「故人の財産調査、どこまで自分でできる?専門家はいつ頼るべき?」

山田泰平

山田泰平

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

ご家族がお亡くなりになり、相続の手続きを進めようにも、まず「故人がどのような財産を、どれだけ持っていたのか、全く分からない…」という状況に直面し、途方に暮れてしまう方がいらっしゃいます。

特に、故人が一人暮らしだったり、生前あまりお金の話をしなかったりした場合、その全容を把握するのは非常に困難ですよね。


相続財産の調査は、遺産分割協議や相続放棄の判断、そして相続税申告の基礎となる、極めて重要な最初のステップです。

この調査が不十分だと、後になって新たな財産や負債が見つかり、手続きをやり直さなければならなくなったり、相続人間でトラブルになったりする可能性があります。

そこで今回は、この「故人の相続財産の調査」について、

  • なぜ財産調査が重要なのか?
  • 自分で調査できる主な財産とその方法(預貯金、不動産、有価証券、借金など)
  • 自分で調査する際の限界と注意点
  • どのような場合に専門家(弁護士、司法書士、税理士など)に依頼すべきか
  • 専門家に依頼するメリットと費用の目安


などを、分かりやすく解説していきます。

【結論】故人の財産調査は相続の基本。自分でできる範囲と限界を知り、不明・複雑な場合は早期に専門家へ相談を

故人様の相続財産調査は、その後の全ての相続手続きの土台となる、非常に重要な作業です。

ご自身で調査できる範囲としては、

  • 遺品の中から手がかり(通帳、権利証、郵便物、メモなど)を探す。
  • 金融機関に預貯金の残高証明や取引履歴を請求する。
  • 不動産については名寄帳(なよせちょう)を取得する。
  • 信用情報機関に借金の有無を照会する。

といったことが挙げられます。

しかし、故人がどのような財産を持っていたか全く見当がつかない場合や、財産の種類が多岐にわたる場合、非上場株式や複雑な権利関係の不動産などが含まれる場合、あるいは相続人間で財産隠しなどが疑われる場合には、ご自身での調査には限界があります。

そのような場合は、無理に自分で全てを把握しようとせず、早期の段階で、相続調査に詳しい弁護士、司法書士、行政書士、あるいは税理士といった専門家に相談し、調査を依頼することが、最も確実かつ効率的な方法です。

専門家は、法的な権限や専門知識を駆使して、個人では難しい範囲の調査を行い、正確な財産目録を作成してくれます。

費用はかかりますが、後のトラブルや申告漏れのリスクを考えれば、専門家の力を借りるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。


それでは、相続財産調査の具体的な方法、自分でできる範囲と限界、専門家の役割などについて、詳しく掘り下げていきましょう。

1. なぜ相続財産調査がそれほど重要なのか?

相続財産調査が不十分だと、以下のような深刻な問題が生じる可能性があります。

正確な遺産分割ができない:何を分けるのかが明確でなければ、公平な話し合いは不可能です。

相続放棄・限定承認の判断を誤る:借金などのマイナスの財産を見落とし、相続放棄の機会を失ってしまう、あるいは逆に、プラスの財産があるにも関わらず安易に放棄してしまう。

相続税の申告漏れ・過少申告:財産を見落とせば、当然、税務署から指摘を受け、追徴課税や延滞税、加算税といったペナルティが課されるリスクがあります。

後の相続トラブル:後から新たな財産や借金が見つかった場合、遺産分割協議をやり直したり、相続人間で新たな争いが生じたりする可能性があります。

これらの問題を避けるためにも、徹底的な財産調査が不可欠です。

2. 自分で調査できる主な財産とその方法

まずは、ご自身でできる範囲の調査から始めてみましょう。

遺品整理と手がかりの捜索:

故人の自宅や身の回りの品を丁寧に確認し、財産に関する手がかりを探します。

  • 預貯金通帳、キャッシュカード、印鑑
  • 不動産の権利証(登記済証)、固定資産税納税通知書
  • 証券会社からの取引報告書、株券(古いもの)
  • 生命保険証券、年金手帳
  • 借金の契約書、督促状、領収書
  • 金融機関や役所からの郵便物
  • 故人の手帳、日記、メモ、パソコンやスマートフォンのデータなど



預貯金の調査:

見つかった通帳やキャッシュカードを元に、各金融機関(銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行など)の窓口で、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を提示し、「残高証明書」の発行と「取引履歴(過去数年分)」の開示を請求します。

故人が利用していた可能性のある金融機関が不明な場合は、近隣の金融機関に片っ端から問い合わせる、という地道な作業が必要になることもあります。



不動産の調査:

固定資産税納税通知書や権利証を見れば、所有不動産が分かります。

市区町村役場の固定資産税課で「名寄帳(なよせちょう)」または「固定資産課税台帳」の写しを取得すると、その市区町村内で故人が所有していた不動産の一覧を確認できます。

