親子の縁を切りたい② 安全確保
親子の縁を切りたい⑦ 住民票閲覧制限措置
暴力的環境から安全に離れた当事者にとって、居場所を探し回られ、住所をつきとめられる恐怖と不安は言葉にあらわせないほどのものです。
特に親子間であれば、住民票をどこに移したか、戸籍附票を請求すれば、わかってしまうからです。
配偶者間暴力やストーカー被害の場合、転居先をつきとめられて殺傷事件に至った事案もあり、平成16年7月から住民票閲覧制限の支援措置がとられてきました。もちろん警察等の意見を聞いたうえで市区町村が支援措置を講じます。
平成24年10月からは配偶者間暴力、ストーカー被害の場合だけでなく、児童虐待等の親族間暴力のケースにも支援措置の対象が拡大されました。
総務省のホームページには、以下のように制度の概要が紹介されていますので、引用します。この仕組みは大切なものです。過去の虐待ケースなどで、児童相談所にも相談できていない方の場合は、まず警察の生活安全課に相談してみることをおすすめします。
(趣旨)
配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者(以下「DV等被害者」といいます。)の方については、市区町村に対して住民基本台帳事務におけるDV等支援措置(以下「DV等支援措置」といいます。)を申し出て、「DV等支援対象者」となることにより、加害者からの「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」、「住民票(除票を含む)の写し等の交付」、「戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付」の請求・申出があっても、これを制限する(拒否する)措置が講じられます。
※詳しくは、住民票のある市区町村にお問い合わせ下さい。
1 DV等支援措置の目的
DV等被害者の方を保護するため、住民基本台帳の一部の写しの閲覧(住民基本台帳法(以下「法」といいます。)第11条、第11条の2)、住民票の写し等の交付(法第12条、第12条の2、第12条の3)及び戸籍の附票の写しの交付(法第20条)について、不当な目的により利用されることを防止します。
2 DV等支援措置の申出者
住民基本台帳に記録されている方又は戸籍の附票に記録されている方で、次に掲げる方は、住民票のある市区町村や戸籍の附票のある市区町村等にDV等支援措置を申し出ることができます。
1.(1) 配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある方
2.(2) ストーカー規制法第7条に規定するストーカー行為等の被害者であり、かつ、更に反復してつきまとい等をされるおそれがある方
3.(3) 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり、かつ、再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがある方
4.(4) その他(1)から(3)までに掲げる方に準ずる方
なお、申出者と同一の住所を有する方についても、申出者と併せてDV等支援措置を実施することを求めることができます。
3 DV等支援措置の申出の方法、必要性の確認、期間
住民票のある市区町村や戸籍の附票のある市区町村等に「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提出すること等により、DV等支援措置を求める旨の申出を行ってください。
申出を受け付けた市区町村は、DV等支援措置の必要性について、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の相談機関等の意見を聴き(※)、又は裁判所の発行する保護命令決定書の写し若しくはストーカー規制法に基づく警告等実施書面等の提出を求めることにより確認します。必要性を確認した場合、その結果を申出者に連絡します。
DV等支援措置の期間は、確認の結果を申出者に連絡した日から起算して1年です。
期間終了の1か月前から、延長の申出を受け付けます。
延長後の支援措置の期間は、延長前の支援措置の期間の終了日の翌日から起算して1年です。
※ 申出書に相談機関等の意見を記載する場合、申出者が相談機関等に相談等をする際に申請書に記載してもらう方法や、市区町村から相談機関等に対し申請書への記載を依頼する方法等があります。
相談機関が明確でない場合には、民間の被害者支援団体やシェルターを設置運営する法人などからの意見等の聴取等によりDV等支援措置の必要性を確認する場合もあります。
4 DV等支援措置の内容
加害者が判明している場合、DV等被害者に係る住民基本台帳の一部の写しの閲覧、住民票(除票を含む)の写し等の交付、戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付の請求・申出が加害者からあっても、不当な目的によるもの又は相当と認められないものとして、閲覧・交付をさせないこととします。
その他の第三者からの住民票の写し等の交付等の申出については、加害者が第三者になりすまして行う申出に対し交付・閲覧をさせることを防ぐため、写真が貼付された身分証明書の提示を求めるなど、本人確認をより厳格に行います。
また、加害者からの依頼を受けた第三者からの住民票の写し等の交付等の申出に対し交付・閲覧をさせることを防ぐため、請求事由についてもより厳格な審査を行います。
※ 本コラムは法律コラムの性質上、弁護士の守秘義務を前提に、事例はすべて想定事例にしており、特定の個人や事件に関する記述はありません。