塾長の考え(自立型の指導)③
早速4浪目の勉強を開始することになった。
名前はHKちゃんだ。
「まずは何からしたらいいですか?」
「これだよ」
「え、あの…私これを解くんですか?」
「言っていなかったね、これからだよ」
「大学受験ですけど、これは間違いでは?」
「いや、間違いではないよ」
そこにあるのは中学3年生の問題だ。
いわゆる高校受験用の問題である。
間違って渡されたと思ったのだが、
これが北斗塾の指導の定跡なのだ。
中学生の問題を解けば、それだけでわかる。
その生徒のこれまでの学習の歴史の全体像が。
大学入試のレベルで考えれば、
基礎のキソとは実は中学生の問題だ。
もちろん大学受験をする生徒は、
普通は高校3年生以上であるため、
「こんな問題やってられないよ!」
そういう生徒も過去に数人いた。
しかし、そういう生徒でも満点は取れない。
「こんな問題!」とか、
「できますよ、このくらい!」と言っても、
試験をしてみれば、結局は普通に失点をする。
そこにウィルスが隠れ潜んでいるのである。
さてHKちゃんの結果が出てきた。
やはり…問題点が浮かび上がってきた。
この基礎のキソをほとんどの予備校は、
押さえない。
面倒だし教材もないし、
何よりも予備校講師は中学生の問題が、
簡単だからなのか、やりたがらない、
というかバカにしている。
そんなものやる必要はないと。
ここにお宝が眠っているのに。
うちの講師もこの手順は把握していて、
スムーズな指導の流れができており、
特に今年からは予備校生だけでなく、
高校生が入塾してくるときには必須事項と、
最近決定した。
今年の大学入試対策時にも、
嫌というほど中学生の内容でつまづく、
そんな高3生がいたからだ。
彼ら彼女らはその時期(中3)には、
どこかしらの学習塾に通っていて、
授業を聴いたり講習や特訓を受けたりして、
仕上がった状態で高校受験をしている。
そのはずなのだが、
おもしろいように覚えていないことが多く、
また当時に身に付けていなければならない、
解法技術や定理などそのほとんどが、
うろ覚えであり記憶から消えている。
この学力の状態で高校受験に合格して、
この学力の状態で高校の授業を受けていく。
そんなことを毎日繰り返していけば、
少しずつわからないところが積もり、
やがてはあらゆる部分にウィルスが、
発生していく。
何のウィルスかというと、
新しいことを学ぼうとするときに、
理解の邪魔をするウィルスだ。
これが増殖していき、
日々の学校の授業の完全理解を妨げる。
その繰り返しが「自己」を創り上げる。
無意識に創られた自己のイメージが、
着々と出来上がっていく。
そこに追い打ちをかけるように周りが、
ほぼ正確に思ったままの評価を下し、
その評価を口に出して本人に告げる。
これが自己評価となり、
いよいよ「自己認識」の完成となる。
これが大学受験本番でも「悪さ」をする。
(続く)