「亡くなった家族の株、どこで調べてどう手続きするの?」
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
故人様が遺された「遺言書」。
その内容は、故人の最終的な意思として、基本的には尊重されるべきものです。
しかし、もしその遺言書に、「私の全財産を、お世話になった〇〇団体に寄付する」あるいは「長年連れ添った配偶者ではなく、特定の人物に全ての財産を遺贈する」といった内容が書かれていたとしたら、残されたご家族、特に配偶者やお子様は、どう思うでしょうか?
故人の尊い社会貢献の意思や、特定の誰かへの感謝の気持ちは理解できるものの、それが残された家族の生活基盤を揺るがすような内容であった場合、ご遺族は深い悲しみと共に、途方に暮れてしまうことでしょう。
これは単なる感情論ではなく、”現実的な生活の問題”です。
そこで今回は、この非常に困難な状況、「遺言書によって、遺族の生活が脅かされるほど財産が外部に流出してしまう場合の対処法」について、
- なぜこのような遺言が有効なのか?(遺言の自由の原則)
- 遺族に残された法的な権利「遺留分」とその限界
- 遺留分以外に、遺族が取りうる手段はあるのか?(寄付先との交渉など)
- このような事態を避けるために、遺言者自身ができること
- 残された家族が、まず何をすべきか
- 専門家(弁護士など)への早期相談の重要性
などを、分かりやすく解説していきます。
【結論】全財産寄付の遺言でも遺族には遺留分が。生活困窮時は寄付先との交渉や公的支援も視野に、弁護士相談を
故人様が「全財産を特定の団体に寄付する」あるいは「特定の第三者に遺贈する」といった内容の有効な遺言書を遺した場合、その意思は原則として尊重されます。
しかし、法律は、残された一定範囲の法定相続人(配偶者、子、直系尊属。兄弟姉妹は除く)に対して、最低限の遺産の取り分である「遺留分」を保障しています。
したがって、遺言によって遺留分が侵害された場合、その相続人は、財産を受け取った寄付先や受遺者に対して「遺留分侵害額請求」を行い、侵害された分に相当する金銭の支払いを受けることができます。
ただし、この遺留分だけでは、残された家族の生活を十分に支えきれないケースも考えられます。
そのような場合、
- まずは遺留分侵害額請求を確実に行うこと。
- その上で、寄付先や受遺者に対して、”遺族の窮状や故人の生前の状況などを丁寧に説明し、任意での財産の分与や、寄付額の一部減額などを求める交渉”を試みること。
- 生活保護などの”公的な支援制度”を利用できないか検討すること。
といった対応が考えられます。
特に、寄付先との交渉は、法的な権利とは別に相手方の理解と温情に訴えかける形になります。
これらの対応は法的な知識や交渉力が必要となるため、必ず早期の段階で、相続問題や遺留分に詳しい弁護士に相談することが、最も重要かつ賢明な対処法と言えるでしょう。
また、遺言者自身も、生前にこのような事態を避けるための配慮をすることが望まれます。
それでは、全財産寄付の遺言と遺族の生活、遺留分、その他の対処法などについて、その根拠となる部分を詳しく掘り下げていきましょう。
1. なぜ「全財産を寄付」という遺言が有効なのか?「遺言の自由」の原則
日本の民法では、「遺言の自由」が保障されています。
これは、自分の財産を、自分の死後、誰に、どのように処分するかを、本人が自由に決定できるという原則です。
したがって、たとえその内容が法定相続人の期待に反するものであっても、遺言書が法的に有効な方式で作成されていれば、その内容は原則として有効となります。
「全財産を〇〇に寄付する」という内容も、この原則に基づけば有効なのです。
2. 残された家族の法的権利:「遺留分」とその限界
遺留分とは(再確認):遺言の自由を一部制限し、法定相続人のうち一定の範囲の人(配偶者、子、直系尊属)に、法律上最低限保障された遺産の取り分のことです。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合(再確認):直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の1/3、それ以外の場合は相続財産の1/2が、相続人全体の遺留分(総体的遺留分)となり、これに各相続人の法定相続分を乗じたものが、個別の遺留分となります。
遺留分侵害額請求(再確認):遺言によって遺留分が侵害された場合、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。請求期限は、相続開始と遺留分侵害を知った時から1年、または相続開始から10年です。
遺留分の限界:
あくまで”最低限”の保障:遺留分は、法定相続分よりも少ない割合です。遺留分だけでは、残された家族の生活を十分に支えきれない場合があります。
金銭での支払い:原則として金銭での支払いとなるため、例えば「実家に住み続けたい」という希望は、遺留分だけでは直接的には叶えられません(相手が金銭を支払えず、結果的に不動産で代物弁済する可能性はありますが)。
請求しなければもらえない:自動的に支払われるものではなく、権利者が自ら請求する必要があります。
