「相続税の申告って、うちは必要? いつまでに何をすればいいの?」

山田泰平

山田泰平

テーマ:葬儀後のお話

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

相続手続きを進める中で、遺産分割協議と並んで話題に出されるのが、「相続税(そうぞくぜい)」の問題ではないでしょうか。

「相続税」と聞くと、なんだかとても大変そうで、専門的な知識がないと太刀打ちできないようなイメージがあるかもしれません。
確かに、相続税の計算や申告手続きは複雑な部分もありますが、基本的な仕組みと、申告が必要になるかどうかの判断基準を知っておけば、過度に不安になる必要はありません。

今回は、この「相続税の申告」について、

  • そもそも相続税とは何か?
  • 申告が必要になるのはどんな場合か?(基礎控除額の計算)
  • 申告と納付の期限(10ヶ月)について
  • 基本的な手続きの流れ
  • 税負担を軽減できる制度(特例・控除)の概要
  • 専門家(税理士)への相談の重要性

などを、私たち葬儀のプロが、できるだけ分かりやすく解説していきます。

【結論】相続税は遺産から”控除額”を引いた残りにかかる!納期限は厳守しよう!

まず結論として、相続税の申告は、全ての人に必要なわけではありません。

相続税がかかるのは、亡くなった方(被相続人)が遺した財産の総額(遺産総額)が、法律で定められた「基礎控除額(きそこうじょがく)」を超える場合に限られます。

この基礎控除額は、「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」で計算されます。

つまり、遺産総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、原則として申告も不要です。

国税庁の統計によると、実際に相続税の申告が必要となるのは、亡くなった方全体の1割弱程度と言われています。

しかし、もし遺産総額が基礎控除額を超え、相続税の申告が必要となった場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から「10ヶ月以内」に、税務署へ相続税の申告書を提出し、納税まで済ませなければなりません。

この10ヶ月という期限は非常に重要で、遅れると延滞税などのペナルティが課される可能性があります。

相続税の計算や申告は複雑なため、特に遺産額が大きい場合や、不動産などが含まれる場合は、税理士などの専門家に相談することが、正確な申告と適切な節税のためには非常に有効です。


それでは、相続税申告の要否判断、期限、手続きの流れなどについて、その根拠となる部分を詳しく掘り下げていきましょう。

1. 相続税とは? 何にかかる税金?

相続税は、亡くなった方から財産を相続した際に、その受け取った財産の価額に対して課される税金です。

ただし、全ての財産にそのまま税金がかかるわけではなく、様々な控除や特例が設けられています。

課税対象となる主な財産(遺産総額に含まれるもの):

  • 現金、預貯金
  • 不動産(土地、建物)
  • 有価証券(株式、投資信託など)
  • 自動車、貴金属、骨董品など
  • 生命保険金、死亡退職金(※これらは「みなし相続財産」と呼ばれ、一定の非課税枠があります
  • 生前贈与の一部(相続開始前3年以内、または7年以内の贈与など、条件あり)


借金や未払金などのマイナスの財産は、遺産総額から差し引かれます。

2. 申告が必要かどうかの判断基準:「基礎控除額」の計算

相続税の申告が必要かどうかは、まず「基礎控除額」を計算し、それと「遺産総額」を比較することから始まります。

基礎控除額の計算式:
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

法定相続人の数え方:

配偶者は常に相続人となります。

子は第1順位。子が複数いる場合はその人数を数えます。(養子も含まれます)

子がいない場合は、第2順位の親(父母、祖父母)が相続人になります。

子も親もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。

相続放棄をした人がいても、その人を法定相続人の数に含めて計算します。


計算例:

相続人が配偶者と子2人の場合:3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

相続人が子3人の場合:3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

相続人が配偶者のみの場合:3,000万円 + (600万円 × 1人) = 3,600万円


申告要否の判断:

遺産総額 ≦ 基礎控除額 ⇒ 相続税はかからない。原則、申告不要。

遺産総額 > 基礎控除額 ⇒ 相続税がかかる可能性あり。原則、申告必要。


【注意点】

遺産総額が基礎控除額以下でも、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった特例を適用した結果、相続税がゼロになる場合は、特例適用のために申告が必要となります。

つまり、「相続税はかからないけれど、申告は必要」というケースがあることに注意が必要です。

3. 申告・納付の期限:「10ヶ月」は絶対!

