家族葬の訃報を受けたら参列すべき?服装・香典マナーと判断基準を解説
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
お葬式には、まとまった費用が必要になります。
そして、その費用の支払い時期は、”葬儀後すぐ”というケースが一般的です。
そんな時、ご遺族の手元に十分な現金がなくても、故人様の銀行口座には葬儀費用を賄えるだけの預貯金が残っている…という状況は少なくありません。
そこで多くの方が考えるのが、「故人の口座から、葬儀費用を引き出して支払うことはできないだろうか?」という疑問ではないでしょうか。
故人のお金で葬儀費用を支払うこと自体は、道義的には自然な考え方かもしれません。
しかし、人が亡くなると、その方の銀行口座は「相続財産」となり、勝手に引き出すことは法的に問題となる可能性があります。
かといって、口座が凍結されてしまっては、当面の支払いにも困ってしまいますよね。
今回は、多くの方が悩む「故人の預貯金から葬儀費用を支払う方法」について、
- 死亡後の口座凍結はなぜ起こるのか?
- 凍結前に引き出すことのリスクとは?
- 凍結後に葬儀費用を引き出すための正式な手続き(仮払い制度など)
- 注意すべき点
【結論】葬儀費用でも勝手に引き出すのはNG!仮払い制度を活用しよう!
まず結論として、故人様の死亡後、金融機関がその死亡の事実を知ると、原則として故人名義の預貯金口座は「凍結」されます。
これは、相続財産を保全し、特定の相続人による勝手な引き出しや、後の相続トラブルを防ぐため。
したがって、死亡の事実を隠してATMで引き出したり、銀行窓口で手続きしたりすることは、後々大きな問題(相続トラブル、単純承認とみなされるリスクなど)に繋がる可能性があり、絶対に避けるべきです。
では、葬儀費用はどうすれば良いのか?
主な対応策は以下の通りです。
相続人が費用を立て替えて支払い、後日、相続財産から精算する: 最もトラブルが少ない方法ですが、一時的な負担が大きくなります。
金融機関の「仮払い制度(払戻し制度)」を利用する: 2019年の民法改正により、遺産分割協議前でも、相続人が単独で、一定額までの預貯金を払い戻せる制度が創設されました。これを利用すれば、葬儀費用などの当面の支払いに充てることができます。
生命保険金などを活用する: 死亡保険金が比較的早く支払われる場合は、それを充てることも可能です。
いずれにしても、故人の口座から「勝手に」引き出すのではなく、正規の手続きを踏むことが、後々のトラブルを防ぐために不可欠です。
特に「仮払い制度」は、葬儀費用等の支払いのために設けられた側面もあるため、積極的に活用を検討すべきでしょう。
それでは、口座凍結の仕組み、仮払い制度の詳細、そして注意点について、その根拠となる部分を詳しく掘り下げていきましょう。
1. なぜ口座は凍結されるのか?
金融機関が口座を凍結する主な理由は以下の通りです。
相続財産の保全: 口座内の預貯金は相続人全員の共有財産となります。特定の相続人が他の相続人の同意なく勝手に引き出すことを防ぎ、財産を安全に保全します。
相続トラブルの防止: 不透明な引き出しは、後の遺産分割協議での争いの原因となります。凍結することで、公平な遺産分割を促します。
金融機関の免責: 誰が正当な相続人か確定する前に、安易に払い戻しに応じてしまうと、後で他の相続人から責任を問われるリスクがあるため、金融機関自身の防御策でもあります。
金融機関は、通常、遺族からの死亡連絡や、新聞の訃報記事、役所からの通知(死亡届受理など)によって死亡の事実を知り、口座を凍結します。
2. 口座凍結前に引き出すことの大きなリスク
「凍結される前に、キャッシュカードで引き出してしまえばいいのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、これには以下のような大きなリスクが伴います。
相続トラブルの原因: 他の相続人に黙って引き出すと、使い込みを疑われ、遺産分割協議で深刻な対立を生む可能性があります。
「単純承認」とみなされる可能性:
相続財産の一部を使ってしまう(引き出して費消するなど)行為は、法律上「単純承認」したとみなされる可能性があります。
もし故人に多額の借金があった場合、単純承認とみなされると相続放棄ができなくなるリスクがあります。
葬儀費用の支払いへの充当が必ずしも単純承認にあたるわけではありませんが、非常にグレーゾーンであり、争いになる可能性も否定できません。
横領罪等に問われる可能性(極端な場合): 他の相続人の権利を侵害するような悪質な引き出しは、法的な問題に発展する可能性もゼロではありません。
これらのリスクを考えると、凍結前の安易な引き出しは絶対に避けるべきです。
3.【重要】凍結後でも引き出せる!「仮払い制度とは?
