死後事務委任契約【最新ガイド】自分の死後を託すための手続きと注意点

山田泰平

山田泰平

テーマ:葬儀の知識

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

前回のコラムでは、生前の生活支援から死後の手続きまで幅広くサポートする「身元保証サービス」について解説しました。

今回は、その中でも特に「自分が亡くなった後のこと」、すなわち「死後事務」に焦点を当てた「死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)」について、詳しく掘り下げていきたいと思います。

最近では、「自分の死後の始末は、自分で決めておきたい」「誰かに確実に実行してもらいたい」と考える方が増えています。

その想いを法的な形で実現するのが、この「死後事務委任契約」です。

しかし、具体的にどのような契約なのか、誰と結ぶことができるのか、費用はどれくらいかかるのか、そして注意すべき点は何か、など、まだ十分に知られていない部分も多いかと思います。

今回は、この「死後事務委任契約」について、

  • 契約の基本的な内容(何を委任できるのか?)
  • 利用するメリットとデメリット
  • 誰と契約できるのか?(契約相手の選び方)
  • 契約の方法(公正証書がおすすめ)
  • 費用の目安と注意点

などを、最新の情報を踏まえながら、分かりやすく解説していきます。
ご自身の最期を安心して迎えるための、重要な「終活」の一つとして、ぜひ参考にしてください。

死後事務委任契約とは? 何を「委任」できるの?

死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に必要となる様々な事務手続き(死後事務)を、生前のうちに特定の第三者(個人または法人)に依頼し、その実行を委任(お願い)しておく契約のことです。

民法上の「委任契約」の一種であり、委任者(本人)の死亡によっても契約が終了しない、という特約を付けるのが一般的です。(通常の委任契約は委任者の死亡により終了します)

この契約によって、委任できる「死後事務」の内容は多岐にわたりますが、主に以下のようなものが挙げられます。

役所への諸届け: 死亡届、年金受給停止、健康保険証返納、世帯主変更届など。

葬儀・火葬・納骨に関する事務: 生前の希望に沿った葬儀・火葬の手配と執行、納骨先への連絡・納骨手続きなど。

医療費・施設利用料等の精算: 病院や介護施設などの未払い費用の支払い。

家賃・地代・管理費等の支払いと解約: 賃貸住宅の家賃や、老人ホームの利用料などの支払いと、契約解除手続き。

遺品整理・家財処分: 自宅の清掃、遺品の仕分け・処分、家財道具の処分など。

公共サービス等の解約: 電気、ガス、水道、電話、インターネット、NHKなどの解約・精算手続き。

SNSアカウント等のデジタル遺品の整理: 事前に依頼された範囲でのアカウント削除やデータ消去など。

関係者への連絡: 事前に指定された友人・知人などへの死亡連絡。

ペットの処遇: 飼っていたペットの新しい飼い主探しや、施設への引き渡し手続きなど。

このように、亡くなった後に発生するであろう、非常に煩雑で多岐にわたる事務手続きを、まとめて依頼することができます。

ただし、遺産分割協議や相続税申告といった「相続」に関する手続きは、原則として死後事務委任契約の範囲外であり、相続人が行うか、別途、弁護士や税理士などの専門家に依頼する必要があります。

死後事務委任契約のメリット・デメリット

この契約を利用することには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

【メリット】

死後の不安が解消される: 自分の死後に誰が手続きをしてくれるのか、という不安がなくなり、安心して生活できる。

自分の希望を反映できる: 葬儀の形式や納骨先など、自分の希望する最期の形を具体的に託すことができる。

家族や親族に負担をかけずに済む: 煩雑な死後事務を任せることで、遺された家族や親族の精神的・時間的な負担を大幅に軽減できる。

身寄りがなくても安心: 頼れる人がいなくても、死後の手続きを確実に実行してもらえる。

第三者に客観的に執行してもらえる: 感情的になりがちな死後の手続きを、契約に基づいて第三者が淡々と進めてくれる。


【デメリット】

費用がかかる: 契約相手(受任者)への報酬や、死後事務に必要な実費(葬儀費用、遺品整理費用など)を事前に準備しておく必要がある。

信頼できる受任者を見つける必要がある: 最も重要な点です。大切な死後事務を任せる相手が信頼できなければ、契約が無意味になるどころか、トラブルに発展する可能性もあります。

契約内容を明確にしておく必要がある: 委任する事務の範囲や内容、費用などを具体的に定めておかないと、後で「やってもらえなかった」「想定外の費用がかかった」といった問題が起こり得る。

受任者が先に亡くなる・組織がなくなるリスク: 個人に依頼する場合、その人が自分より先に亡くなる可能性も。法人に依頼する場合も、その法人が解散・倒産するリスクがゼロではありません。(その場合の対応策を契約に盛り込む必要があります)

相続人との間でトラブルになる可能性: 死後事務の内容(特に葬儀や遺品処分)について、相続人の意向と異なる場合、トラブルになる可能性があります。事前に相続人候補者にも相談しておくことが望ましいです。

誰と契約できる? 受任者の選び方

死後事務委任契約の相手(受任者)は、誰を選ぶことができるのでしょうか?

