農地相続は“チーム戦”が鉄則!司法書士・行政書士・税理士の正しい使い分け
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
遺産相続の手続きは時に長期間に及び、相続人間で意見が対立し、なかなか解決に至らないことがありますね。
しかし、その遺産分割協議がまとまらない、あるいは調停や審判の途中で、相続人の一人が亡くなってしまうという予期せぬ事態が発生したら、一体どうなるのでしょうか?
相続手続きの途中で新たな相続が発生すると、権利関係はさらに複雑化し、残された相続人の方々は大きな混乱と不安に陥ってしまうことでしょう。
このような状況は「数次相続(すうじそうぞく)」と呼ばれ、法的な対応が求められます。
そこで今回は、この非常に困難で、かつ専門的な知識が必要となる「遺産相続中に相続人が亡くなった場合(数次相続)の対応」について、
- そもそも数次相続とは何か?
- 亡くなった相続人の相続分はどうなるのか?
- 新たな相続人が遺産分割協議に参加する必要性
- 手続きがさらに複雑化する場合の注意点
- 遺言書の重要性
- 専門家(弁護士など)への早期相談が不可欠である理由
などを、分かりやすく解説していきます。
【結論】相続中に相続人が死亡すると「数次相続」が発生。亡くなった人の相続人が協議に参加、専門家への相談が必須
遺産分割協議中や、相続手続きが完了する前に相続人の一人が亡くなってしまった場合、その亡くなった相続人が本来受け取るはずだった相続分(権利義務)は、その亡くなった相続人の「相続人」が引き継ぐことになります。
これを「数次相続(すうじそうぞく)」と言います。
つまり、最初の相続(一次相続)の遺産分割協議は、一次相続の当初の相続人に加えて、亡くなった相続人の相続人(二次相続人)も全員参加して行わなければならなくなります。
これにより相続人の数が増え、権利関係はさらに複雑化し、合意形成がより一層難しくなる可能性が高まります。
このような数次相続が発生した場合は、
まず、亡くなった相続人の相続人(二次相続人)を戸籍等で正確に確定させること。
二次相続人も含めた全員で、改めて一次相続の遺産分割協議を行うこと。
必要であれば、二次相続に関する相続放棄や、遺産分割協議も別途行うこと。
といった対応が必要になります。
手続きは非常に複雑かつ専門的になるため、必ず早期の段階で相続問題に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスとサポートを受けながら進めることが、円滑に解決するための絶対条件と言えるでしょう。
それでは、数次相続が発生した場合の具体的な影響や対応について、その根拠となる部分を詳しく掘り下げていきましょう。
1. 数次相続とは? なぜ発生するのか
数次相続の定義:最初の相続(一次相続)による遺産分割協議が完了する前に、その相続人の一人が死亡し、次の相続(二次相続)が開始される状態のことです。さらに二次相続の相続人が亡くなれば三次相続…と続く可能性もあります。
発生の背景:
①遺産分割協議の長期化:相続人間で意見がまとまらず、協議が長引いている間に、相続人の誰かが亡くなってしまう。
②相続手続きの遅延:様々な理由で、相続手続きそのものが遅れている間に、新たな相続が発生する。
③高齢の相続人が多い場合:相続人が高齢であると、手続き中に亡くなるリスクが高まります。
2. 亡くなった相続人の「相続分」はどうなるのか?