2019年7月1日に施行された改正民法により、遺産分割前でも相続人が一定額の預貯金の払い戻しを受けられる制度が創設されました。
これにより、葬儀費用や当面の生活費などの支払いに充てることが可能になりました。
制度の概要: 相続人は、他の共同相続人の同意がなくても、単独で、以下のいずれか低い方の金額まで、故人の預貯金の払い戻しを金融機関に請求できます。
① 口座ごとの計算: 死亡時の預貯金残高 × (1/3) × (その相続人の法定相続分)
② 金融機関ごとの上限: 1つの金融機関につき150万円
計算例:
故人のA銀行の預金が900万円、相続人が配偶者と子2人(法定相続分:配偶者1/2、子それぞれ1/4)の場合。
配偶者が請求する場合:
① 900万円 × (1/3) × (1/2) = 150万円
② 上限150万円
⇒ 配偶者はA銀行から最大150万円まで仮払いを受けられる。
子が請求する場合:
① 900万円 × (1/3) × (1/4) = 75万円
② 上限150万円
⇒ 子はA銀行から最大75万円まで仮払いを受けられる。
手続きに必要な書類(主なもの): 金融機関によって異なりますが、一般的には以下が必要です。
- 故人(被相続人)の除籍謄本、戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 払い戻しを希望する相続人の印鑑証明書
- (場合によって)金融機関所定の払戻依頼書
注意点:
あくまで「仮払い」: この制度で払い戻された金額は、遺産分割時に自分が相続する財産の中から差し引かれます(前払いを受けた扱い)。
全ての金融機関で対応: 法律で定められた制度なので、原則として全ての金融機関で対応しています。(ただし、手続きの詳細は金融機関ごとに異なる場合があります)
時間がかかる場合も: 必要書類の収集や、金融機関での手続きに時間がかかる場合もあります。葬儀費用の支払い期限に間に合うか、事前に金融機関に確認しましょう。
4. 仮払い制度以外で、凍結後に引き出す方法
仮払い制度の上限額では足りない場合や、正式に相続手続きとして預貯金を解約・払い戻しを受ける場合は、以下のいずれかの書類が必要になります。
これらは通常、遺産分割協議後でないと準備できません。
- 遺言書:公正証書遺言 または 検認済みの自筆証書遺言など
- 遺産分割協議書:相続人全員の実印捺印と印鑑証明書が必要)
- 家庭裁判所の調停調書または審判書
これらの書類と、戸籍謄本類などを金融機関に提出することで、口座の解約・払い戻し手続きが可能になります。
5. 葬儀費用を支払う際の注意点
領収書を必ず保管する: 誰が、いつ、いくら葬儀費用を支払ったのかを明確にするために、葬儀社からの領収書は必ず保管しておきましょう。これは、後で相続財産から精算する際や、相続税申告の際に必要になります。
立て替えた場合も記録を残す: どの相続人が立て替えたのか、他の相続人にも分かるように記録を残しておくことが、後のトラブル防止に繋がります。
相続放棄を検討している場合: 故人に借金が多く、相続放棄を考えている場合は、故人の預貯金から葬儀費用を支払うことについて、特に慎重な判断が必要です。支払う費用の範囲(社会通念上相当な範囲か)によっては、単純承認とみなされるリスクがゼロではないため、事前に弁護士などの専門家に相談することを強くお勧めします。
6. 困った時の相談先
故人の預貯金の扱いや相続手続きで困った場合は、以下の窓口に相談しましょう。
- 各金融機関の相続手続き専門窓口:相続センターなど
- 弁護士・司法書士:遺産分割協議、相続放棄、法的手続き全般
- 税理士:相続税申告
- 葬儀社:手続きの基本的な流れのアドバイス、専門家の紹介など
以上になります。
手続きが複雑で分からない場合や、相続放棄を検討しているなど、判断に迷う場合は、必ず金融機関や専門家に相談することが、トラブルを防ぎ、スムーズに手続きを進めるための最善策です。
株式会社大阪セレモニー




