資産管理会社の相続対策は“両刃の剣”。税務署に否認されないための鉄則
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
遺産相続の手続きを進める上で、法定相続人全員の参加と合意が不可欠であることは、これまでもお伝えしてきました。
しかし、その相続人の中に、海外に住んでいてなかなか連絡が取れなかったり、日本での手続きに参加するのが難しかったりする方が含まれている場合、遺産分割協議は一気に複雑化し、ご遺族の頭を悩ませることになります。
このようなケースでは、通常の相続手続きに加えて、国際的な要素やコミュニケーションの難しさ、そして法的な手続きの煩雑さが絡み合い、解決への道のりが見えにくくなりがちです。
放置しておけば、不動産が塩漬けになったり、預貯金が引き出せないままになったりするリスクも高まります。
そこで今回は、この非常に困難なケーススタディ「相続人が海外在住で連絡が取りにくい場合の、不動産と預貯金の遺産分割」について、
- まず何から始めるべきか?(連絡の試みと情報収集)
- 海外在住相続人が遺産分割協議に参加するための方法
- 必要となる書類と、その海外での取得・認証について
- 不動産の具体的な分割方法の検討(代償分割、換価分割など)
- どうしても連絡が取れない、協力が得られない場合の最終手段
- 専門家(弁護士、司法書士など)の活用の重要性
などを、具体的なステップと注意点を交えながら、分かりやすく解説していきます。
【結論】海外在住者でも相続人の権利は発生する!連絡が取れない場合に備えて、事前の備えをしておこう!
まず結論として、相続人の中に海外在住で連絡が取りにくい方がいる場合でも、その方を無視して遺産分割協議を進めることは絶対にできません。
必ずその方の参加(または法的な代理人の参加)が必要です。
この困難な状況を解決するための基本的なステップは以下の通りです。
徹底的な連絡の試みと情報収集: あらゆる手段(メール、国際電話、SNS、知人経由など)で連絡を試み、現在の状況や遺産分割に関する意向を確認します。
協力が得られる場合の進め方:
①遺産分割協議への参加方法の検討: 来日してもらう、オンラインで参加する、あるいは日本の代理人(弁護士など)に手続きを委任してもらう、といった方法があります。
②必要書類の準備と海外での手続き: 海外在住相続人が用意すべき書類(サイン証明書、在留証明書など)があり、現地の日本大使館・領事館での認証が必要になる場合があります。
③具体的な分割方法の協議: 不動産については、代償分割(他の相続人が現金を支払う)や換価分割(売却して現金を分ける)などが現実的な選択肢となります。預貯金は比較的分割しやすいですが、海外送金の手続きなども考慮が必要です。
連絡が取れない、または協力が得られない場合の最終手段:
①不在者財産管理人の選任申立て: 行方不明に近い状態であれば、家庭裁判所に申し立て、不在者の代理人を選任してもらい協議を進めます。
②遺産分割調停・審判: 話し合いでの解決が困難な場合は、家庭裁判所の手続きを利用します。
いずれにしても、このようなケースでは、法的手続きや国際的な書類のやり取りが非常に複雑になるため、早期の段階から、国際相続に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談し、サポートを受けながら進めることが、最も確実かつスムーズな解決への道と言えます。
時間も費用もかかることを覚悟し、粘り強く対応していく必要があります。
それでは、海外在住の相続人がいる場合の遺産分割について、具体的な進め方や注意点を、さらに詳しく掘り下げていきましょう。
1. なぜ海外在住相続人の参加が必須なのか?
