「故人が『献体したい』と…家族はどうすれば?お葬式は?」

山田泰平

山田泰平

テーマ:葬儀の知識

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

近年、医療の発展や社会貢献への意識の高まりから、ご自身の死後、医学・歯学の教育や研究のために、その身体を無償で提供する「献体(けんたい)」を希望される方が増えています。

故人様の尊いご意思であり、医学の進歩に貢献するという大変崇高な選択です。

しかし、もしご家族が「献体したい」という意思を生前に示されていた場合、残されたご遺族としては、

「献体って、具体的にどういう手続きが必要なんだろう?」

「故人の意思を尊重したいけど、お葬式は普通にできるの?」

「火葬や納骨は、いつ、どのように行うことになるの?」

「家族として、何か特別な準備や心構えが必要?」

と、その具体的な流れや葬儀・供養への影響、そして家族としての役割について、多くの疑問や不安を感じるのではないでしょうか?

献体は故人の最後の社会貢献であると同時に、ご遺族にとっても通常のお見送りとは異なる点があることを理解し、準備しておく必要があります。

そこで今回は、この「献体」について、

  • そもそも献体とは何か?その意義と目的
  • 献体を希望する場合の生前の手続き(登録)
  • ご逝去後、ご遺族が行うべきこと(大学への連絡、書類手続きなど)
  • お葬式(通夜・告別式)はできるのか?
  • 火葬とご遺骨の返還について(時期と流れ)
  • 献体を行う上での注意点と、家族の理解
  • 献体後の慰霊祭など

などを、分かりやすく解説していきます。

【結論】献体は医学発展への尊い貢献。生前の登録と家族の理解が不可欠、葬儀は通常通り可能だが火葬・返骨は後日

献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に、ご自身の遺体を無償で提供することです。

これは、将来の医療を担う人材育成と医学の発展に大きく貢献する、非常に尊い行為です。

献体を希望する場合、原則として生前にご本人の意思で、お住まいの地域にある大学の献体篤志団体(白菊会など)や大学の解剖学教室に登録手続きを行う必要があります。

その際には、ご家族の同意も求められるのが一般的です。


ご逝去後、ご遺族は速やかに登録先の大学に連絡し、指示に従ってご遺体の引き渡し手続きを行います。

お葬式(通夜・告別式)は、ご遺体の引き渡し前(または一時的なお預かりの後)に、通常通り執り行うことができます。

ただし、火葬とご遺骨の返還は、解剖学実習が終了した後となるため、通常1年~3年程度かかります。

そしてご遺骨が返還された後に、納骨式や本葬を行うことになるのです。


献体を行うためには、故人の明確な意思だけでなく、ご家族の深い理解と協力が不可欠です。

また、病状や死因あるいはご遺体の状態によっては、登録していても献体できない場合があることも理解しておく必要があります。


それでは、献体の意義、手続き、葬儀への影響などについて、その根拠となる部分を詳しく掘り下げていきましょう。

1. 献体とは? その意義と目的

献体の定義:医学・歯学の大学における学生の人体解剖学実習や、医師・歯科医師の解剖学研究のために、ご自身の遺体を無条件・無報酬で提供することです。


意義と目的:

医療人育成への貢献:医学生や歯学生が人体の構造を正確に理解し、将来優れた医療人となるためには、実際の人体解剖学実習が不可欠です。献体は、この実習を可能にし、医療の質の向上に大きく貢献します。

医学研究への貢献:新しい治療法や手術法の開発、病気のメカニズムの解明など、医学の進歩のための研究にも役立てられます。

社会貢献:自らの身体を捧げることで、社会全体への大きな貢献となります。


法律:献体に関する法律として「死体解剖保存法」があり、献体はこの法律に基づいて、ご本人の意思とご遺族の承諾のもと、適切に行われます。

2. 献体を希望する場合の「生前の手続き(登録)」

献体は、原則として生前にご本人が登録手続きを行う必要があります。

登録窓口:

お住まいの都道府県にある大学の医学部・歯学部の解剖学教室

各大学が組織する献体篤志団体(「白菊会(しらぎくかい)」などの名称が多い)
これらの窓口に問い合わせ、申込書類を取り寄せます。


登録の条件(一般的):

ご本人の明確な意思があること。

家族(配偶者、子、親、兄弟姉妹など)の同意が得られていること。献体はご遺族の協力なしには成り立ちません。

年齢制限は特にないことが多いですが、未成年者の場合は親権者の同意が必要です。

居住地域が、その大学の献体受け入れエリア内であること。


手続きの流れ:

  1. 申込書類の取り寄せと記入。
  2. 家族の同意書の準備。
  3. 申込書類の提出。
  4. (団体によっては)面談や説明会への参加。


登録完了後、「献体登録証(会員証)」などが発行されますが、これは大切に保管し、家族にも場所を伝えておきましょう。

登録の撤回:登録後でも、ご本人の意思でいつでも登録を撤回することは可能です。

3. ご逝去後、ご遺族が行うべきこと(大学への連絡・引き渡し)

献体登録者が亡くなられた場合、ご遺族は以下の対応を行います。

死亡診断(または死体検案):医師による死亡確認と、死亡診断書(死体検案書)の作成。

【最優先】登録先の大学・献体団体への連絡:

できるだけ速やかに、故人が献体登録していた大学または献体団体に電話で連絡します。(連絡先は献体登録証などに記載されています)