一次相続において、亡くなった相続人が持っていた「相続人としての地位」や「相続分(プラスの財産もマイナスの財産も含む権利義務)」は、消滅するわけではありません。
それは、その亡くなった相続人の相続財産の一部となり、その人の相続人(二次相続人)へと引き継がれます。
例えば、
一次相続:父が死亡。相続人は母、長男、長女。
この遺産分割協議中に、長男が死亡した場合(二次相続開始)。
長男に配偶者と子がいれば、その配偶者と子が、長男が父から相続するはずだった権利義務を相続することになります。
3. 遺産分割協議への影響:参加者が増え、複雑化
数次相続が発生すると、一次相続の遺産分割協議は、以下のように影響を受けます。
参加者の増加:一次相続の当初の相続人に加えて、亡くなった相続人の相続人(二次相続人)も、全員が協議に参加しなければなりません。
合意形成の困難化:参加者が増えることで、それぞれの意見や利害がさらに複雑に絡み合い、合意形成がより難しくなる可能性があります。
手続きの煩雑化:必要な戸籍謄本類の収集や、遺産分割協議書の作成、署名・捺印なども、関係者が増える分だけ煩雑になります。
4. 具体的な手続きの流れと注意点
①二次相続人の確定:まず、亡くなった相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類を取得し、誰が二次相続人となるのかを正確に確定させます。
②二次相続に関する意思確認:二次相続人には、一次相続の権利義務を引き継ぐかどうかの選択権があります。つまり、二次相続について「相続放棄」や「限定承認」をすることも可能です。この意思確認も重要です。
③一次相続の遺産分割協議の再開または開始:二次相続人も含めた全ての関係者で、一次相続の遺産分割協議を行います。
④遺産分割協議書の作成:合意に至れば、一次相続に関する遺産分割協議書を作成します。この際、亡くなった相続人の相続人として、二次相続人全員が署名・捺印(実印)し、印鑑証明書を添付する必要があります。
⑤二次相続の遺産分割協議:一次相続で亡くなった相続人が受け取る財産が確定したら、次にその財産について、二次相続人間で遺産分割協議を行う必要があります(二次相続人が複数いる場合)。
⑥各種名義変更手続き:遺産分割協議の内容に基づいて、不動産や預貯金などの名義変更手続きを行います。数次相続の場合は、登記などの手続きもより複雑になります。
注意点:
相続税の申告期限:一次相続の相続税申告期限(死亡を知った日の翌日から10ヶ月)は、数次相続が発生したからといって自動的に延長されるわけではありません。期限内に申告・納税が難しい場合は、税務署に相談し、必要な手続き(延納、物納、更正の請求など)を検討する必要があります。二次相続についても、別途相続税の申告が必要になる場合があります。
遺産分割協議の長期化リスク:関係者が増えることで、協議がさらに長期化するリスクがあります。
5. 遺言書の重要性(再確認):数次相続を避けるためにも
数次相続による手続きの複雑化やトラブルを避けるためには、やはり被相続人(最初に亡くなった方)が、生前に法的に有効な「遺言書」を作成しておくことが、非常に有効な対策となります。
遺言書で財産の分け方が明確に指定されていれば、原則として遺産分割協議は不要となり、数次相続が発生した場合でも、遺言の内容に基づいて手続きを進めやすくなります。
また、相続人自身も、万が一のことを考えて、自身の相続に関する遺言書を作成しておくことが、将来の数次相続のリスクを軽減することに繋がります。
6. 専門家(弁護士・司法書士・税理士)への早期相談が不可欠
数次相続は、権利関係が複雑に絡み合い、法的な知識や税務上の知識も必要となる、非常に難易度の高い相続手続きです。
ご自身たちだけで解決しようとすると、手続きの漏れや間違いが生じたり、相続人間の対立が深まったりする可能性があります。
したがって、数次相続が発生したと認識した時点で、あるいはその可能性があると感じた時点で、できるだけ早く、相続問題に詳しい弁護士、司法書士、税理士といった専門家に相談することを強くお勧めします。
弁護士:遺産分割協議の代理交渉、調停・審判の手続き代理、法的なアドバイス全般。
司法書士:戸籍収集、相続関係説明図の作成、不動産の相続登記手続き。
税理士:相続税申告(一次相続・二次相続)、財産評価、節税対策。
専門家は、複雑な状況を整理し、法的に適切な手続きを導き、円滑な解決に向けてサポートしてくれます。
【まとめ】数次相続は手続き複雑化のサイン。専門家と連携し、冷静な対応を
遺産相続の途中で相続人が亡くなる「数次相続」は、残された相続人にとって、精神的にも手続き的にも大きな負担増となります。
- 数次相続が発生すると、亡くなった相続人の相続人が、一次相続の協議に参加する。
- 相続人の数が増え、権利関係が複雑化し、合意形成が難しくなる。
- まずは亡くなった相続人の相続人を正確に確定させる。
- 一次相続と二次相続、それぞれの遺産分割協議が必要になる場合がある。
- 相続税の申告期限にも注意が必要。
- 最も重要なのは、早期に弁護士などの専門家に相談し、サポートを受けること。
このような複雑な状況に直面したら、決して一人で悩まず、パニックにならず、まずは専門家の助けを借りて、一つひとつの問題を整理し、冷静に対応していくことが大切です。
故人様の想いを引き継ぎ、残された家族が円満に相続を終えるために、適切な知識と専門家のサポートは不可欠と言えるでしょう。
株式会社大阪セレモニー



