「まだ死んでないのに…」親の終活を切り出すタイミングと伝え方
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
最近、「終活(しゅうかつ)」という言葉をよく耳にするようになりましたね。
人生の終わりに向けて、事前に様々な準備をしておくこと。
その終活を進める上で、非常に役立つツールとして注目されているのが「エンディングノート」です。
書店などで見かける機会も増え、
「エンディングノートって、なんだか気になるな…」
「やっぱり、書いておいた方が良いものなのかな?」
「遺言書とは違うの?」
と、関心はありつつも、実際に書き始めるには少しハードルを感じている、という方も多いのではないでしょうか。
「もしもの時、自分の意思を家族に伝え、残された家族の負担を少しでも軽くしたい」という想いは、多くの方が持っていらっしゃるはず。
エンディングノートは、その想いを形にするための、とても有効な手段となり得ます。
そこで今回は、この「エンディングノート」について、
- そもそもエンディングノートとは何か?(遺言書との違い)
- なぜ書くことが推奨されるのか?
- 具体的にどんなことを書けば良いのか?
- 書く際のポイントや注意点
- ノートの選び方
【結論】書いておくと、残されたご遺族様が精神的・身体的に楽になる。
エンディングノートを書くことは、法的に義務があるわけではありませんし、また遺言書のように法的な効力を持つものでもありません。
しかし、ご自身の意思や希望、そして様々な情報を書き記しておくことで、もしもの時に残されたご家族の精神的・手続き的な負担を大幅に軽減し、ご自身の想いを伝えることができる、非常に有用なツールです。
書く内容は多岐にわたりますが、ご自身の基本情報から始まり、医療や介護の希望、葬儀やお墓に関する希望、財産の情報、大切な人へのメッセージなど、決まった形式はありません。
完璧を目指す必要はなく、ご自身が伝えたいこと、記録しておきたいことから、書ける範囲で無理なく自由な気持ちで書き進めていくことが大切です。
そして、書いた後も定期的に見直し、情報を更新していくこと、保管場所を家族に伝えておくことが重要になります。
それでは、エンディングノートの意義、内容、書き方などについて、その根拠となる部分を詳しく掘り下げていきましょう。
1. エンディングノートとは?「遺言書」との決定的な違い
エンディングノート
目的: 自分の人生の記録、自分に関する様々な情報(医療、介護、葬儀、財産、連絡先など)、そして家族や大切な人への想いを書き記し、伝えるためのノート。
形式: 自由。市販のノート、自作のノート、デジタルアプリなど様々。
法的効力: なし。 あくまで本人の希望や情報を伝えるためのものであり、財産分与などを法的に強制する力はない。
内容: 非常に広範囲。事実情報から希望、想いまで自由に記載できる。
遺言書
目的: 自分の死後、財産の分け方などについて、法的な効力を持たせて意思表示するための書類。
形式: 法律で厳格に定められている(自筆証書、公正証書など)。方式を守らないと無効になる。
法的効力: あり。 法律で定められた事項(遺産分割、子の認知など)について、法的な拘束力を持つ。
内容: 主に財産に関する事項など、法的な効力を持たせたい内容に限定されることが多い。
つまり、エンディングノートは「想いや情報を伝えるための自由なノート」、遺言書は「法的な効力を持たせて意思を実現するための書類」という、明確な違いがあります。
両者は対立するものではなく、「エンディングノートで想いを伝え、遺言書で法的な裏付けをする」というように、併用することでより効果を発揮します。
2. なぜ書くことが推奨される? エンディングノートの大きな
エンディングノートを書くことには、主に以下のようなメリットがあります。
【メリット①】自分の意思・希望を明確に伝えられる:
元気な時にはなかなか話しにくい、医療や介護、延命治療に関する希望、葬儀やお墓の希望などを具体的に書き残しておくことで、いざという時に家族が判断に迷う負担を減らせます。「本人はどうしたかったんだろう…」という後悔をさせずに済みます。
【メリット②】残された家族の負担を大幅に軽減できる:
亡くなった後の手続きは、非常に多岐にわたり、煩雑です。預貯金口座の情報、加入している保険、年金、各種契約、連絡してほしい人のリストなどがまとめてあれば、家族が情報を探す手間や時間を大幅に省くことができます。葬儀費用の支払いにも役立ちます。
【メリット③】自分自身の情報を整理できる:
書く過程で、自分の資産状況、加入しているサービス、人間関係などを改めて整理・把握することができます。これは、今後のライフプランを考える上でも役立ちます。
