障害年金の不支給決定通知が届いたら不服申し立てを
障害年金は公的年金のひとつで、病気やケガが原因で働くことが困難になった方を支援する制度です。
これには精神の障害も含まれます。
このことをご存知ない方もいらっしゃいますが、障害年金の受給者を傷病別の割合で見ると、精神障害の受給割合が突出して多いことがわかります。
うつ病、躁うつ病、統合失調症、てんかん、認知症、若年性アルツハイマー、頭部外傷後遺症、発達障害、アスペルガー症候群、知的障害など、さまざまな精神障害が該当します。今回は、そのなかでも特に多くを占めるうつ病について、請求する場合のポイントをお伝えいたします。
うつ病とはどのような病気か
厚生労働省の患者調査によれば、日本の気分障害(うつ病・躁うつ病)患者数は1996年に43.3万人であったのが、2008年には104.1万人と2倍以上になっており、現代社会に急増している病気といえます。
私たちは誰でも日常の出来事が原因で、沈んだ気持ちになったり、夜眠れなくなったりすることがあります。
このように誰もが経験する憂鬱(ゆううつ)と、うつ病はどこが違うのかといえば、それは症状の持続時間と強さです。
うつ病になると原因が解決しても落ち込んだままであったり、これといった理由もなく憂鬱な状態になったり、そしてそのような状態が長く続きます。
興味や喜びの喪失、思考力、集中力の低下など、日常生活や仕事に影響するほどの強い症状に悩まされ、大事な仕事があるのに休んでしまう、食べ物がないのに買いに行かない、入浴すらできないというような状態になります。
その原因はまだまだ解明されていませんが、脳の情報伝達物質の減少、もともとの性質、ストレスなど、さまざまな要因が重なって発病すると考えられています。
時には休職や退職を余儀なくされ、通院や投薬の費用もかかり、経済的に行き詰ってしまうこともあります。
うつ病の方も受給要件を満たせば障害年金を受給することができますので、以下のことを参考に検討してみてください。
気分障害(うつ病・躁うつ病)の認定基準
障害年金の対象となる障害状態に該当しているかどうかは、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」に定められおり、その全文は日本年金機構のホームページで公開されています。
この認定基準には、全体的な基準と、それぞれの病気ごとの基準があります。まず全体の基準を理解していたほうが、個々の基準も理解しやすいと思いますので、順番にご説明いたします。
各等級の認定基準は次の通りです。
■1級
誰かの介助がなければ、日常生活が成り立たない状態。活動はベッド周辺に限られるもの。
■2級
必ずしも介助は必要でないものの、日常生活は困難で、労働による収入を得ることができない状態。
■3級
労働に制限を受けたり、労働に著しい制限を加えたりすることを必要とするもの。つまり労働が満足にできない状態が該当します。
さらに精神の障害については、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活等の状況により、総合的に認定するとされています。
次に気分障害の認定基準は次のように定められています。
■1級
「高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の病相期があり、かつこれが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の介護が必要なもの」
■2級
「気分、意欲、行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したりまたはひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの」
■3級
「気分、意欲、行動の障害及び思考障害の病相期があり、その症状は著しくないが、これが持続したりまたは繰り返し、労働が制限を受けるもの」
うつ病は認定を受けるのが難しい?
障害年金の初診日は紛らわしい場合が多いのですが、特に精神障害は複雑です。
うつ病をはじめとする精神障害の場合、最初は不眠などの不調で内科を受診し、そこで睡眠導入剤などを処方され、その後心療内科などを受診して病名が確定したとしても、最初にかかった内科が初診日とみなされる場合が多々あります。
また、障害年金の審査において、医師の診断書はもっとも重要な資料です。特に精神の障害は肢体の障害と異なり、病状を検査の数値などで表すことができません。
そのため、診断書では日常生活能力を判定するために以下の項目が問われます。
①適切な食事
②身辺の清潔保持
③金銭管理と買い物
④通院と服薬
⑤他人との意思伝達及び対人関係
⑥身辺の安全保持及び危機対応
⑦社会性
主治医は診断書を作成するに当たって、本人から日常生活状況を聞き書類に記載します。本人が一人で受診した場合、たとえば周りのサポートを受けないと何もできないのに、「食事をしています」「入浴しています」としっかり答えてしまうと、主治医は生活能力があると判断するでしょう。
本人が困難な状態をうまく伝えることができればいいのですが、それができない場合は、支援者が同席し、説明をするのが望ましいといえます。