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【2026年9月版】AI戒名の是非~試してみた住職の私見~

若松慶隆

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AIの影響は寺院業界にも及んでおり、近年は「AI戒名」を巡る議論が仏教系専門誌や宗派機関紙で活発になっております。
AI戒名とは、人柄や略歴・趣味などを入力するとAIが戒名を考えてくれるというものです。
そのAI戒名に関する記事を読むに、現役僧侶の意見は「3つプラス1」にざっくり大別されていると感じます。
Ⓐ否定的意見
Ⓑ肯定的意見
Ⓒ中間的意見
Ⓓその他(論点は他にある)
現時点での私自身の意見を申しますと、「Ⓒ15%、Ⓓ85%」です。
「現時点で」としましたが題名に【2026年9月版】としたのは、AIは今後進化することと、僧侶及び世間のAI戒名に関する価値観も変わっていくであろうからです。
なぜ「条件付きⒸ15%、Ⓓ85%」なのか、AIに関する実態など、私の考えを以下にまとめます。

もくじ
1.AI戒名の賛否
2.中間的意見
3.論点は他にある《世間の目を取り入れること》
4.AI戒名現在地《試用》
5.今後の展望

1.AI戒名の賛否
■賛否の主な意見
《Ⓐ否定的意見例》
・師僧から弟子へ命名するという行為を端折るとは如何なものか
・AIで作った戒名には心がこもっていない
・宗教活動の放棄、僧侶の堕落

《Ⓑ肯定的意見例》
・便利なものはうまく使えば良い
・より豊富な発想が生まれる
・従来のやり方(漢字を調べる)と本質は変わらない

否定的意見は、戒名にAIを用いることの倫理観を問うものが多いですが、肯定派でも決して「AI丸投げ戒名」を支持している意見は見たことはありません。
「AIに使うことができるのはその前提となる知識があってこそ」とは戒名に関しても例に漏れずです(これは『AI戒名現在地』で後述します)。
そこでⒸ中間的意見が出て来ます。


2.中間的意見
例えば、
・○○(職業や趣味)を連想させる漢字をAIに挙げてもらう。
・AIに10個案を挙げてもらって、その中から最も相応しいものを考え抜く。
・挙げられた文字を抽出して組み合わせる。
こういう利用の仕方は「丸投げ」とは異なるものと私は思います。
と言いますのも、「漢和辞典」や「戒名辞典」「命名辞典」を用いて考えていたものをAIに代用した状態ですので、「調べる時間の短縮」という面だけでなく「新たな発想創出」という肯定的な捉え方もできます。
(長年やっているとどうしても住職によって使う字が偏る傾向があります)
言うなれば「AIに戒名を作らせるのか、住職が戒名を作るためにAIを使ったのか」の違いです。
あとは比重の問題。
AIに否定的な住職の中にも「1ミリでもAIを使うのは邪道」と言う人も居れば「それならアリでは!?」という人も居ると思います(私は後者です)。


3.論点は他にある《世間の目を取り入れること》
とある投稿文に私はハッとし、「そうだそうだ!」と深く共感しました。
その文章をザっとまとめると、
・坊さん同士の議論でしかなく、一般檀信徒の存在を置き去りにしている。
・AIの賛否よりまず必要なのは、正しい戒名の意義を世に問いただすこと。
・ただでさえ戒名への不信感を抱かれている中で、それができなければますます寺離れが加速するのではないか。
といった趣旨のものでした。
完全同意ですし、いろいろ膨らませて考えることがありました。

まず現時点で言えば、いろんな業界でAIは身近な存在になっている一方、戒名をAIに作らせることについては、まだ抵抗感を持つ方が多いのではないでしょうか。もしも私が喪主さんに
「この戒名、AIに作ってもらったんですよ」
と言ったら、どう思われるかということです。
私は過去に、
【なぜ起こる!?】戒名なしでお葬式してもらえますか【戒名不要論その1】
【一住職が考える】戒名にはなぜランクがあるか【戒名不要論その2】
【続・戒名論】よくある戒名トラブル【知っておいて頂きたい】
という文章をここで投稿しました。
私が言いたいことは、
➀戒名とは師僧(菩提寺住職)から弟子(檀信徒)に仏門に入った証として授けられる、仏教徒としての名前である。
➁戒名の格については、単純に「高い戒名=お寺に多くお金を払った人」という意味ではなく、菩提寺との関係やこれまでの貢献なども含めて考えるものである。
③最も文字数の少ない戒名であっても、一律に高額な戒名料を求める寺院があることについては問題があると考えている。
なのですが実態は、
➀´そのような認識はほぼ持たれていない。亡くなったら付くものと思われている。なぜ俗名と別の名前を付けるのか必要性に疑問を持つ方も居る。
➁´時給〇万円の超ラクな仕事と揶揄される点。正しくはお寺(法人)に計上なので戒名料を納めて頂くことは菩提寺(他檀信徒全体)への御布施・・・なのですが、手渡す金封がその住職の懐に行っていると思われている方が多数。この認識のもと、1文字増えるだけでプラス〇万円と考えると不信感を持たれても仕方ない。
③´「戒名=戒名料が要る=高額」のイメージを持たれがち。最も短い戒名なら実質無料~お気持ちという「逃げ道」を用意しているお寺が当地域ではほとんどだが、一部には問答無用で高額設定だったり、ご先祖からの「ランク下げ」を応じないお寺が存在し、疑問と不満の声が出ている。