3. 遺留分以外に遺族が取りうる手段:寄付先との交渉など
遺留分を請求してもなお、生活が困窮するような場合、他にどのような手段が考えられるでしょうか。
寄付先・受遺者との任意交渉:
これは法的な権利に基づくものではなく、あくまで相手方の任意の協力や温情に期待するものです。
交渉のポイント:
①遺族の窮状(経済的な困窮、病気、幼い子供がいるなど)を具体的に、かつ誠実に伝える。
②故人の生前の状況や、家族との関係性、寄付に至った経緯などを説明し、遺言の内容が必ずしも故人の全ての想いを反映したものではない可能性を示唆する(例えば、判断能力が低下していた時期に書かれた遺言ではないか、など。ただし、これは遺言無効の主張とは異なります)。
③寄付先が公益団体などの場合、遺族の生活を困窮させてまで寄付を受け取ることが、その団体の社会的使命や評判にどう影響するか、といった視点も提示できるかもしれません。
④感情的に相手を非難するのではなく、あくまで「お願い」「ご相談」という形で、理解と協力を求める姿勢が重要です。
交渉の結果:寄付額の一部を遺族に分与してもらえる、あるいは寄付そのものを見直してもらえる、といった可能性もゼロではありません。しかし、相手に応じる義務はないため、過度な期待は禁物です。
遺言の有効性を争う(遺言無効確認訴訟など):
もし、遺言書が作成された時点で故人に十分な判断能力がなかった(認知症など)、あるいは遺言書が偽造された、脅迫されて書かされた、といった事情が疑われる場合は、遺言の有効性そのものを争う「遺言無効確認訴訟」などを提起することも考えられます。
ただし、これを証明するのは非常に困難であり、専門的な証拠(医師の診断書、筆跡鑑定など)が必要となります。弁護士との十分な相談が不可欠です。
生活保護などの公的支援制度の利用:
遺留分を受け取っても、あるいは受け取れなくても、生活が困窮する場合は、国の生活保護制度や、自治体独自の支援制度を利用できないか、福祉事務所などに相談してみましょう。
4. このような事態を避けるために、遺言者自身ができること
遺言によって残された家族が困窮する、という事態を避けるためには、遺言者自身が生前に以下の点を考慮することが望ましいです。
遺留分への配慮:全財産を寄付する場合でも、主要な相続人の遺留分相当額は確保できるような配慮をする(例えば、生命保険で遺留分相当額を特定の相続人に遺すなど)。
付言事項での丁寧な説明:なぜ全財産を寄付したいのか、その想いや経緯、そして残される家族への感謝や配慮の言葉を、遺言書の付言事項に詳しく記すことで、家族の理解を得やすくなり、感情的な対立を和らげる効果が期待できます。
家族との事前の話し合い:元気なうちに、自分の死後の財産の扱いについて、家族とよく話し合い、理解を得ておくことが最も重要です。
専門家への相談:遺言書作成の段階から、弁護士や信託銀行などに相談し、遺留分や家族の生活にも配慮した、円満な内容の遺言を作成する。
5. 残された家族が、まず何をすべきか
「全財産を寄付する」という内容の遺言書が見つかった場合、残された家族はパニックになるかもしれませんが、まずは冷静に以下の対応を取りましょう。
遺言書の有効性の確認:法的に有効な方式で作成されているか(自筆証書遺言の場合は検認手続きも)。
遺留分の算定:ご自身の遺留分がどれくらいあるのか、おおよそでも計算してみる。
専門家(弁護士)への相談:できるだけ早く、相続問題・遺留分に詳しい弁護士に相談し、法的なアドバイスと今後の対応策について助言を求める。これが最も重要です。
時効の確認:遺留分侵害額請求の時効(知った時から1年)を意識し、必要な場合は内容証明郵便で請求の意思表示を行う。
6. 専門家(弁護士)への早期相談の重要性(再確認)
遺留分の問題、特に遺言によって生活が脅かされるようなケースは、高度な法律知識と交渉力、そして冷静な判断が不可欠です。
- 遺留分の正確な計算、証拠収集
- 寄付先や他の相続人との交渉代理
- 遺留分侵害額請求の調停・訴訟手続きの代理
- 遺言無効確認訴訟などの検討
- 精神的なサポート
これらの点で、弁護士のサポートは極めて重要です。費用はかかりますが、ご自身の権利と生活を守るためには、専門家の力を借りることをためらわないでください。
【まとめ】全財産寄付の遺言でも遺族の権利はある。諦めず専門家と解決策を
故人様の「全財産を寄付する」という遺志は尊いものですが、それによって残されたご家族の生活が成り立たなくなるような事態は、故人様の本意ではないかもしれません。
- まずは遺言書の有効性を確認し、ご自身の「遺留分」を把握する。
- 遺留分が侵害されていれば、「遺留分侵害額請求」を行う(時効に注意!)。
- 遺留分だけでは生活が困難な場合、寄付先との任意交渉や公的支援も検討する。
- 最も重要なのは、早期に弁護士などの専門家に相談し、適切な対応をとること。
- 遺言者自身も、生前に家族への配慮を遺言に盛り込むことが望ましい。
このような困難な状況に直面された場合、感情的にならず、まずはご自身の法的な権利を確認し、専門家の助けを借りながら、粘り強く解決策を探っていくことが大切です。
「遺産分割の話し合いってどう進めるの?」
株式会社大阪セレモニー