個人: 信頼できる友人、知人、あるいは甥・姪など、血縁関係のない親族。

メリット:気心が知れている、費用を抑えられる可能性がある。

デメリット:専門知識がない場合がある、相手が高齢だと先に亡くなるリスク、相手の負担が大きい。

法人:

①弁護士、司法書士、行政書士などの士業法人・事務所: 法律の専門家であり、手続きに精通している。信頼性が高い。

②NPO法人、一般社団法人、株式会社など(身元保証サービス事業者など): 死後事務を専門的に扱っている組織。生前の身元保証から一貫して依頼できる場合も。

③メリット:専門知識がある、組織として継続性がある(個人よりは)、死後事務に特化したノウハウがある。

④デメリット:費用が高めになる傾向がある、事業者によって信頼性にばらつきがある。


【重要】受任者選びのポイント

受任者選びは、死後事務委任契約の成否を左右する最も重要な要素です。以下の点を重視しましょう。

信頼性・誠実性: 最も大切です。本当に信頼できる相手か、親身になってくれるか、見極めましょう。

専門知識・経験: 死後事務に関する知識や経験が豊富か。

継続性・安定性: 特に法人に依頼する場合、長期的に安定して業務を継続できる組織か。

費用体系の明確さ: 報酬や実費の精算方法が明確で、分かりやすいか。

相性: 長い付き合いになる可能性もあるため、コミュニケーションが取りやすく、相性が良い相手を選ぶことも大切です。

契約はどうやって結ぶ?「公正証書」がおすすめ

死後事務委任契約は、口約束や当事者間だけで作成した契約書でも法的な効力はありますが、後々のトラブルを防ぎ、契約内容を確実に実行してもらうためには、「公正証書(こうせいしょうしょ)」で作成することを強くお勧めします。

公正証書とは: 公証人(法律の専門家)が、当事者の意思を確認した上で作成する公的な文書です。

メリット:

①証明力が高い: 契約内容や当事者の意思が公的に証明されるため、後で「そんな契約は知らない」といった争いを防げます。

②原本が公証役場に保管される: 紛失や改ざんのリスクが低い。

③法的効力が明確: 契約内容の有効性が担保されやすい。

相続人等への対抗力: 相続人などが契約の存在を知らなくても、受任者は契約に基づいて事務を執行しやすくなります。

作成場所: 全国の公証役場で作成できます。

費用: 契約内容(委任する事務の内容や費用)によって異なりますが、通常、数万円程度の作成手数料がかかります。

費用はどれくらいかかる? 事前準備が必要

死後事務委任契約には、主に以下の費用が必要となり、これらを生前に準備しておく必要があります。

受任者への報酬: 契約時に一括で支払う、あるいは死後事務完了後に精算するなど、契約によって異なります。個人に頼む場合は無報酬の場合もありますが、法人に依頼する場合は数十万円~百万円以上になることもあります。

死後事務に必要な実費: 葬儀費用、納骨費用、遺品整理費用、医療費の未払い分、家賃など、実際に死後事務を行うためにかかる費用です。これらの費用を「預託金」として、事前に受任者(または信託銀行など)に預けておくのが一般的です。金額は、依頼する事務の内容によって大きく異なりますが、数百万円単位になることも珍しくありません。

専門家への相談・作成費用: 弁護士や司法書士に契約書作成の相談やサポートを依頼した場合の費用、公正証書作成手数料など。

【重要】預託金の管理方法の確認

死後事務に必要な実費として預ける「預託金」が、どのように管理されるのかは非常に重要です。

受任者の口座で分別管理されるのか、信託銀行などを利用して保全されるのかなど、安全な管理方法が取られているか、必ず確認しましょう。

また、死後事務完了後に、預託金の使途明細がきちんと報告され、残金があれば誰に返還されるのかも明確にしておく必要があります。

まとめ

死後事務委任契約は、「自分の死後のことは、自分で決めておきたい」「遺される人に迷惑をかけたくない」という切実な想いを実現するための、有効な法的手段です。

しかし、その契約には、

  • 信頼できる受任者選びが不可欠であること
  • 委任する内容と費用を明確に定めておく必要があること
  • 公正証書での作成が望ましいこと
  • 必要な費用(報酬と実費)を生前に準備しておく必要があること

など、慎重に進めるべき点が多く存在します。

まずは、ご自身が亡くなった後にどのような手続きが必要になり、誰に何を託したいのかを具体的に考え、整理することから始めてみましょう。

そして、契約を検討する際には、必ず専門家(弁護士、司法書士、行政書士など)や、信頼できる終活サポート事業者などに相談し、内容を十分に理解した上で、納得のいく契約を結んでください。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
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山田泰平(葬儀)

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当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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