傷が付いても大丈夫。自分で復元する天然木パワー
数年前、ある大きな企業の案件で、普段は木で作ることのない物を
木材を組み合わせて作るというプロジェクトがあり、
当社が参加しました。
越路の長谷川邸や関川の渡辺邸をはじめ、重要文化財の修復工事などでも木材を提供してきた、これまでの実績が認められ
「プロジェクトに協力して欲しい」と声がかかったのです。
プロジェクトは、東北の木工業者と協力しながら、依頼の製品を作る計画で、
使用する木材を当社で用意して
東北の木工業者が組み立てするという流れで完成させる手はずでした。
木材を加工して、東北の木工会社へ送る際、
「木材が安定するまで、寝かせてから木組みをするように」と、注意を添えて納品しました。
「半月から1カ月間は木材を寝かせる事」と念を押しておいたのです。
ところが、発注元の都合のためか「時間がない」とのことで、
「機械で測定したところ十分に乾燥していたから大丈夫」と言って
私の忠告よりも早く、木組みをしてしまったのです。
案の定、1ヶ月経った頃に
「組み上げた製品に歪みが出てきた」と連絡がありました。
当たり前のことなのです。
木は、加工する前にどれだけしっかりと乾燥させていても
一度鉋(かんな)をかけると、歪みが出てくるものなのです。
私たちは、これを「木が動く」と呼び、当たり前の常識です。
木が安定するまで、寝かせてやらなければいけないのです。
それで納品の際に念を押して忠告していたわけです。
木の性質を無視して、人間の都合で加工を進めてしまうと
歪みが出てしまうのは当たり前の話なのです。
普段、木材を扱っているプロですら、
そのことを忘れてしまっている状況に愕然としました。