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川﨑政宏

夫婦、親子をめぐるトラブル解決のプロ

川﨑政宏(かわさきまさひろ)

ももたろう第2法律事務所

コラム

親子の縁を切りたい⑤  接近禁止命令

親子関係の法律相談

2018年4月21日 / 2018年5月5日更新

親子の縁を切りたい⑤ 接近禁止命令

何とか無事に、暴力的環境から離れた当事者にとって、その後も安全な距離を取り続けることは大変な苦労があります。

配偶者間暴力に関しては、DV防止法(配偶者からの暴力の防止と被害者の保護に関する法律)において保護命令の制度が規定されており、被害者が地方裁判所に申し立てて、審尋のうえ、地方裁判所が接近禁止命令等の保護命令を決定します。接近禁止命令は6か月間のつきまとい等を禁止するもので、違反した場合は保護命令違反で検挙され、刑事罰が科されます。

親子間の場合はどうでしょうか。

親子間暴力についての接近禁止命令の制度はありませんが、既存の接近禁止命令が親子間の接近禁止をカバーするものもあります。

たとえば先のDV防止法は配偶者間の暴力に関してですが、配偶者に接近できないときに、子どもや親族へのつきまとい等を行うことで、配偶者(DV被害者)が対応に出て来ざるをえなくなりその場で暴力を振るわれる危険があるため、保護命令において子どもや親族への6か月間の接近禁止命令もあわせて決定されることがあります。

この場合は、たとえ親子であっても、子どもや義親への接近禁止命令が出ます。具体的には、子どもを連れてDVから避難した妻子の居場所を探索するため、子どもが通う学校や妻の両親のもとへ押しかけるような場面を想定しています。もちろん配偶者間での暴力が前提での安全確保の制度なので、子どもが親からの暴力を怖れていても、両親間でのDVがなければ、またあってもDV被害者が保護命令の申立てをしなければ、子どもの安全は確保できません。さらに親族への接近禁止命令は、親族が成人の場合は、自ら対処できると判断されることも少なくなく(警察への通報等でDV被害者が直接応対を余儀なくされる可能性は低いとみられやすいため)、子どもへの接近禁止命令に比べると親族への接近禁止命令の認容率は低い印象を受けます。

また、児童虐待防止法では、親の暴力から引き離すため、児童相談所が一時保護し、子どもを保護します。親からの面会等を制限することもできますが、その後、児童養護施設への措置あるいは同意入所となった後に、施設や通学路で親からのつきまとい等があった場合は、子どもが危険にさらされるので、都道府県知事または児童相談所長は、保護者に対して6か月間の接近禁止命令を出すことができ、つきまとい等を禁止できます。従前は保護者の意に反して家庭裁判所の承認を得て措置された児童の場合に限定されていましたが、今年4月2日に施行された改正児童虐待防止法により、一時保護や同意入所の場合にも対象を拡大して子どもの安全を守るようになりました(児童虐待防止法12条の4)。もちろんこの場合の親に対する接近禁止命令は、児童相談所が関与してくれる年齢の子どもが対象ですから、18歳を超えた子どもたちの問題は残ります。

一方、高齢者虐待防止法では、親に対する子からの暴力が問題となりますが、接近禁止命令の制度はもうけられていません。

こうしてみると、警察や児童相談所が関わっていない子どもたち(成人、未成年を問わず)が暴力的環境から避難した後に、安全を守っていく制度は、十分なものとはいえない状況です。保護命令の仕組みがなかった頃の配偶者間暴力の問題対応はまさに似たような状況でした。憔悴して相談に来られた被害者の方たちに法的手段による安全確保をはかるには、民事保全法による接近禁止仮処分の申立てをよく行っていたことを今でも覚えています。

先のコラムでも述べましたが、まだ話し合いの余地がある場合は、弁護士に防波堤役で交渉連絡窓口となってもらい距離をとる方法や、家庭裁判所での親子関係紛争調整調停が有効です。

しかし、身の危険を感じ、何かをされては手遅れという危険な事案の場合は、上記の保護命令の対象であればそれを利用し、対象外であれば民事保全法の接近禁止仮処分あるいは探索行為や迷惑行為禁止の仮処分の申立てによることになります。

次回は、接近禁止仮処分について触れていきます。

※ 本コラムは法律コラムの性質上、弁護士の守秘義務を前提に、事例はすべて想定事例にしており、特定の個人や事件に関する記述はありません。

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