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親子の縁を切りたい③ 緊急保護

川﨑政宏

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テーマ:親子関係の法律相談

親子の縁を切りたい③ 緊急保護

親子の縁を切りたいという相談を受けて、法律上の親子の縁は切ることができませんという回答をすることが相談者に絶望感を与えてしまうことがあります。逃げることのできない絶望感と恐怖感は想像がつかないかもしれません。

暴力的環境から避難する際に、注意すべきことは安全を最優先にすることです。避難時に引き留めようとする側との間で殺傷事件となることが少なくないからです。虐待が発覚しないように外出させず更に激しい虐待が行われることもあります。

水面下で準備して遠くに避難する力がある人でも、警察の生活安全課には事前に相談をしておいた方がよいです。親族間暴力の被害相談窓口は警察の生活安全課であるとともに、捜索願の窓口も生活安全課だからです。万が一、避難時に不測の事態が生じた場合は、警察に介入してもらった方が安心です。事前相談しておけば、危険度に応じて特定電話登録を勧められますし(相談内容を警察が事前に把握して、登録された番号からの110番通報があれば、内容の聞き取りに時間を費やさずすぐに警察官が駆けつけてくれる仕組み)、捜索願不受理の申し出もしておくと安全です。

自力で避難先を準備できない方については、公的シェルター、民間シェルターがありますし、警察も被害者支援措置の一環として、公的シェルター等への橋渡しができるまでの間、宿泊施設の一時提供など緊急一時保護をしてもらえることもあります。

公的シェルターについては、年齢、適用法令ごとに異なります。

18歳までの子どもは児童相談所長の権限で一時保護できます。暴力親から引き離して安全を確保します(児童虐待防止法)。

子どもや親族からの暴力、虐待で保護を必要とする高齢者(65歳以上)については市町村長の権限で老人施設等への一時保護が行われます(高齢者虐待防止法)。

女性の場合、配偶者からの暴力を受けている場合の一時保護として各県の女性相談所が対応してくれますが、女性相談所の一時保護の対象はDV被害者だけでなく、ストーカー被害者や家庭関係の破綻、生活の困窮等正常な生活を営む上で困難な問題を有し、その問題を解決すべき機関が他にないために、現に保護、援助を必要とする状態にあると認められる者も対象とされているので(厚労省局長通知)、18歳より上の年齢で親からの暴力などで行き場がなく、家出中あるいは家出せざるを得ない状況の女性であれば、まず相談をお勧めしています。

経験上、一番難しいのが、自力で避難先を確保できるだけの経済的力がなかったり、知人・親族などの人間関係が乏しく、周囲に協力を求めにくい、10代後半から20代前半の方たちです。

児童相談所で一時保護され、児童養護施設に入所できた後でも、退所後に親からつきまとわれたり、金銭を要求されたりして、不安定な状況に戻ってしまう子もいます。

また、親元から自立しようとする際に、これまで払ってやってきた学費を返せと言われたり、育ててもらった恩を忘れたのかと金銭請求をされて困惑する20代の子もいます。

暴力的環境から安全に離れることは至難の業ですが、最寄りの警察署の生活安全課、児童相談所、女性相談所、犯罪被害者支援センター、弁護士などに相談しつつ、安全対策を講じたうえで、安全に離れることが大切です。

次回は安全に離れた後の安全な距離の取り方について触れていきます。

※本コラムは法律コラムの性質上、弁護士の守秘義務を前提に、事例はすべて想定事例にしており、特定の個人や事件に関する記述はありません。

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川﨑政宏
専門家

川﨑政宏(弁護士)

ももたろう第2法律事務所

ケースワーカーとしての長年の経験を生かし、相続や離婚など家庭内のトラブル解決に多く関わっています。特に、子どもの親権や面会交流、連れ去り・引き離しなど緊急案件への迅速解決には実績があります。

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