塾長の考え(理想と現実)①
さて、Aくんの小論文対策は進む。
基本の型を学びさっそく書いてみる。
「どうっすか、これ」
「いいね」
「受かりますか?」
「この小論で?」
「はい」
「ダメだね」
「(ガクっ!)何でですか?」
「まだ50点くらいかな」
「いや、習った通りに書いてますけどっ」
「…あのね、型通りに書いて初めて1歩目」
「これじゃダメなんすか?」
「ここから進化していけばいい」
「で、どこが悪いんすか」
「内容が…薄い」
「いや、自分は頭悪いんで知識ないっすから」
「だから?」
「内容のある文章なんか書けないっす」
「内容がある文章を書けるように学習しよう」
「いや~、今から勉強して間に合いますか?」
「それは…わからん…ね」
「あ~、どうすれば、ちぇっ」
「今なんか言った?」
「言ってないっす!」
「まずやれることを1つずつやるんだよ」
「…間に合いますか?」
「だから…それは知らんって!」
「で、何をすれば?」
「あのさ、自分が受ける学科名は言える?」
「はぁ? 言えますよ」
「そこの教授たちは日ごろ何を研究している?」
「知らないっす」
「考えるんだよ」
「わからないけど、●●とか▲▲とか?」
「そう、そうだよ」
「それを想像して文章を書くんすか?」
「その前に事例を調べるんだよ」
「●●とかの事例っすか?」
「そうだよ」
「どうやってやるんすか?」
「今はネットの時代だからすぐにわかるよ」
「なるほど…」
「で、それを調べたら紙に書いてよ」
「全部っすか?」
「いや、要点をまとめるんだよ」
「そっか、やりますっ!(敬礼)」
こういうやり取りで日が暮れる。
北斗塾は本当は自立型個別指導だから、
こんなやり方は通常しない。
でも、時間が押し迫った状態のとき、
緊急状態のときは「依存型」で、
指導をすることもよくある。
相手(=生徒)の状態と状況を見て、
そのときの適切な形態で指導をする。
各教室の1日の生徒指導記録には、
生徒ごとに、
「自立度1級」「自立度2級」「自立度3級」
「自立度4級」「自立度5級」
が明記されており、
生徒指導のやり方選別の指標になっている。
これに応じて指導をすれば、
自立度がどうであっても成果は出る。
しかしながら長期的に見れば、
「自立度」の高い生徒ほど、
それに応じたレベルの中学校や高校や、
有名私大や難関大学などに進学する。
大学受験に限って言えば、
医学部医学科や薬学部薬学科を目指す場合は、
地方の大学でも入試の難易度が高いため、
この「自立度」が2級以上でないと、
まず合格することは厳しい。
単純に学力別編成のクラスで授業を受ける、
そういう画一的な指導を受けるよりも、
個々の生徒の諸事情(ファクター)で、
柔軟に指導内容や方法が変化すれば、
それ相応の成果が化学反応として、
われわれの目の前に出てくるのだ。
それを毎回おいしく調理できるか?
そこが講師の腕の見せどころとなる。
(続く)