膝の手術あれこれ。関節鏡？人工関節？骨切り？何がいいの？のお話

膝の手術あれこれ。関節鏡？人工関節？骨切り？何がいいの？のお話

お膝の痛みに対する手術治療は、大きく分けて1,膝関節鏡　2,骨切り術　3,半分だけの人工関節（UKA）4,全置換術（TKA）などがあります。どれを選ぶかは、年齢、性別、職業、スポーツ継続希望の有無、体重、変形の程度で決まります。どの手術がいいのかは一概には言えませんが、それぞれの手術について説明いたします。

1,　膝関節鏡手術

膝半月板損傷由来の痛みに対して適応となります。以前は「痛みの原因になるような半月板なんか邪魔だから全部切ってしまえ！」というのが常識でした。しかし半月板切除後の急速な変形進行が問題となり、現在では「save the meniscus(半月板を残そう)」というのが膝関節外科医のなかで合言葉になっています。関節鏡手術は7mm程度の傷2つで可能となります。そのため、膝手術のなかで最も侵襲の少ない手術となります。カメラで膝の内部を観察し、痛みの原因となっている半月板を修復します。修復は関節鏡専用の特殊な縫合糸を使用して行います。どうしても修復できないボロボロになってしまった半月板は泣く泣く切除します。その場合は術後のフォローアップが非常に大事になります。この手術のメリットは傷が小さいことですが、デメリットは松葉杖使用期間が1ヶ月程度必要になること、50歳以上の修復術は成績が劣ることなどが挙げられます。ですので、よい適応としては50歳以下の半月板損傷の患者さんかと考えています。

2,　骨切り術(HTO：高位脛骨骨切り術)

O脚変形による膝痛で、まだまだ重労働したい、マラソンなど人工関節ではできないようなスポーツを継続したい、靭帯損傷や外側の半月板損傷がないという方が適応になります。10cm程度の傷で、脛骨の内側を骨切りしO脚をX脚に矯正するという手術です。骨を骨折させて矯正しプレートとスクリューで止めるという、言葉だけだと怖そうな手術になります。メリットは自分の骨であるため、労働やスポーツに制限がないことです。人工関節ではお勧めできない、マラソン、サッカー、バスケットなど高衝撃なスポーツでも制限はありません。デメリットはX脚になるという外見の問題、将来的に人工関節手術が必要になってしまう可能性、術後2年程度でプレートの抜去を勧められるので最低2回手術が必要になることです。1°単位の微調整が必要な高度な手術ですので、経験豊富な膝関節専門医に執刀してもらうことをお勧めします。

3,　半分だけの人工関節（UKA）

　　　　　　　　　　　　　ロボット支援UKAトレーニング中です

主に傷んでしまった内側の半分だけ人工関節に交換しようとする手術です。最近になって、人工軟骨（ポリエチレン）の機能向上、手術技術の向上などもあり、全国的にも手術件数が増加しています。全置換術と比較し傷は半分程度で、さらに靭帯は温存されるので、侵襲が少なく自然な膝の動きも温存されます。その分入院期間も短く満足度も非常に高い手術です。デメリットは肥満体重の方にはお勧めできないことや、将来の再手術率が全置換術よりも10%程度高いことが挙げられます。人工関節の設置角度と膝のテンションのバランスが命の手術ですので、これも非常に繊細な手術といえます。当院では2022年11月からUKA専用の手術支援ロボットを導入する予定で、1mm単位の手術に対応できるようにします。

4,　全置換術（TKA）

全部取り替えます手術。（コラム人工膝関節手術のお話参照https://mbp-japan.com/miyazaki/tachibana/column/5105670/) スポーツや仕事以外の適応はすべて網羅し、最も手術成績が安定しています。当院では2021年11月よりロボット支援TKAを導入し、それ以来安定した設置角度が実現できています。デメリットは、膝の手術のなかで最も侵襲が高いこと。やはり機械の膝なので自然な膝ではないこと。膝の可動域が悪くなることなどです。

どの手術を選ぶか？

通院している整形外科のドクターに相談しましょう。お勧めの手術を案内してくれます。もちろんそのドクターの得意な手術というものがあります。いろいろなドクターの意見を聞くことが大事になります。