「故人の会社の健康保険から出る『埋葬料』って、誰がもらえるの?」
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
これまでのコラムで、お墓の建立や維持、あるいは墓じまい、永代供養といった、故人様の遺骨を納める場所に関する様々な選択肢についてお話ししてきました。
今回は、そうした従来の形にとらわれない、より故人様を身近に感じられる新しい供養の形として近年注目されている「手元供養(てもとくよう)」について、詳しくご紹介したいと思います。
核家族化が進み、ライフスタイルが多様化する中で、故人を偲ぶ形も変化しています。
手元供養は、「いつもそばにいてほしい」「遠くのお墓にはなかなか行けないけれど、毎日手を合わせたい」そんな現代人の想いに寄り添う、新しい選択肢の一つです。
今回は、この「手元供養」について、
- 手元供養の基本的な考え方
- 具体的な方法と種類(最新トレンド含む)
- 知っておきたいメリットとデメリット
- 始める際の注意点やポイント
などを、私たち葬儀のプロの視点から分かりやすく解説していきます。
手元供養とは? その基本的な考え方
手元供養とは、文字通り故人様の遺骨(またはその一部)や遺灰を、お墓や納骨堂などに納めるだけでなく、自宅など身近な場所に保管して供養する方法のこと。
「自宅供養」と呼ばれることもあります。
従来の「遺骨はお墓に納めるもの」という考え方にとらわれず、もっと自由な発想で、故人を身近に感じながら偲びたいという想いから生まれた、比較的新しい供養の形と言えます。
必ずしも全ての遺骨を手元に置く必要はなく、
- 分骨(ぶんこつ:遺骨の一部を取り分けること)して、一部をお墓や納骨堂に納め、残りを手元供養にする。
- 全ての遺骨を手元供養にする。
- 散骨などをした上で、一部の遺灰を手元に残す。
など、様々なケースがあります。
宗教的な儀式というよりは、故人を偲ぶ気持ちを大切にする、個人的な供養のスタイルとして広まっています。
手元供養の具体的な方法と種類
手元供養には、様々な方法やそのためのアイテム(手元供養品)があります。
近年はおしゃれでインテリアに馴染むデザインのものも増えています。
1.ミニ骨壺・手元供養用骨壺
特徴:
最も一般的な手元供養の方法で、遺骨(主に分骨したもの)を納めるための、手のひらサイズの小さな骨壺を使用します。
陶器、ガラス、金属、木製など様々な素材があり、デザインも豊富。仏壇に置くだけでなく、リビングや寝室など、身近な場所に置くことができます。
伝統的な骨壺の形だけでなく、オブジェのようなデザイン性の高いもの、写真立てと一体になったもの、故人の好きだったモチーフを取り入れたものなどが人気です。
気密性の高い、湿気対策が施されたものも増えています。
費用相場: 数千円 ~ 数万円程度。素材やデザインによって幅があります。
2.アクセサリー(遺骨ペンダント・リングなど)
特徴:
ペンダントトップやリング(指輪)などの内部に、少量(米粒数粒程度)の遺骨や遺灰を納め、常に身に着けることができるタイプです。
シルバー、ゴールド、プラチナ、チタンなどの素材で作られ、デザインも様々です。
一見すると普通のアクセサリーに見える、シンプルで洗練されたデザインが主流。
ダイヤモンドなどの宝石が付いたものや、刻印が入れられるものもあります。
防水仕様のものも増えています。
費用相場: 1万円 ~ 数十万円程度。素材やデザイン、宝石の有無によって大きく異なります。
3.ミニ仏壇・ステージ(祈りの空間)
特徴:
手元供養品(ミニ骨壺など)を安置し、写真立てや小さなおりん、花などを飾って、自宅の中にコンパクトな祈りのスペースを作るためのものです。
従来の大きな仏壇とは異なり、リビングなどに置いても違和感のない、モダンでシンプルなデザインが多いのが特徴です。
家具調のデザインで、インテリアに溶け込むようなものが人気です。照明付きのものや、壁掛けタイプのものなども登場しています。
費用相場: 数万円 ~ 十数万円程度。
4.遺骨加工品(ダイヤモンド・プレートなど)
特徴:
遺骨に含まれる炭素を取り出して、人工的にメモリアルダイヤモンドを製作したり、遺骨を特殊な技術でセラミックプレートなどに加工したりするものです。
形を変えて、永遠の輝きや思い出として残すことができます。
ダイヤモンドの色を選べたり、プレートに故人の写真やメッセージを焼き付けたりできるなど、オーダーメイド性が高まっています。
費用相場: 数十万円 ~ 百万円以上。高度な技術が必要なため、比較的高額になります。
5.その他(ぬいぐるみ、ガラス細工など)
特徴: 故人が愛用していたぬいぐるみに少量の遺骨を納める、遺灰をガラスに練り込んでオブジェを作るなど、より個性的な手元供養の方法もあります。
費用相場: 加工の内容によって様々です。
手元供養のメリットとは?
