情報大洪水の時代(その1)
先生、私は先生の所でなければ一応考えがあるんですよ」
「そうなんですか?」
「K予備校、S予備校の2つは必ず行かせようと思っています」
「2つ同時にですか?」
「都会じゃ『あたりまえ』らしいですよ、2つ通うのは」
「…それぞれの予備校の有名講師の授業だけ取るってやつですか?」
「お、先生も知っているんですね、そのやり方を…さすが」
「まあ、はい…」
「それと先生が懇意にしている個別指導の予備校がありましたよね?」
「よくそんな話を覚えていましたね」
「理Ⅲに合格させる専門の予備校ですよね?」
「まあ、そうですね…。他大学の医学部医学科に進学している方が多いですけどね」
「それですよ、それ! そこを紹介してくださいよ」
「いやぁ、そこは月額50万円かかりますよ、破格ですから」
「いいんですよ、医学部いや…理Ⅲに行けるのなら」
「あぁ…、やっぱり本気なんですね?」
「あたりまえですよ! 先生だっていつも本気でしょ?」
「まあ、確かにそうですが…」
「私の計算では年間600万円ほどかかるんですが、覚悟していますから!」
「ろ、600万ですか!?」
「そうです、医学部…いや理Ⅲに行けるなら、安いでしょう!!」
「うわぁ、ホントすごい話ですね…」
「ところで、先生!」
「はい、何ですか?」
「私は先生が『引き受ける』と言ってくれれば、そっくりそのまま渡すつもりです」
「へ…、何をですか?」
「600万まるまる全額ですよ」
「…」
「それでも、先生はまだ断るつもりですか??」
「……」
(続く)