または専門家のアドバイスを受けられる人。

・他の相続人と円滑にコミュニケーションが取れる人。

相続財産が多い場合や、相続人間で意見の対立が予想される場合は、最初から弁護士や司法書士を候補者として選任してもらうのが賢明です。

5. 特別代理人が選任された後の遺産分割協議の進め方


特別代理人の参加:選任された特別代理人は、未成年者に代わって遺産分割協議に参加し、意見を述べ、合意を行います。


未成年者の法定相続分の確保:特別代理人は、原則として、未成年者が少なくとも法定相続分に相当する財産を取得できるように配慮します。これより少ない取り分になるような分割案には、通常同意しません。


家庭裁判所への報告義務:特別代理人は、遺産分割協議が成立した後、その結果を家庭裁判所に報告する義務を負う場合があります。


遺産分割協議書の作成:協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、特別代理人が未成年者の代理人として署名・捺印(特別代理人自身の印鑑)します。この際、家庭裁判所から発行された「選任審判書謄本」を添付します。

6. 相続税申告などの期限への影響

特別代理人の選任手続きには時間がかかるため、相続税の申告期限(死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割協議がまとまらない可能性があります。

その場合は、一旦、法定相続分で相続したものとして相続税の申告・納税を行い、後日、遺産分割が確定した時点で修正申告や更正の請求を行うことになります。

未成年者が相続人にいる場合は、相続税申告のことも念頭に置き、早めに税理士にも相談しておくことが重要です。

【まとめ】未成年者の相続は特別代理人が鍵。早期に専門家と連携し、子供の権利を守ろう

相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割協議は、親権者との利益相反の問題から、家庭裁判所による「特別代理人」の選任が不可欠となるケースがほとんどです。
この手続きを怠ると、せっかくまとまった遺産分割協議が無効になってしまう可能性があります。

では、本日のポイントをまとめます。

・親権者も相続人の場合、未成年者の代理はできず「特別代理人」の選任が必要。

・特別代理人は家庭裁判所に申し立てて選任してもらう。

・特別代理人は未成年者の利益を最優先に考え、遺産分割協議に参加する。

・候補者は親族や専門家。相続が複雑な場合は専門家が望ましい。

・手続きには時間がかかるため、相続税申告などの期限も考慮し、早めに着手する。

・必ず弁護士や司法書士などの専門家に相談し、サポートを受けながら進める。

未成年者の将来のためにも、その権利がきちんと守られ、公平な遺産分割が行われるよう、正しい法的な手続きを踏むことが何よりも大切です。

「遺産分割協議がどうしてもまとまらない…調停や審判ってどうな

株式会社大阪セレモニー

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