生壁色(なまかべいろ)
おはようモーニング
今日の日本の伝統色は蘇芳色です。
蘇芳色とは、黒みを帯びた赤色のことで、『蘇方色』『蘇枋色』とも書きます。
蘇芳とは、インドやビルマなどに生育するマメ科の植物です。
染料となる植物の名前で、蘇芳の芯にある色素を明礬(みょうばん)や灰汁を使って発色させたものです。
明礬焙煎では赤に、灰汁で赤紫に、鉄では暗紫になります。
今昔物語では凝固しかけた血液の表現にも使われています。
江戸時代には蘇芳染めは、似紅(にせべに)や似紫(にせむらさき)など、本紅や本紫の代用品を作るのにも利用されます。
JISの色彩規格では「くすんだ赤」とされています。
蘇芳は、正倉院には薬物として保存されました。
また、これで染められた和紙もあり、蘇芳染の木箱も収蔵されています。
鎌倉時代の終わり頃になると、琉球との貿易によっても盛んに輸入されました。
桃山から江戸時代の能装束や小袖の染色にも多く用いられています。
ただ、「蘇芳の醒め色」という言葉があるように、この染料で染めた色は褪せやすく、現在まで遺されている染織品は、ほとんど茶色の変色している状態です。
四季の移ろいの中に、美しさを見出した日本の伝統色。
歴史と歩んできた繊細な色調、自然から生まれた色名。
それらを、楽しんでみてはいかがでしょうか!