手元供養には、以下のようなメリットがあります。
故人を身近に感じられる: いつでもそばにいてくれる、という安心感や温かさを感じられます。
毎日手を合わせられる: 遠くのお墓に行かなくても、自宅で気軽に故人を偲び、語りかけることができます。
費用を抑えられる場合がある: お墓を新しく建てる費用や、納骨堂の費用と比較すると、初期費用を抑えられることが多いです。(ただし、遺骨加工品などは高額になります)
管理の手間が少ない: お墓の掃除や草むしりなどの管理負担がありません。
引っ越しなどにも対応しやすい: ミニ骨壺やアクセサリーであれば、引っ越し先にも一緒に持って行くことができます。
宗教・宗派にとらわれない: 特定の宗教的な儀式を必要としないため、無宗教の方や、形式にとらわれたくない方にも受け入れられやすいです。
手元供養のデメリットと注意点
一方で、手元供養には以下のようなデメリットや注意点も存在します。
遺骨の管理責任: 自宅で保管するため、紛失、盗難、破損、湿気によるカビなどのリスクに対する管理責任は、ご自身(ご家族)が負うことになります。
親族の理解が得られない可能性: 「遺骨はきちんと納骨すべきだ」という考えを持つ親族がいる場合、反対される可能性があります。必ず事前に相談し、理解を得ておくことが重要です。
分骨に対する考え方: 遺骨を分ける「分骨」に対して、抵抗を感じる方もいらっしゃいます。また、地域によっては分骨の慣習がない場合もあります。
将来的な遺骨の行き先: ご自身が高齢になったり、亡くなったりした場合、手元供養していた遺骨を最終的にどうするのか、事前に決めておく必要があります。次の世代に負担を残さないよう、お墓や永代供養墓への納骨、散骨などを検討し、エンディングノートなどに記しておくと良いでしょう。
全ての人に受け入れられるわけではない: 自宅に遺骨があることに対して、抵抗を感じる来客がいる可能性も考慮する必要があります。
カビ対策: 遺骨は湿気に弱いため、特に密閉性の低い容器で保管する場合は、定期的な換気や乾燥剤の使用など、カビ対策が必要です。
手元供養品の選択: アクセサリーなどは、身に着けているうちに紛失したり、破損したりするリスクも考慮する必要があります。
手元供養を始める際のポイント
手元供養を始める際には、以下の点を心がけましょう。
家族・親族と十分に話し合う: 最も重要です。なぜ手元供養をしたいのか、どのように行うのかを丁寧に説明し、理解と合意を得ましょう。
遺骨の量を決める: 全ての遺骨を手元供養にするのか、分骨するのかを決めます。分骨する場合は、どのくらいの量にするかを考えます。
手元供養の方法・アイテムを選ぶ: ご自身のライフスタイルや故人のイメージ、予算に合わせて、最適な方法とアイテムを選びましょう。実物を見て、触れて、納得のいくものを選ぶことが大切です。
保管場所を決める: 直射日光や湿気を避けられる、安全で落ち着ける場所を選びましょう。
将来のことも考えておく: ご自身に万が一のことがあった場合、その遺骨をどうするのか、道筋をつけておくことが、残される家族への配慮となります。
まとめ
手元供養は、故人を身近に感じながら、自分らしい形で供養を行いたいという想いに応える、新しい供養の選択肢です。
費用面や管理面でのメリットもありますが、同時に遺骨の管理責任や親族の理解、将来的な問題など、考慮すべき点も存在します。
大切なのは、メリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の気持ち、そしてご家族や親族の気持ちとも向き合いながら、「自分たちにとって、故人にとって、どのような供養の形が最も心安らぐのか」をじっくりと考えること。
手元供養は、決して「お墓」や「納骨」を否定するものではありません。
むしろ、分骨して一部を手元供養にすることで、お墓参りに行けない時でも故人を身近に感じられる、というように、従来の供養方法を補完する役割も果たします。
株式会社大阪セレモニー



