塾講師のやる気の源とは?(その14)
ちょっと緊張しながら、
こちらに向かって歩いてくる。
その生徒は高3のIちゃん。
今日は推薦合格の発表日だった。
30年間この仕事をしているので、
(独立前も含めば34年間)
こういうときは聞かなくても、
本当は分かっているのだが…。
Iちゃんが私の机の前に来た。
別室で学習した内容のチェックを、
いちいち受けないといけないから。
(高校生に課せられている)
北斗塾では、
自立型個別学習の1つの動作として、
学習を1項目するたびに、
担当の講師か、
塾長である私か、
いずれかの確認サインがいる。
そういうルール。
会社での書類で言うところの、
「確認印」を文書に押すのに似ている。
さて、Iちゃん。
うっすらと笑みを浮かべている。
こちらはよく分かっていないふりを、
自然な感じでしつつも質問をする。
「今日の(合格)発表はどうだった?」
「…(ためて)…合格しましたっ!!」
「おおっ、良かったね~~」
「はいっ!(最大級の笑顔)」
というわけでIちゃんは合格した。
初めて塾の話を聞きに来た時のこと。
(今年の高3の春)
その後悩みが大きくなって家族会議。
それから、
「ちょっとご相談があります…」
という親御さんからの電話があって、
お父さんといっしょに面談をしたとき。
大粒の涙を流して反省をしたあのときの面談。
(横にいたお父さんも沈痛な表情だった)
もっと早くに勉強を開始するべきだったよね。
でも気が付いた時が「1番早い」タイミング。
間に合わないかもしれないけれど、
そこから受験に向けて走らなければいけない。
ダメかもしれないけれど、
それが走らない理由にはならない。
(走らなくなる生徒は…たくさんいるが)
※自塾の生徒以外に
持ち前の明るさがあるIちゃん。
いつも笑顔を絶やさなかったIちゃん。
そういう風に育ててきたご両親。
親御さんは家庭内の雰囲気づくりを、
しっかりとやってきたのだろう。
私はいつもそう感じていた。
推薦入試は「面接」と「小論文」。
面接は高確率で大丈夫のはず。
勝負は「小論文」だった。
学校で指導を受けてきたはずの小論文を、
土壇場で私が修正することを提案。
それを信じて、
練習してきた小論文と違う型で最終調整。
賭けだった。
本人もそれは分かっていた上で、
私の提案に乗った。
怖かっただろう。
試験直前の大幅な変更だったから。
だが個人的に言わせてもらうと、
学校で指導を受けていた小論文の出来では、
危なかったはず。
最後に必要なものは、
勇気と決断だった。