「父が経営していた会社、亡くなった後どうすれば?借金もあるみたいだけど…」

山田泰平

山田泰平

テーマ:相続関係

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニ代表の山田泰平です。

ご家族がお亡くなりになり、その方が個人事業主であったり、会社の経営者(社長や役員)であったりした場合、残されたご家族や関係者は、故人の冥福を祈る間もなく、その事業や会社の将来について、非常に重く、そして複雑な問題に直面することになります。

「故人が始めたこの事業、もう誰も継げないけど、どうやって終わらせればいいの?」

「会社名義の借金や、取引先への支払いもあるみたいだけど、それは誰が責任を負うの?」

「従業員さんたちには、どう説明すれば…」

「廃業するにも、何か特別な手続きが必要なの?」

このように、故人の事業や会社の閉鎖・整理は、単なる遺品整理とは異なり、”法的な手続き、税務処理、債権債務の整理、従業員への対応、取引先への連絡”など、多岐にわたる専門的な対応が求められ、その負担は計り知れません。

特に事業に借入金があったり、経営状況が芳しくなかったりした場合は、問題がより深刻化する可能性があります。

そこで今回は、この非常に困難で、かつ専門家のサポートが不可欠となる「故人の会社・事業の閉鎖・整理」について、

  • まず確認すべきこと(事業形態、財務状況、契約関係など)
  • 個人事業の場合と法人の場合、それぞれの手続きの概要
  • 債務(借金など)の扱いと、相続放棄の関連
  • 従業員や取引先への対応
  • 許認可やリースの扱い
  • 専門家(弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士など)への早期相談の絶対的な重要性

などを、分かりやすく解説していきます。

【結論】故人の事業・会社整理はまず現状把握と専門家相談が必須。法的手続きと債務整理を計画的に

故人様が営んでいた事業や会社を閉鎖・整理する場合、まず最も重要なのは、その事業の法的な形態(個人事業か法人か)、正確な財務状況(資産と負債)、そして関連する契約関係を、できる限り速やかに把握することです。

その上で、個人事業であれば「廃業届」の提出と清算手続き、法人であれば「解散・清算結了」の登記や税務申告といった法的な手続きを、定められた期限内に、かつ正確に行う必要があります。

これらの手続きは非常に専門的で複雑であり、特に債務(借金)の扱いは、相続人のその後の生活にも大きな影響を及ぼします。

故人の事業に関する債務も、原則として相続財産の一部となるため、もし債務超過の状態であれば、相続人としては「相続放棄」を検討する必要が出てきます。

したがって、このような状況に直面したら、決してご自身たちだけで解決しようとせず、必ず早期の段階で、事業承継や会社清算、相続問題に詳しい弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士といった複数の専門家に相談し、それぞれの専門分野からのアドバイスとサポートを受けながら、計画的かつ慎重に手続きを進めることが、トラブルを最小限に抑え、適切に事業を終結させるための絶対条件と言えるでしょう。

1. なぜ故人の事業・会社の整理がそれほど大変なのか?

故人の事業や会社の閉鎖・整理が、通常の相続手続きよりも格段に複雑で困難なのは、以下のような要因があるからです。

法的手続きの多様性と専門性:廃業届、解散登記、清算結了登記、税務申告(法人税、消費税、所得税など)、社会保険・労働保険の手続きなど、多岐にわたる法的な手続きが必要。


債権債務関係の複雑さ:売掛金、買掛金、借入金、リース契約、保証債務など、多くの債権者・債務者が存在し、その整理と清算に手間と時間がかかる。


従業員への対応:従業員がいる場合、解雇手続き、未払い賃金や退職金の支払い、社会保険の手続きなど、労働法規に基づいた適切な対応が必要。


取引先への影響:事業の停止や会社の解散は、取引先にも影響を及ぼすため、丁寧な説明と誠実な対応が求められる。


許認可の問題:事業に必要な許認可を返納する手続きが必要な場合がある。


時間的制約:各種手続きには期限が設けられていることが多い。


精神的負担:故人の事業を終わらせるという、感情的な側面も伴う。

2. まず行うべきこと:現状把握と情報収集

手続きを始める前に、まず以下の情報をできる限り正確に把握する必要があります。

①事業形態の確認:故人は個人事業主だったのか、それとも株式会社や合同会社といった法人を経営していたのか。


②財務状況の把握:

資産:現金、預貯金、売掛金、不動産、機械設備、在庫商品、有価証券など。

負債:買掛金、借入金(金融機関、個人)、未払いの税金や社会保険料、リース債務、保証債務など。
これらをリストアップし、大まかな資産と負債のバランス(債務超過の可能性)を確認します。決算書、試算表、預金通帳、借入契約書、請求書などが手がかりになります。


③契約関係の確認:従業員との雇用契約、取引先との売買契約、事務所や店舗の賃貸借契約、リース契約、各種サービスの利用契約など。


④許認可の確認:事業を行うために必要な許認可証など。


顧問税理士や弁護士の有無:故人が生前に相談していた専門家がいれば、その方に連絡を取るのが最初のステップとなることもあります。

3.【ケース①】個人事業の場合の主な手続き(廃業)

故人が個人事業主だった場合、事業を終了するには「廃業」の手続きを行います。

①税務署への届出:

・「個人事業の開業・廃業等届出書」:事業を廃止した日から1ヶ月以内に、管轄の税務署に提出。

・「所得税の青色申告の取りやめ届出書」(青色申告だった場合):廃業した年の翌年3月15日まで。

・「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」(従業員がいた場合):廃業から1ヶ月以内。

・「事業廃止届出書」(消費税の課税事業者だった場合):速やかに。


②都道府県税事務所・市区町村役場への届出:事業税に関する廃業届など(自治体により異なる)。


③社会保険・労働保険の手続き(従業員がいた場合):年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署などへ、資格喪失届や保険料の精算など。


④許認可の返納:必要な場合は、許認可を受けた行政機関へ。


⑤債権債務の整理・清算:売掛金の回収、買掛金や借入金の支払い。


⑥従業員の解雇手続きと退職金等の支払い。


⑦事業用資産の処分(売却、廃棄など)。


⑧故人の最後の年の所得税の確定申告(準確定申告):相続人が、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に行う。

4.【ケース②】法人の場合の主な手続き(解散・清算)

故人が会社の代表取締役で、かつ株主でもあった場合など、会社そのものを閉じる(解散・清算する)場合の手続きです。
これは非常に複雑で、専門家のサポートが不可欠です。

①株主総会での解散決議:株主総会を開き、会社の解散を決議します。

②清算人の選任:解散後の会社の財産整理や債務弁済を行う「清算人」を選任します(通常は取締役がなることが多い)。

③法務局への登記:解散の日から2週間以内に「解散及び清算人選任の登記」を行います。

④官報公告と債権者への催告:解散した旨を官報に公告し、知れている債権者には個別に通知して、債権を申し出るよう催告します(2ヶ月以上の申出期間を設ける)。

⑤税務署等への届出:解散届、異動届などを提出。

⑥財産目録・貸借対照表の作成と株主総会承認。

⑦現務の結了・債権取立て・債務弁済:会社の残務処理、売掛金の回収、借金の支払いなどを行います。

⑧残余財産の分配:全ての債務を弁済した後、残った財産があれば株主に分配します。

➈決算報告書の作成と株主総会承認。

➉法務局への清算結了登記:清算が結了した日から2週間以内に登記します。これで法人は完全に消滅します。

⑪税務署等への清算確定申告。

5. 債務(借金など)の扱いと相続放棄


個人事業の場合:

事業上の債務は、故人の”個人的な債務”として、原則として相続人が引き継ぎます。

事業用の資産よりも債務の方が多い場合は、相続放棄を検討する必要があります。



法人の場合:

会社の債務は、原則として会社の財産から支払われ、代表取締役個人や株主が直接負担するものではありません(法人格の独立)。

しかし、故人が会社の借入金に対して”個人として連帯保証”をしていた場合は、その保証債務は相続の対象となります。

この場合も、相続放棄を検討する必要が出てきます。

会社を清算した結果、財産が残らず、債務を全て弁済できない場合は、会社は破産手続きに進むこともあります。

6. 従業員や取引先への対応


従業員:

事業を廃止する場合、従業員は解雇することになります。労働基準法に基づき、適切な解雇予告(または解雇予告手当の支払い)、未払い賃金や退職金の支払い、社会保険・雇用保険の資格喪失手続きなどが必要です。

誠意をもって、できるだけ早く状況を説明し、丁寧に対応することが重要です。社会保険労務士に相談しましょう。



取引先:

事業の廃止や会社の解散は、取引先にも大きな影響を与えます。

売掛金の回収や買掛金の支払いについて、速やかに連絡を取り、誠実に対応する必要があります。


今後の事業の引き継ぎがない場合は、その旨を丁寧に説明し、これまでの取引への感謝を伝えましょう。

7. 専門家への早期相談が絶対的に重要

ここまで見てきたように、故人の事業や会社の閉鎖・整理は、法務、税務、労務など、多岐にわたる専門知識と膨大な手続きが必要です。
相続人がこれら全てを適切に行うのは、ほぼ不可能です。


相談すべき専門家:

弁護士:全体の法的な整理、債務整理、相続放棄、会社解散・清算手続きの代理、紛争解決。

税理士:廃業・解散に伴う税務申告(所得税、法人税、消費税など)、相続税申告。

司法書士:会社の解散・清算結了登記、不動産の名義変更など。

社会保険労務士:従業員の解雇手続き、社会保険・労働保険の手続き。



相談のタイミング:故人が亡くなったら、できるだけ早く、まず弁護士や顧問税理士に相談し、全体の進め方についてアドバイスを受けるべきです。

専門家チームでの対応:多くの場合、一人の専門家だけでは対応しきれず、弁護士、税理士、司法書士などが連携してチームで対応することになります。

【まとめ】故人の事業・会社整理は時間との勝負。専門家チームと連携し、一つひとつ着実に

故人様が大切に育ててきた事業や会社を、その死によって終わらせなければならないというのは、ご遺族にとって非常にお辛いことだと思います。

しかし、感傷に浸る間もなく、法的な手続きや債務の整理といった現実的な問題が山積しています。

このような困難な状況においては、何よりもまず、残されたご家族が精神的に追い詰められないよう、早めに専門家の力を借り、”自分たちだけで抱え込まない”という姿勢が大切だと感じます。

そして、故人が築き上げてきたものへの敬意を忘れず、関係者への感謝の気持ちを持って、誠実に一つひとつの手続きを終えていくことが、結果として故人のためにもなるのではないでしょうか。

では、本日のポイントをまとめます。

・まず故人の事業形態(個人か法人か)と財務状況(資産と負債)を正確に把握する。

・個人事業の場合は「廃業届」と清算手続き、法人の場合は「解散・清算結了登記」と税務申告など、法的な手続きが多数必要。

・事業上の債務や、故人が会社の債務を個人保証していた場合は、相続放棄の検討が必要。

・従業員や取引先へは、誠実かつ丁寧な対応を心がける。

・手続きは非常に複雑で専門的なため、”必ず早期に弁護士、税理士、司法書士などの専門家に相談”し、連携して進める。

故人の事業や会社を整理するということは、法的な責任を果たすと同時に、故人の人生の一つの区切りをつける、という意味合いも持ちます。

大変な作業ではありますが、専門家のサポートを受けながら、一つひとつ着実に進めていくことで、必ず終わりは見えてきます。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
専門家

山田泰平(葬儀)

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当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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