伝える内容:故人の氏名、登録番号(分かれば)、亡くなった日時と場所、連絡者の氏名と連絡先など。

大学からの指示を待つ:大学側が、ご遺体の状態や受け入れ状況などを確認し、献体が可能かどうかを判断します。そして、ご遺体の引き取り日時や方法、必要な書類などについて指示があります。

葬儀社への連絡:同時に、葬儀社にも連絡し、故人が献体登録している旨を伝え、葬儀の打ち合わせを進めます。葬儀社は、大学との連携もサポートしてくれます。

必要書類の準備:大学から指示された書類(死亡診断書、献体登録証、火葬(埋葬)許可申請に必要な書類など)を準備します。

ご遺体の引き渡し:大学の指示に従い、ご遺体を大学へ引き渡します。多くの場合、大学関係者または大学から委託された葬儀社が、ご自宅や病院へお迎えに来ます。

4. お葬式(通夜・告別式)はできるのか?

「献体すると、お葬式はできないのでは?」と心配される方がいますが、そんなことはありません。

献体する場合でも、お葬式(通夜・告別式)は通常通り執り行うことができます。

タイミング:

ご遺体を大学へ引き渡す前に、ご自宅や斎場で通夜・告別式を行う。

あるいは、一旦ご遺体を大学へお預けし、防腐処理などを施した後、一時的にご遺族の元へお返しいただき、その際にお別れの儀式(告別式のような形)を行う。
どちらの方法が可能かは、大学や献体団体の方針、ご遺体の状況によって異なりますので、必ず事前に相談・確認しましょう。


葬儀内容:祭壇を飾り、僧侶に読経していただき、弔問客をお迎えするなど、一般的な葬儀と同様に行えます。

故人のお顔を見てお別れ:引き渡し前であれば、通常通り故人様のお顔を見てお別れをすることができます。

5. 火葬とご遺骨の返還について:時間はかかる

献体されたご遺体は、解剖学の実習や研究に用いられた後、大学の責任において丁重に火葬されます。

火葬の時期:解剖学実習のスケジュールなどにより異なりますが、通常、ご遺骨がご遺族の元へ返還されるまでには、1年~3年程度の期間がかかります。

ご遺骨の返還:火葬後、大学からご遺族へ連絡があり、ご遺骨が返還されます。返還方法は、大学に直接受け取りに行く、郵送してもらう、など大学によって異なります。

火葬許可証と埋葬許可証:ご遺体の引き渡し前に、ご遺族が市区町村役場で「死体火葬許可申請」を行い、「火葬許可証」を取得し、それを大学に提出する必要があります。大学が火葬を行った後、その火葬許可証に火葬執行済の印が押され、ご遺骨と共に「埋葬許可証」としてご遺族に返還されます。この埋葬許可証は、納骨の際に必要となります。

納骨:ご遺骨が返還された後、お墓や納骨堂への納骨式を行います。これを「本葬」と位置づけることもあります。

6. 献体を行う上での注意点と、家族の理解


献体できない場合がある:

登録していても、以下のような理由で献体できない場合があります。

  • ご遺体の状態(事故による著しい損傷、一部の感染症など)
  • 死因(解剖によって死因を特定する必要がある場合など)
  • 大学の受け入れ状況(実習スケジュール、保管施設の空き状況など)


もし献体できなかった場合は、通常通り、ご遺族が火葬・埋葬を行うことになります。

その場合のことも、念のため考えておく必要があります。


家族の同意と理解が不可欠:献体は、故人の意思だけでなく、残された家族の深い理解と協力があって初めて成り立ちます。生前に、家族と十分に話し合い、献体への想いを伝え、理解を得ておくことが最も重要です.


費用について:

献体は「無報酬」が原則です。謝礼金などは支払われません。

ご遺体の搬送費用(大学またはご遺族が負担するケースなど、大学により異なる)や、火葬費用(通常は大学が負担)、ご遺骨の返還費用については、事前に大学や献体団体に確認しておきましょう。

葬儀費用は、通常通りご遺族の負担となります。

7. 献体後の慰霊祭など

多くの大学では、献体された方々のご冥福を祈り、その尊いご意思に感謝するために、年に一度「献体者合同慰霊祭」などを執り行っています。

ご遺族も参列できる場合が多いので、案内があれば参加し、改めて故人を偲び、感謝の気持ちを捧げるのも良いでしょう。

【まとめ】献体は尊い意思。家族で理解し、大学と連携して進める

献体は、医学の発展と将来の医療を担う人材育成への、かけがえのない貢献です。

故人様がそのような尊い意思をお持ちだった場合、ご遺族はその想いを尊重し、できる限りの協力をしたいものですね。

  • 献体は生前の本人の意思と家族の同意に基づく登録が必要。
  • ご逝去後は速やかに登録先の大学・献体団体へ連絡する。
  • お葬式(通夜・告別式)は、ご遺体引き渡し前などに通常通り行える。
  • 火葬とご遺骨の返還は、解剖学実習終了後(1年~3年後程度)となる。
  • 献体できない場合もあることを理解しておく。
  • 家族の深い理解と協力が何よりも大切。


献体という選択は、通常のお見送りとは異なる点が多く、ご遺族にとっては戸惑いや不安も大きいかもしれません。

しかし、大学や献体団体、そして私たちのような葬儀社が、手続きや精神的な面でサポートをさせていただきます。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
専門家

山田泰平(葬儀)

株式会社大阪セレモニー

当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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