シックハウス症候群の主な症状と判断基準
シックハウス症候群の原因物質としてまず挙げられるのが、厚労省が指定する12種類を含む多くのVOCです。
かつてはVOCのみが、シックハウス症候群の原因と考えられていましたが、今は生物要因(カビ、ダニ)も要因とされています。
タバコは、指定物質のアセトアルデヒドに加えて、ニコチン、ダイオキシンなどの有害物質を含有しており、VOC以上に危険な側面があります。
厚労省が指定する12物質
シックハウス症候群の原因物質として最も重要なのが、揮発性の高い化学物質であるVOCです。厚労省は、特に12の物質について基準を提示していますが、各物質の概要と基準値は以下のとおりです。
●ホルムアルデヒド(0.08ppm)
刺激臭のある無色の気体(常温時)で、水溶液はホルマリンとして、標本防腐剤に使われます。シックハウス症候群の原因の筆頭格に挙げられ、早くに規制されました。内装材の接着剤から放散されるものが主体ですが、木製家具やカーペットからも放散されます。ごく微量ですが、喫煙や暖房器具からも発生します。
●アセトアルデヒド(0.03ppm)
シンナーやラッカーの溶剤やマニキュアの除光液の原料として有名です。飲酒時に体内でも合成され二日酔いの原因となることでも知られています。酢酸ビニル樹脂溶剤系の接着剤からの放散が多く、頭痛などの原因になります。
●トルエン(0.07ppm)
接着剤および塗料の溶剤や希釈用によく用いられる、独特の刺激臭から馴染み深いVOCです。建材だけでなく家具でもよく使用されます。基準値が定められたVOCの中でも最も揮発しやすいため、新築住宅ではトルエンの臭いがしばしば問題となります。
●キシレン(0.20ppm)
有機顔料の原料や塗料の溶剤として用いられ、放散すると目、鼻、喉を刺激します。大量に吸入した場合、頭痛、倦怠感、吐き気をもたらします。
●エチルベンゼン(0.88ppm)
キシレンを含有する塗料やシンナーには必ず含まれるVOCであり、キシレンと同様、目、鼻、喉を刺激します。
●スチレン(0.05ppm)
断熱材や畳といった建材だけでなく、家電や住宅設備の外装材として、日常的に目にするポリスチレンやABS樹脂に微量含まれているVOCです。樹脂に含まれるものは、化学的に安定しており、放散はごく微量にとどまるとされています。
●パラジクロロベンゼン(0.04ppm)
防虫剤や消臭剤の原料としてよく知られています。特に日本では、収納している衣類の防虫剤として普及しており、パラジクロロベンゼンの放散量は、諸外国と比して数倍多いとのデータがあります。過度に吸引すると頭痛やめまいを引き起こします。
●テトラデカン(0.04ppm)
住宅内では、油性塗料やその希釈剤、ニス、ワックスに含有されています。放散気体を吸うと、めまいや吐き気をおぼえ、皮膚に付くと接触性皮膚炎を引きおこすおそれがあります。
●フェノブカルブ(3.8ppb)
農薬・駆虫剤として広く使われている薬剤で、住宅では防蟻剤として用いられます。揮発性は低く、室内にまで放散される可能性は少ないため、危険性は低いです。もし揮発ガスを吸引した場合、頭痛やめまいなどの症状が出ます。
●ダイアジノン(0.02ppb)
古くから実用化されている農薬で、家庭用としては観葉植物の害虫駆除用に土と混ぜて使います。揮発性は低いですが、もし吸入した場合は頭痛やめまいなどの症状が出ます。
●フタル酸ジ-n-ブチル(0.02ppm)
合成樹脂に柔軟性を与える可塑剤として広く利用されるほか、接着剤にも含まれています。吸引によって、喉・皮膚への刺激感、胃痛を招くおそれがあります。
●フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(7.6ppb)
フタル酸ジ-n-ブチルと同じく、可塑剤として使用される物質です。吸引によって粘膜に刺激感を生じます。また、内分泌攪乱物質の可能性が疑われています。
以前は、クロルピリホスについても基準値が定められていましたが、2003年に住居建材・殺虫剤に、この化学物質を含有することが禁止されました。そのため禁止以降に建てた家屋については、室内にこの物質が放散されることはありません。
生物要因
以前は、シックハウス症候群の原因はVOCのみであると考えられてきましたが、今はカビとダニも加わっています。
●カビ
正確にはカビが空気中に放出する胞子が、シックハウス症候群の原因となります。身近なカビには数十種類ありますが、特にクロカビ、アオカビ、ススカビ、ケカビ、そしてある種のコウジカビが、シックハウス症候群を引き起こすリスクが大きいとされています。
人間は、普通の生活をしていても、1日に数千個を超える胞子を吸い込んでいます。それでも平気なのは、免疫システムが働いているおかげです。しかし、そのシステムが機能低下するなどして胞子のダメージを受けると、過敏性肺炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎といった病気にかかってしまいます。
くわえて、微生物由来揮発性有機化合物(MVOC)といって、カビの二次代謝によって生まれる化合物も、シックハウス症候群の原因となります。
●ダニ
室内に生息するダニのフン、脱皮殻、死骸が、期間を経て微小な粉となり、これがシックハウス症候群をもたらすことがあります。症状はカビと似ており、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などを発症させます。
タバコ
意外に思われるかもしれませんが、タバコの煙には、厚労省による指定12物質の1つであるアセトアルデヒドが含まれているのです。ご家族の中にヘビースモーカーがいれば、シックハウス症候群の原因としてタバコを疑うべきかもしれません。