【メリット④】自分の人生を振り返り、未来を考えるきっかけになる:
これまでの人生を振り返り、思い出や感謝の気持ちを書き出すことで、自己肯定感が高まったり、残りの人生をどう生きたいか、前向きに考えるきっかけになったりします。
【メリット⑤】大切な人への想いを伝えられる:
普段は照れくさくて言えない、家族や友人への感謝の気持ちやメッセージを、自分の言葉で残すことができます。これは、残された人にとって、何物にも代えがたい宝物になるでしょう。
3. 具体的にどんなことを書く? 主な項目例
エンディングノートに書くべき内容に決まりはありませんが、一般的に以下のような項目が挙げられます。
全てを埋める必要はありません。書けるところから書きましょう。
自分の基本情報: 氏名、生年月日、本籍地、住所、血液型、マイナンバーなど。
医療について: かかりつけ医、持病、アレルギー、服用中の薬、健康保険証の情報、延命治療の希望、臓器提供・献体の意思など。
介護について: 介護が必要になった場合の希望(場所、内容、費用負担など)、介護保険証の情報など。
葬儀について: 希望する葬儀の形式・規模、宗教・宗派、遺影写真の希望、呼んでほしい人、連絡してほしくない人、葬儀費用の準備についてなど。
お墓・納骨について: お墓の所在地、納骨先の希望(お墓、納骨堂、散骨、手元供養など)、埋葬許可証の保管場所など。
財産について:
①預貯金(金融機関名、支店名、口座番号など ※暗証番号は書かない方が安全)
②不動産(所在地、登記情報など)
③有価証券(証券会社名、銘柄など)
④保険(生命保険、損害保険などの会社名、証券番号、受取人など)
⑤ローン・借金などマイナスの財産:隠れた負債があると、相続後に大きなトラブルに発展します。
連絡先リスト: 家族、親戚、友人、知人、勤務先、お世話になった人などの氏名、連絡先、関係性。
大切なもの・ペットについて: 宝物やコレクションの扱い、ペットの世話をお願いしたい人、飼育情報など。
デジタル遺品について: パソコンやスマートフォンのパスワード(※管理に注意が必要)、利用しているウェブサービスやSNSのアカウント情報、データの扱いに関する希望など。
大切な人へのメッセージ: 家族、友人など、それぞれの人へ宛てた感謝の言葉やメッセージ。
財産の分け方については、法的効力を持たせるなら遺言書へ記しましょう。
4. 書く際のポイントと注意点
正直な気持ちで書く: 見栄を張ったり、嘘を書いたりせず、自分の正直な気持ちや希望を書きましょう。
完璧を目指さない: 最初から全てを完璧に書こうとせず、書ける項目から少しずつ、気軽に書き始めましょう。空欄があっても構いません。
定期的に見直す: 気持ちや状況は変化します。年に一度、誕生日などに内容を見直し、必要であれば加筆・修正しましょう。日付を記入しておくと分かりやすいです。
保管場所を家族に伝えておく: せっかく書いても、いざという時に家族が見つけられなければ意味がありません。ノートの存在と保管場所を、信頼できる家族(1人か2人)に必ず伝えておきましょう。鍵のかかる場所に保管するのも良いでしょう。
法的効力はないことを理解する: 財産分与など、法的な効力を持たせたい内容は、別途、遺言書を作成する必要があります。
個人情報の管理に注意: 口座番号やパスワードなどを詳細に記載する場合は、ノートの保管場所に十分注意し、悪用されないように管理しましょう。パスワードなどは別紙に書いて、ノートとは別の場所に保管するなどの工夫も考えられます。
5. どんなノートを選べばいい?
市販のエンディングノート: 書店や文具店、インターネットなどで様々な種類のものが販売されています。項目が整理されており、書きやすいのがメリットです。自分に合ったデザインや構成のものを選びましょう。
普通のノートや大学ノート: 費用をかけずに、完全に自由に書きたい場合は、普通のノートでも構いません。自分で項目を考えながら書き進められます。
パソコンやアプリ: デジタルで作成・管理できるエンディングノートのサービスやアプリもあります。修正が容易なのがメリットですが、データの消失リスクや、家族がアクセスできるかどうかの問題もあります。
どの形式を選ぶかは、ご自身の好みや使いやすさで決めると良いでしょう。
エンディングノートは、遺言書のような法的な効力はありませんが、ご自身の人生を振り返り、未来への希望や情報を家族に伝え、残された家族の負担を大きく軽減するための貢献性の高いツールです。
それは、決して「死への準備」というネガティブなものではなく、「より良く今を生きるため」「大切な人への最後のラブレター」とも言える、前向きで温かい行為なのです。
「まだ早い」と思わずに、ぜひ一度、エンディングノートを手に取ってみてください。
株式会社大阪セレモニー




