親子の縁を切りたい② 安全確保
親子の縁を切りたい④ 親子間紛争調整調停
何とか無事に、暴力的環境から離れた当事者にとって、その後も安全な距離を取り続けることは大変な苦労があります。
いつ居場所を見つけ出されるかわからない、突然連れ戻しに来たり、押しかけてくるのではないか等々、不安は次から次へとわいてきます。
安全な距離を裁判所の力を借りて強い方法でとっていくのが、保護命令などの接近禁止命令です。DV防止法や児童虐待防止法に基づく接近禁止命令のほかで、親族間暴力の場合は、民事保全法の接近禁止仮処分の申立てが考えられます。
一方、いきなり強い形で距離をとるのではなく、話し合い、あるいは代理人を窓口として安心できる距離をとっていく方法も考えられます。
代理人弁護士を依頼して、交渉連絡窓口となってもらい、直接の連絡や接触を止めるものです。相手がこの距離を守ってくれる場合は、比較的長期間、安全な距離をとることができますし、また必要な連絡も代理人弁護士を介してとりあうことができます。縁を切りたいと思いつつも、一方で一定の信頼関係は残っているときに、この方法は有効と言えます。
また、弁護士に依頼しなくとも、家庭裁判所に話し合いの場をもうけてもらい、そこで親子間の安全な距離をとる話し合いを行うこともあります。話し合いで解決しようとする互いの信頼関係が残っている場合です。親子間紛争調整の調停として申立てを行います。
当事者同士だと感情的になったり、話し合いにならなかったりという場合でも、間に公平中立な調停委員に入ってもらうことにより、顔をあわせず話し合いにより、対立している問題の解決の道筋をつけていくことになります。
ただ、調停はあくまで話し合いですから、相手が理解して納得してくれなければ、安全な距離をとることはできません。また、相手が家庭裁判所での調停期日に出席してくれなければ話し合いの土俵すらできません。そこが難しいところです。
次回は、接近禁止命令について考えていきます。
※ 本コラムは法律コラムの性質上、弁護士の守秘義務を前提に、事例はすべて想定事例にしており、特定の個人や事件に関する記述はありません。