ここにAIの追加です。
疑問や不信感はさらに高まるでしょう。
坊さん同士の議論は「コップの中の嵐」でしかないのです。
やはりますます戒名の本来の意義を檀信徒にご理解していただけるよう教化に励まなければならないと感じます。また、お金の話をすると嫌がられそう、と我々僧侶は思いがちですが逆に、戒名に関してはお金の流れも説明したほうが納得していただきやすいのではないかとも思います。
何より世間一般の檀信徒さまがどう思われているかに軸足をおくべきと考えます。


4.AI戒名現在地《試用》
さてここでAI戒名の現在地について、あえて「丸投げ」するとどうなるかお話します。
「鈴木信子(仮名)さんの戒名を『○○○○信女』で考えてください」
とAIに投げかけると、
「慈徳妙信信女」
と出て来ます。
これを見ての私の感想。

まず、俗名(信子)の字を活かしたいのは分かりますが、「信信」と同じ字が続くのは私なら絶対避けます。もっと言うと「シンシン」と同じ音が続くこと、そして六文字の中で「シン」が二回使われることもなるべく避けます。
私なら「信女」に信子の信は使われていると見なします。

次に「慈」「徳」「妙」について。
どれも戒名として相応しい漢字ですが「汎用性がすごく高い字」です。
俗名以外の情報を送ってないので当然と言えば当然ですが、「誰にでも使える字」が並ぶことになります。

他にもこれらの字が、鈴木家のご先祖に使われているか否か、使われているならどう使われているか、も考慮しなければならない点です。
例えば先に亡くなったご主人(鈴木太郎さん仮)の戒名が慈徳隆道信士(これもAI作成)なら、慈or徳の一字を夫婦で揃えるのは良いですが、○○○○の四字のうち慈徳二字も使うのは私なら避けます。

こういった辺りが「AIに使うことができるのはその前提となる知識があってこそ」という所以です。
こういうことを考えていくと、AIに丸投げするより自分の頭で考える方がよっぽど速そうです。
ただ、こんなことを言うのも無意味だと思っています。
なぜならAIは進化するからです。
結局戒名とAIの関係は、どういう風にどの程度利用するのか、利用すること自体の是非や倫理観、そして世間一般からどういう目で見られるか、を慎重に考えながら向き合っていくしかないと思います。


5.今後の展望
個人的には寺院業界内で「お坊さんたるものAIを使ってはダメ」という意見はいずれ消えると思っています。と言うか使わざるを得ない時代が来るかと…。
新しい技術が登場すると、「昔の方法を使わなければ人間がダメになる」という議論は、これまでも繰り返されてきました(そろばん→電卓etc)。ただし戒名とAIについては正直どんな価値観になるか想像できません…。
寺院業界内での価値観の変容よりも、世間が戒名とAIの関係をどう受け止めるかが特に分からないです。

ただ「AIで戒名が作れる=自分で自分の戒名を作ろう」という方が増えるのではないかと思ったりします。
そこで重要なのが先に述べた戒名の本質。
仮に本人がAIを使って非常に良い戒名を作れたとしても、(授けるのはあくまで住職なので)それを住職が「これでいいでしょう」と形式的に追認するだけなら、戒名を授けるという行為の意味は薄れてしまいます。また、本人は良いと思っていても住職から見て「ここはこう直したほうが…」という場合もあります。
そこをまずご理解いただいてからでないと、
「なぜ一般人でも作れるものを住職に認めてもらってお金まで払わないといけないのか」
などという声がますます出そうです。

そうならないように戒名授与が形骸化しないよう、各寺院の努力が求められる。その真価は10年後くらいには出ていると思います。
ここまで読んでくださった方にはありがとうございました。ぜひ戒名に関して正しい知識を持っていただければ幸いです。
日進月歩のAI、今後もウォッチしてまいります。

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若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

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