傷が付いても大丈夫。自分で復元する天然木パワー
2階の天井を見てみると、竿縁と板巾の間隔を均等にしてあります。
実はこれ、今と昔では、間隔の取り方が違うんです。
今は端っこの板を少し狭くするのですが、昔は均等、もしくは端っこは少しだけ広く作ることが多くありました。それは少しだけ広いと安心できることと、真ん中に立ったときに等間隔に見えるようにするためです。住む人がどんな風に天井を見るかを考えて設計されていたのですね。
ちなみに2階の天井は低く作られています。それはあまりお金をかけられない下町の民家らから。天井の高さを低くすることで、建物に使う材料の量や大工の手間を少なくし、工賃を安く済ませたのです。加えて、天井が低いと冬に暖房で温める空間が狭くなり、暖房経費が安く済むというメリットもあります。
次は2階の床板を見てみましょう。こちらも1階と同じく、床板の長さ3尺は垂木の間隔のちょうど2倍。ぴったりの長さで作られています。しかも、使っているのは、強度に自信のある新潟県産の杉。150年以上経った今でもたわみや歪みは一切ありません。もう少し詳しく見てみると、床板に山の中で使用された移動式丸ノコで挽いた跡が見つかりました。当時どのようにして造ったかが見える貴重な資料です。
さらに2階の縁の桁にも、新潟県産の杉も木材が使われていました。年輪が詰まった強度のある杉を使うことで天井を支えているのです。
このように昔の家を見てみると、いたるところに工夫が見られます。いかに質を落とさずに工賃を抑えられるか、長く保つためには何が必要なのか、住んでいる人が心地よい家とはどんな家か。細部までこだわって考えて造られた家だということが分かります。ぜひ古い家を見つけたときはお伝えした内容を頭に思い浮かべながら、見学してみてください。