素材を活かすも殺すもプロ次第
プロとは言うけれど…
「プロのなんだから…」「プロに任せれば…」「プロのくせに…」って思って『プロ』と呼ばれたり、自称してる人に過度な期待をするのはちょっと危険。
広辞苑で調べてみると…
職業的、専門的、プロでありー
さらに「専門技能を持って、それによって金銭的収入を得る者」と記されている。
まさにこの通りで、自分の持ってる能力でメシが食えてるってこと。
言い換えると無能なヤツに仕事なんか頼むわけないし、そもそも頼まれない。
自分の能力に金銭的対価を見出し、報酬を受け取る。
なので、同じ仕事を任せてもコイツなら「素晴らしい!」アイツなら「まぁまぁだな…」となることがあるのはそのせい。
だけど、違う仕事を任せてみるとコイツとアイツの評価が入れ替わることもある。
それってどういうこと?
例えば、料理人。
もう「料理人」と言うワードだけで、料理のプロと捉えられてもおかしくはない。
料理と言っても幅広い。
和食に洋食。それに中華。アジアン、エスニック、多国籍料理…。
それらを組み合わせた折衷料理だってある。
「オヤジ!ちょっと旨いうどん作ってくれよっ!」
と、この道30年のラーメン屋の店主に頼んでみてもそりゃ、無理な話。
似てるようで、全然違う。
ま、少し乱暴ではあるけれど、そういう事。
ラーメンとうどん。
違いが分かりやすかったから例として挙げてみたけれど、それじゃ今度は、俺たちのビーフ業界。
これは線引きが色々とムズかしい…。
使う部位は同じなんだけど…
焼き肉屋とステーキ屋とすき焼き屋。
まずはロース肉。
焼き肉屋…上ロース、並ロース
ステーキ屋…○○産サーロインステーキ
すき焼き屋…○○牛すき焼き鍋 (松)
大概、こんなメニュー構成。
ロースはとてもシンプルで、どの飲食店でもメニューとして扱いやすい。
強いて言うなら、肉の厚みが違うだけ。
分厚く切ればステーキ、薄く切ればすき焼き用。
かと言って、この法則になぞらえなくってもいい。
分厚く切ってサイコロ状にし、焼き肉のタレにつけて食べてもそれはそれで旨い。
そもそも大手牛丼チェーンの「焼き肉丼」の肉って薄切りでしょ?
言われて気付く程度で、違和感なく食べられる。
(↑は厚さの事。ちなみに使用してる部位はバラ肉)
それが、みんな大好きロース肉。
それじゃ、カタロースはどうか?
このカタロース肉を扱えるかどうかで、プロのレベルのものさしで測る事ができる。
焼き肉屋…カタロース、ザブトン
ステーキ屋…カタロースステーキ、ザブトンステーキ
すき焼き屋…○○牛すき焼き鍋 (松)
最近、焼き肉屋で見かけるようになった『ザブトン』という部位。
このザブトンという部位はカタロースの一部。
焼き肉では派手な見た目で、とにかく柔らかい。
なので、よくメニューの「希少部位」の一つとして、メニューのトップに取り上げられやすい。
ステーキ屋ではあまり…と言うか、メニューとして出してる店は俺は見たことない。
逆に、もしカタロースを提供するステーキ屋があれば、ビーフを良く知ってて、プロとしてのレベルはとても高いと言えるでしょう。
( ↑ バラしたカタロース。右下がザブトン)
すき焼き屋は、薄く切って提供するのが定番。
という事で、メニュー構成一つとってもその店のレベルが分かる。
ただ実際には、シロウトには判断が難しい。
視点を変えれば、メニュー表を豪華に作っていたり、見せ方がとても上手だと、全ての肉が旨そうに見える。
視覚でその店を味わってるワケ。
かと言って俺は、別にそれは悪いとは思っていない。
要するにお客が、満足すればいいんじゃないかな。
もちろん店舗として合法的な運営が、前提ではありますけど。
お客を満足させるプロ。
アリです。
◆
俺もエラそうに言ってますが、ビーフの細部まで知り尽くしてるわけじゃないです。
まだまだ、知らないことだらけ。
どの業界、どの商品、どのサービスにおいても奥は深い。
突き詰めれば、突き詰めるほど、それはまるで光さえ届かない海底のよう。底が見えんのですよ。
しかし必ずどこかに、その海底に足を着く事が出来る人はいるんです。
そういう人はもうプロと言うのは失礼で、バケモン?と呼ぶのがふさわしんじゃないんでしょうか。
俺はそう思ってます。
…
…
…
オオタニサーン!
ね?
いるでしょ。
想像をはるかに超えるバケモンが。