フィラリア症(犬糸状虫症)予防について②。実は猫ちゃんも要注意ですよ。
長崎市内の新型コロナウイルス感染症患者の初確認により、長崎市の狂犬病集合注射が中止となりました。世の中がこの恐ろしい感染症の収束の見通しがたたない不安な時期を過ごしています。
(長崎市の狂犬病集合注射の中止に伴う当院の対応について)
収束の可能性の一つに集団免疫の獲得という言葉を聞いたことがあるでしょうか。今回はその集団免疫と狂犬病予防注射の必要性について書きたいと思います。
診察をしていて、「狂犬病注射は必ず接種しなければいけないのでしょうか?」ということを、本当によく聞かれます。
まず上記の質問の答えですが、「必ず接種してください。」
現状本国では50年狂犬病は確認されておりませんが、近隣諸国(中国・北朝鮮・フィリピン・他)では今現在も数百人、数千人単位で毎年人が亡くなっています。
(厚生労働省ホームページより)
(クリックで拡大:青色が発生していない国(清浄国)、オレンジが年間100人未満、斜線が100人以上(中国2635人、フィリピン592人))
狂犬病予防注射が必要な理由は、人が感染し発症すると有効な治療法はなく、人はほぼ100%死亡します。
感染する動物は犬だけではありません。ネコ、スカンク、アライグマ、コウモリ、その他からも感染します。上の図の発生状況をみると日本は数少ない清浄国ですが、これは検疫所が輸入動物の検疫を行うことで狂犬病の侵入を未然に防いでいることも大きいですが、その他には本国において最も人と接触・感染の原因となる可能性が高いペットのわんちゃんに対して、「狂犬病予防法によって集団免疫を獲得する目的で予防注射を接種していることにより発生が制限されている」といったこともあげられます。
集団免疫は奇しくも今現在新型コロナウイルス感染症によってその言葉と意味合いが一般の方にも伝わりはじめていますが、集団免疫とは 「流行を終息させるために、もし人口の60-70%の人にその疾患にたいする免疫力があれば、1人のひとから1人しか感染者を出すことができないため、やがて流行が終息していくことになる 」というものです。
そのために狂犬病予防注射は絶対に必要なのです。
しかしながら本国の狂犬病予防注射の摂取率は厚生労働省によると平成5年には届け出のあった飼い犬の99%以上が予防注射を接種していましたが、平成21年では74.3%の摂取率に減少し、また犬の登録頭数に基づく日本獣医師会の推計では41.5%の摂取率しかないと予想されています。その後のペットの輸入の増加などを考慮すると70%の集団免疫は現在保たれていない恐れがあるといわれています。
輸入動物は検疫所によって、その動物の種類や輸入元の国また狂犬病予防注射の接種履歴などにより12時間以内から、最大で180日の係留を行うことによって狂犬病の侵入を未然に防ぐ取り組みを行っています。本国においてもわんちゃん以外の動物を輸出入をする場合も狂犬病予防注射を行っています。当院でも海外に行くネコちゃんに狂犬病予防接種を行うこともあります。しかしながら近年密輸動物の増加や他国からの船舶物資にネコやコウモリなどの侵入の可能性もあると考えられています。
もし仮に本国で狂犬病の発生が認められた場合、大変な事態になることが予想されます。
動物の感染症は決して珍しいものではありません。近年、鳥インフルエンザや豚コレラや口蹄疫などはニュースでみることはあるかと思いますが、これらは基本的には人に感染するものではありません(希にあります)が、2000年初頭に発生した牛海綿状脳症(BSE)、いわゆる狂牛病の際は人に感染する病気ということで、アメリカからの輸入牛肉の停止措置など大きな社会問題になったことは記憶に新しいことかと思います。
本国における狂犬病の発生が認められた際は、BSEの発症時と同じかもしかするとより大きな社会問題になる可能性があります。
なぜなら人が感染すると発症後の有効な治療法はなく、ほぼ100%死亡するという恐ろしい病気だからです。
我が国ではペットを飼っている人よりも、飼っていない人の人数のほうが圧倒的に多いです。昨今、新型コロナウイルス感染症に感染しているかもしれないということで、人と人との争いが起こっています。もし人が感染したらほぼ100%死んでしまう病気のリスクをもった動物が近所にいた場合、未接種の動物は殺処分も含めて何らかの措置が叫ばれることは想像に難くないと考えます。
上にあげた発生状況の地図が新型コロナウイルス感染症のものだったとしたら、どのようにお感じになるでしょうか。狂犬病ワクチン接種は不要でしょうか?
長くなってしまいましたが、わんちゃんの飼い主様はわんちゃんのためにも人のためにも必ず狂犬病予防注射の接種を行いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(補足)
持病があるわんちゃんや高齢のわんちゃんは、予防注射を接種することで健康を害する可能性があると獣医師が判断した場合は、獣医師が猶予証明書を登録の市区町村に提出することで接種を免除することはできます。かかりつけの動物病院で相談をしましょう。