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コラム
塾長の考え(私大医学部受験)⑨
2023年4月8日
浪人することは勇気がいる。
初めて浪人生を指導したのは、
私が23歳で独立直後だった。
そう塾長1年目である。
近所の高3生のBくんが受験に失敗。
私の母親が近所付き合いのあった、
Bくんのお母さんに声をかけたのだ。
その縁で来たのがBくん。
まじめで普通に学習を頑張る生徒。
簡単な指導以外はほとんど自習。
簡単な指導とは質問に答えるだけ。
特にプランも立てなかった。
(当時の私にその技術がなかった)
それでも1年後には広島大学に合格した。
「合格、おめでとう!」
ハッピーな結末で終了。
要するに、
Bくんが単に優秀な生徒であって、
勝手に勉強して勝手に合格していく。
たったそれだけのことだった。
ほとんどの予備校はこれをやっているな、
そう確信したのはそれから13年後のこと。
成績のいい生徒にはドンドン割引の金額を、
お母さんたちに伝えては焦らせる。
「今だけですよ」と。
「寮がなくなっては大変ですよ」と。
「〇〇割ですよ、特別なんですよ」と。
予備校入学後どれだけ生徒に関心を持つか。
それが長期的指導には大事なのに、
生徒を入れるだけ入れて一安心。
あとは…授業初日を迎えるだけ。
その日が過ぎればもう返金はないから。
4月の後半や5月の半ばになって、
授業が全然わからない生徒たちから、
「(予備校を)辞めたいです!」
そう言われても、
「返金はできませんよ!」
そう答えることができるのは、
予備校授業初日の1時間目のチャイムが、
鳴り終わった後から。
「え、何でですか?」
「予備校は1年契約だからです!」
「え~、塾と違うの!?」
「うちは塾ではありません!」
そんなやりとりがあり、
ある予備校の職員の話によると、
「それ(チャイム)までが勝負ですよ」
そういう話を聞いて驚いたことが、
今となっては懐かしい。
予備校はあくまでも専門学校。
大学入試というハイレベルの問題を、
どうやって解くのか、
その解法をレクチャーするところ。
講師が1人で生徒は80~130人程度。
校舎の環境によって定員は違うが、
紛れもない集団授業。
それも高校とは比較にならないほどの、
大集団授業。
元々成績のいい生徒であれば、
1年後に望むような結果が手に入るだろう。
しかし、基礎学力のない生徒は?
そうやって経験を積んで、
親と子は賢くなっていくしかない。
それを3年間も繰り返した。
それがHKちゃんだ。
彼女が来てからというものの、
彼女が信じていた予備校の常識を、
ことごとく覆していった。
「え、何で?」
「あ、そうか。なるほど」
「え、どうしてですか?」
「あ、そういうことだったんですね」
「え、おかしくないですか?」
「あ、おかしいのはこっちだったんですね」
「え、これでいんですか?」
「あ、これじゃないといけないですね」
「え、それはさすがに…」
「あ、そうなんだ…知らなかった」
こんなやり取りが本当に多かった。
(続く)
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