日本の民法では、遺産分割協議は法定相続人全員の参加と合意がなければ有効に成立しません。
海外に住んでいるからといって、その相続人の権利がなくなるわけではないのです。
その方を無視して進めた遺産分割協議は、後でその方から無効を主張されるリスクがあり、全ての手続きをやり直さなければならなくなる可能性もあります。
2. まずは連絡を試みる!あらゆる手段を尽くす
過去の連絡先の確認: 手紙、メールアドレス、電話番号、SNSアカウントなど、過去にやり取りした連絡先を徹底的に探します。
他の親族や共通の知人への聞き込み: 誰かが現在の連絡先を知っている可能性があります。
手紙の送付: 判明している最後の住所宛に、国際郵便で手紙を送ってみます。(返送されてくる可能性もありますが、試す価値はあります)
インターネットでの検索: 氏名や関連情報で検索すると、何らかの手がかりが見つかることも稀にあります。
現地の日本大使館・領事館への相談: 個人間の連絡の仲介は難しいですが、一般的な情報提供や、現地での手続きに関するアドバイスはもらえるかもしれません。
3. 協力が得られる場合の遺産分割協議への参加方法
連絡がつき、遺産分割に協力的な姿勢を示してくれた場合、以下の方法で協議に参加してもらいます。
一時帰国して参加: 最も理想的ですが、費用や時間の負担が大きいため、現実的には難しい場合も多いでしょう。
オンラインでの参加: ビデオ会議システム(Zoom、Skypeなど)を利用して、リアルタイムで協議に参加してもらう方法です。時差に配慮が必要です。
書面でのやり取り: 遺産分割協議案を作成し、国際郵便で送付し、内容を確認・合意してもらい、署名・捺印(またはサイン)して返送してもらう方法です。時間がかかりますが、確実な方法の一つです。
【推奨】日本の代理人への委任: 海外在住相続人が、日本の弁護士や司法書士、あるいは信頼できる親族などを代理人として選任し、その代理人が遺産分割協議に参加し、必要な手続きを行う方法です。これが、最もスムーズかつ確実に進められることが多いです。
委任状の作成: 海外在住相続人が、代理人に対して委任状を作成します。この委任状には、通常、現地の日本大使館・領事館で「サイン証明(署名証明)」を受ける必要があります。これは、そのサインが本人のものであることを公的に証明するものです。
4. 海外在住相続人が用意すべき主な書類
遺産分割協議書への署名・捺印や、その後の不動産登記、預貯金の解約手続きなどにおいて、海外在住相続人は、日本国内の相続人とは異なる書類が必要になる場合があります。
サイン証明書(署名証明書): 日本の印鑑証明書の代わりとなるものです。遺産分割協議書や委任状などに本人が署名し、その署名が本人のものであることを、現地の日本大使館・領事館の領事が証明します。
在留証明書: 現住所を証明する書類です。これも現地の日本大使館・領事館で発行されます。日本の住民票の代わりとなります。
出生証明書や婚姻証明書など: 相続関係を証明するために、現地の公的機関が発行した書類が必要になることがあります。その場合、日本語の翻訳文と、翻訳者の署名・捺印が必要になることもあります。
これらの書類の取得には時間がかかるため、早めに何が必要かを確認し、準備を進める必要があります。
5. 不動産と預貯金の具体的な分割方法の検討
不動産(実家など):
①代償分割: 日本国内の相続人の一人が不動産を相続し、海外在住の相続人には、その法定相続分に相当する代償金を支払う方法。海外送金の手続きや手数料、税金などを考慮する必要があります。
②換価分割: 不動産を売却して現金化し、その現金を分配する方法。海外在住相続人の売却への同意(委任状など)や、売却代金の海外送金手続きが必要です。
③共有名義(非推奨): 将来的にさらに複雑化するリスクが高いため、できる限り避けるべきです。
預貯金:
比較的分割しやすいですが、海外在住相続人の口座へ送金する際には、金融機関での海外送金手続き、送金手数料、為替レートの変動などを考慮する必要があります。
金融機関によっては、海外在住者への払い戻し手続きが煩雑な場合もあります。
6. 連絡が取れない、協力が得られない場合の最終手段
どうしても連絡が取れない、あるいは遺産分割に非協力的で話し合いが進まない場合は、家庭裁判所の手続きを利用します。
不在者財産管理人の選任申立て:
連絡が取れないが、生存している可能性が高い場合に、その人の代理人を選任してもらい、協議を進めます。
海外在住で単に連絡が取りにくい、というだけで直ちに「不在者」と認められるわけではなく、財産管理が放置されているなどの事情が必要です。
遺産分割調停・審判:
相続人全員(または代理人)が参加し、家庭裁判所で話し合い(調停)、それでもまとまらなければ裁判官が判断(審判)を下します。
海外在住相続人も、代理人を立てるなどして、この手続きに参加する必要があります。
7. 専門家(弁護士・司法書士など)の活用の重要性
海外在住の相続人がいるケースは、通常の相続手続きに比べて、
- 国際的な書類のやり取りや認証手続きが煩雑
- コミュニケーションに時間と手間がかかる(時差、言語の壁など)
- 適用される法律(例えば、不動産の所在地国の法律と、被相続人や相続人の国籍国の法律など)が複雑に絡む可能性がある(国際私法)
といった困難さが伴います。
そのため、相続案件、特に国際相続の経験が豊富な弁護士や司法書士に早期の段階から相談し、手続きの代理やアドバイスを求めることが、最も賢明な選択と言えます。
専門家は、必要な書類の特定、海外での手続きのサポート、他の相続人との交渉、そして家庭裁判所の手続きまで、トータルでサポートしてくれます。
時間はかかるかもしれませんが、粘り強く、そして専門家の力を借りながら進めていくことで、必ず適切な解決に至るはずです。
株式会社大阪セレモニー