相続税の申告と納税の期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。

例えば、1月15日に亡くなったことを知った場合、その年の11月15日が期限となります。

なぜ10ヶ月?: 相続人の確定、財産調査、遺産分割協議、各種書類の収集、申告書の作成など、相続税申告には多くの時間が必要となるため、比較的長い期間が設けられています。しかし、実際にはあっという間に過ぎてしまうことが多いです。


期限までにやること:

相続税申告書の作成・提出(税務署へ)

相続税の納付(原則として現金一括納付)


期限に遅れるとどうなる?:

無申告加算税: 本来納めるべき税額に加えて、ペナルティとして課されます。

延滞税: 納付期限の翌日から、納付する日までの日数に応じて課されます。

税制上の優遇措置が受けられない: 配偶者控除や小規模宅地等の特例など、期限内申告が要件となっている特例が適用できなくなる可能性があります。

4. 相続税申告の基本的な流れ

申告が必要となった場合の、大まかな流れです。

  1. 相続人の確定、財産調査、財産目録の作成(遺産分割協議の前準備と同じ)
  2. 遺産分割協議の実施と「遺産分割協議書」の作成(※後述の特例適用のためにも、申告期限までの完了が望ましい)
  3. 相続税額の計算: 各相続人が取得する財産額に基づいて、相続税の総額と各人の納税額を計算します。(非常に複雑な計算です)
  4. 相続税申告書の作成: 国税庁のウェブサイトで様式を入手できますが、記載項目が多く複雑です。
  5. 必要書類の添付: 戸籍謄本類、遺産分割協議書の写し、財産評価に関する資料、各種特例適用のための書類など、多くの添付書類が必要です。
  6. 税務署への提出: 被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に、持参または郵送で提出します。(e-Taxによる電子申告も可能です)
  7. 納税: 期限までに、金融機関や税務署の窓口、またはインターネットバンキングなどで納税します。(延納や物納といった方法もありますが、条件は厳しいです)


5. 税負担を軽減できる主な特例・控除

相続税には、税負担を軽減するための様々な特例や控除があります。

これらを適用するためには、原則として申告期限内に申告を行うことが必要です。

配偶者の税額軽減(配偶者控除): 配偶者が相続した財産のうち、1億6千万円または法定相続分のいずれか多い金額までは、相続税がかかりません。非常に大きな控除ですが、適用を受けるためには申告が必要です。

小規模宅地等の特例: 故人が住んでいた土地や事業に使っていた土地などを相続した場合、一定の要件を満たせば、その土地の評価額を最大80%減額できる制度です。適用要件が複雑です。

生命保険金・死亡退職金の非課税枠: 「500万円 × 法定相続人の数」までの金額は非課税となります。

未成年者控除、障害者控除: 相続人が未成年者や障害者の場合に、一定額が控除されます。

相次相続控除: 10年以内に相次いで相続が発生した場合に、税負担を軽減する制度。

これらの特例・控除を正しく適用することで、納税額を大幅に減らせる可能性があります。

6. なぜ専門家(税理士)への相談が有効なのか?

ここまで見てきたように、相続税の計算、特例の適用、申告書の作成は非常に複雑です。

財産評価が難しい: 不動産や非上場株式などの評価は専門的な知識が必要です。

特例の適用要件が複雑: どの特例が使えるか、その要件を満たしているかの判断が難しい。

計算・申告書の作成が煩雑: 間違いやすいポイントが多く、ミスがあると追徴課税のリスクも。

節税対策のアドバイス: 税理士ならではの視点で、最適な遺産分割方法など、節税に繋がるアドバイスがもらえる。

税務調査への対応: 万が一、税務調査が入った場合にも、適切に対応してもらえる。

特に、

  • 遺産総額が基礎控除額に近いまたは超える場合、
  • 不動産や自社株など評価の難しい財産がある場合
  • 相続人が複数いて遺産分割が複雑になりそうな場合

などは、相続税に詳しい税理士に相談することを強くお勧めします。

相談・依頼には費用がかかりますが、申告ミスによるペナルティや、適用できたはずの特例を逃すことによる損失を考えれば、結果的にメリットの方が大きいケースが多いでしょう。

まとめ

相続税の申告は、遺産総額が「基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)」を超える場合に必要となります。

まずは、この基礎控除額をご自身のケースで計算し、申告が必要かどうかを判断することから始めましょう。

もし申告が必要な場合は、「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限を厳守し、申告と納税を完了させる必要があります。

期限に遅れるとペナルティが課されるだけでなく、税制上の優遇措置が受けられなくなる可能性もあるため、注意が必要です。

私たち株式会社大阪セレモニーでは、相続税に詳しい税理士のご紹介なども可能です。葬儀後の様々な手続きに関するご不安があれば、いつでもお気軽にご相談ください。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
専門家

山田泰平(葬儀)

株式会社大阪セレモニー

当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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