法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、権利関係を確認しましょう。



有価証券(株式など)の調査:

証券会社からの郵便物を手がかりに、その証券会社に問い合わせます。

「証券保管振替機構(ほふり)」に、相続人として登録済加入者情報(どの証券会社に口座があるか)の開示請求ができます。



生命保険の調査:

保険証券を探し、保険会社に連絡します。見つからない場合は、生命保険協会などの「生命保険契約照会制度」を利用できます。



借金・負債の調査:

契約書や督促状、通帳の引き落とし履歴などを確認します。

「信用情報機関(CIC、JICC、KSC)」に、相続人として情報開示請求を行うことで、金融機関や消費者金融からの借入状況を確認できます。

3. 自分で調査する際の限界と注意点


全ての財産を見つけ出すのは困難:故人が巧妙に隠していた財産や、全く手がかりのない借金など、ご自身での調査だけでは全てを把握しきれない場合があります。

非上場株式や複雑な権利関係の不動産:これらの評価や権利関係の調査は、専門的な知識がないと非常に難しいです。

遠方の財産:故人が遠方に不動産や銀行口座を持っていた場合、現地での調査が必要になることもあり、手間と費用がかかります。

相続人間での不信感:特定の相続人が財産調査を主導すると、他の相続人から「何か隠しているのではないか」と疑念を持たれる可能性があります。

時間的制約:相続放棄の期限(3ヶ月)や相続税申告の期限(10ヶ月)がある中で、全ての調査を自分たちだけで行うのは時間的に厳しい場合があります。

4. 専門家(弁護士・司法書士・税理士など)に依頼すべきケース

以下のような場合は、無理せず専門家に調査を依頼することを検討しましょう。

  • 故人がどのような財産を持っていたか、全く見当がつかない。
  • 財産の種類が多岐にわたる、あるいは複雑な権利関係がある(不動産の共有名義、借地権など)。
  • 非上場株式や、評価の難しい美術品・骨董品などがある。
  • 故人が事業を経営していた。
  • 多額の借金がある可能性が高い、または保証債務の有無が不明。
  • 相続人間で財産隠しなどが疑われ、不信感がある。
  • 相続放棄や相続税申告の期限が迫っている。
  • 相続人が多数いる、あるいは海外在住の相続人がいるなど、手続きが煩雑。


5. 専門家に依頼するメリットと費用の目安


メリット:

専門的な知識と経験に基づき、広範囲かつ徹底的な調査を行ってくれる。

個人ではアクセスできない情報(弁護士照会など)も活用できる場合がある。

正確な財産目録を作成してくれる。

相続放棄の判断や、遺産分割協議、相続税申告などの次のステップへのアドバイスも受けられる。

時間的・精神的な負担が大幅に軽減される。



依頼できる専門家と役割分担(主なもの):

弁護士:財産調査全般、相続放棄、遺産分割協議・調停・審判、紛争解決。

司法書士:戸籍収集、相続関係説明図作成、不動産・預貯金等の調査(限定的)、相続登記。

行政書士:戸籍収集、相続関係説明図作成、遺産分割協議書作成(紛争性のないもの)。

税理士:相続税申告のための財産評価・調査、相続税申告。



費用の目安:依頼する専門家や調査範囲、財産の複雑さによって大きく異なります。

数万円~数十万円程度が一般的ですが、事案によってはそれ以上になることもあります。

必ず事前に見積もりを取り、費用体系を確認しましょう。

6. 財産調査と並行して行うべきこと

財産調査を進めながら、同時に以下のことも行っておくと、その後の手続きがスムーズになります。

  • 法定相続人の確定(戸籍収集)
  • 遺言書の有無の確認


【まとめ】故人の財産調査は正確かつ迅速に。迷ったら専門家の力を借りる勇気を

故人様の相続財産調査は、その後の全ての相続手続きの基礎となる、非常に重要な作業です。

ご自身でできる範囲の調査から始め、故人が遺した手がかりを丁寧に追っていくことが大切です。

以下の順番で早期で行いましょう。

  1. まずは遺品の中から、通帳、権利証、郵便物などの手がかりを探す。
  2. 金融機関への照会、名寄帳の取得、信用情報機関への開示請求などを行う。
  3. 自分で調査できる範囲と限界を理解する。
  4. 財産が不明・複雑な場合や、期限が迫っている場合は、無理せず早期に専門家に相談する。
  5. 専門家は、弁護士、司法書士、税理士など、相談内容に応じて選ぶ。


正確な財産調査は、相続放棄の適切な判断や、円満な遺産分割協議、そして適正な相続税申告に不可欠です。

「よく分からないから」「面倒だから」と後回しにせず、計画的に、そして必要であれば専門家の力を借りて、確実に行うようにしましょう。

株式会社大阪セレモニー

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当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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