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調停の待合室から~電話調停

川﨑政宏

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テーマ:家事調停

調停の待合室から~電話調停

調停を申し立てるときに悩ましいのが、申立先の家庭裁判所の管轄です。

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所への申立てとなるので、相手方が遠方の場合(別居して実家に帰って離婚調停を申し立てる場合や、婚出して遠方で暮らしている相続人が遺産分割調停を申し立てる場合など)は、申立人ご本人も大変ですが、弁護士に依頼するかどうかも交通費を考えて検討する必要があり、また依頼するにしても、地元の弁護士がよいのか、遠隔地とはいえ家庭裁判所の近くの県外の弁護士がよいのか、悩むところです。

弁護士も、中四国、近畿は通常の日帰り出張圏内ですが、関東、北陸、九州などの家庭裁判所に出向くのは移動だけで一日仕事となるので、それなりの覚悟が必要となります。

幸いなことに、平成25年1月1日に家事事件手続法が施行されて、電話会議システムの利用ができるようになり、電話会議システムを利用した期日の手続ができるようになりました(家事事件手続法258条1項,54条)。

調停や審判では、原則として当事者本人が調停等の手続期日に出席する必要があるのですが、当事者が遠方に居住していて調停等を行う家庭裁判所まで出向くことが困難な場合など、家庭裁判所が相当と認めるとき、当事者の意見を聴いた上で、電話会議システムの利用が認められるものです。

調停であれば、30分ごと交代して、調停委員に話を聴いてもらいますが、電話越しにはなりますが、依頼者の方には弁護士事務所に待機していただいて、30分交代で電話で手続きを進めるものです。

顔を見ずに話すので、やりにくい点もあります。調停委員や裁判官の微妙な表情の変化や、言外のニュアンスを読み取りにくいといった点です。ただ、2時間の調停のために往復6時間をかけて出向く負担を考えると、とてもありがたい制度だと思います。

調停委員と一度は顔をあわせて話をした方がよいと感じることも多く、二度目の期日から電話会議を利用することもあります。

離婚調停や離縁調停のように、離婚・離縁成立の期日に必ず直接当事者の意思確認を行う必要のある事件では、当該期日を電話会議ではできず、当事者の出頭が必要となります(家事事件手続法268条3項,277条2項)。

電話会議システムを利用するかどうかについては、実際に調停等を行う裁判所が、当事者の意向や具体的な事情を確認したうえ判断します。

実務では、当事者の本人確認の必要もあり、弁護士が手続代理人となっている場合は、遠方の弁護士事務所待機で電話を待つ形で対応してもらえるようです。

代理人なしで、ご本人が自宅で一人電話で応対する形での利用は認められないのが実情です。

電話調停が積極的に利用できれば、家事事件の手続が国民にとってより利用しやすいものになるので、うまく利用していきたいと思います。

今でも忘れられない電話会議システム利用の期日があります。

保全事件の審問期日に、まる一日かけて大雨の中を新幹線を乗り継いで、遠路目的地の家庭裁判所に向かって中継地駅に下り立ったところ、土砂崩れのため、乗り継ぎ予定の在来線が不通とのニュースが流れてきました。臨時バスも土砂崩れで途中の振替輸送しかされておらず、中継地の駅で立ち往生となりました。

依頼者の動揺は大きく、緊急案件で期日が変更されると取り返しのつかない事態が生じそうだったため、予期せぬアクシデントに弁護士も慌てました。

急ぎ家庭裁判所の担当書記官に連絡したところ、期日変更やむなしという雰囲気でしたが、緊急を要する保全事件ゆえに、何とかならないかと、お願いしたところ、駅構内で当事者と一緒に待機しておいてくださいと指示があったので、駅構内の喫茶店で大雨のなか、やきもきしながら待機していました。

予定時刻直前に裁判官の判断で、弁護士の携帯電話に裁判官から電話が入り、審問期日を実施してくれることになりました。

おそらく通常ならばありえない、喫茶店で携帯電話を使った電話会議システム利用(相手方代理人と相手方は地元ゆえ家庭裁判所に出頭して電話会議システムの設置された会議室に待機)の期日を無事終えて、新幹線でとんぼ返りしたことを思い出します。

電話会議システムで救われた命を今でも実感しています。


※本コラムは法律コラムの性質上、弁護士の守秘義務を前提に、事例はすべて想定事例にしており、特定の個人や事件には関する記述はありません。

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川﨑政宏
専門家

川﨑政宏(弁護士)

ももたろう第2法律事務所

ケースワーカーとしての長年の経験を生かし、相続や離婚など家庭内のトラブル解決に多く関わっています。特に、子どもの親権や面会交流、連れ去り・引き離しなど緊急案件への迅速解決には実績があります。

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